第24話 グレン3

しばらくして少しだけ意識が戻った俺…

「まったく…ほんと馬鹿なお兄さんだよ…

こんな人が死んであんなゴミがのさばって嫌な世界だよ…」

何を言っているのだろう

「ロキ様…このものはどうなるのでしょう…やはり死ぬのでしょうか…」

ロキって言うのかあの子は…

「まぁ…確実に死ぬだろうね…今は生きていてももうじきいずれ…」

「…」

そっか…やっぱ俺は死ぬのか

最後に少女に看取られる…悪くない死に方だ…

とか考えていると少女は突然自分の左手首を軽く切って血を流し…

えええええ???

なにしてんの!?俺のために後追い自殺?意味わからないし…

どういうことだ?

だがすぐに俺はその理由を知る事となる。

彼女はその滴る血を俺の脇腹にかけ

涙を流している…

俺なんかのために涙を流してくれるのか

ほんとにこの子はいい子だ…

こんな子を守って死ねたんだ…本望だ…

だが死ぬと思っていたはずの俺の耳に少女の声が聞こえ…

「わが血の力により心優しき勇者に再び生命の息吹を!」

脇腹の傷が跡形も無く消えた…

鮮血の女神…

まさか彼女がそうだったのか…

鮮血ってそういう意味だったのか?

自分の血を使って奇跡の治療を行う…

俺はてっきり戦場で暴れ周り相手の返り血まみれになるほどの強さの女神の話かと思っていたのだが

まぁさっきの光景を思い出せばそっちの意味でも問題はなさそうだけど

それにたぶん…あの売りに来たオーガもしかして彼女が一人で倒したんじゃないのだろうか…

それならつじつまが合う。

そこで意識はまた飛んだ

あれほどの重症だったんだ。傷がふさがってもすぐに動けるわけじゃない…

いあむしろ急に再生したショックで気を失ってしまったのかもしれない

再び意識を取り戻したときはなぜか無性に意識失ってて良かったという安心感があった…

案外俺が気を失っている間に言い知れぬ恐怖の光景が広がってたなんて事があったりしてな

ははは…まさかな。

さてそれはそうとあの少女とどう接すればいいのだろう…

命がけで助けようと思ったら実は助ける必要なくて

むしろ結果的に俺が命救われた…

どんな喜劇だよそれ…とりあえず俺は何も知らない振りをしよう。

あの子の望むようにあの子の話に会わせよう。


「あれ…生きてる…腹の傷が無い…どうして…」

まったくもって大根である。ばれてないか不安だ。

「あぁ…お嬢さんは無事だったのか…良かった…当然か…」

当然無事だろうさわずか数秒で男たちを殲滅する力

鮮血の女神ってか殲滅の女神だろうあれ…

「えぇ…おかげ様で助かりました。」

あーあくまで俺が命の恩人ってスタンスで行くわけだ?

「でも俺はなんで無事なんだ?」

どう答える?

「えーと…その…なんか神様っぽい人が?治して行った?みたいな?」

思わず笑いそうになる…何だその言い訳は…だが笑えるほどおかしいはずなのにほんとの事を教えてもらえない寂しさのが強く感じてしまう

「…そっか…お嬢さんが言うなら…そうなのかもしれないな…」

「あーそう言えばまだ名乗ってなかったな。俺の名前はグレン…傭兵をやっている。

また何か困った事があったら言ってくれ。このあたりの人間ではないのだろう?わからない事などがあったら相談に乗るよ。」

今は何も知らない同士…それでいいんだな?

「ありがとう!でも親切なのもいいけどあんまり今回みたいな無茶ばかりしないでね?いつかほんとに死んじゃうよ?」

あぁ…名乗ったのに名乗ってくれなかったな…まぁ名前は知ったからいいけど…

「ははは…そうだな…気をつけるよ。じゃーまたなー」

そして俺はその場を去っていった。

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