第55話 自重なしの浄化
「だ、誰がこんなひどい事を…」
「まぁ世界構築の時にはゲームどおりのものを作りましたが人間が営みをするなら現実ではこうなるでしょ…」
「こんなの…こんなのあんまりだ…許せない…」
「許せなかったらどうするんですか?」
「こうするのよ!」
私は馬車に乗り全力で砂浜を駆け回った。そして目に見えるゴミを全てインベントリーに収納していった。触れなくても全て拾えるのはこのインベントリーの最大の利点だと言える。
そうやって海岸を何度も往復しながらゴミを回収していき3時間後なんとか砂浜だけは綺麗なものになった。だが海はまだである。海のゴミの回収というのがなかなか難しかった。海水ごと回収してしまうのだ。回収してしまえばインベントリー内で分別は出来るのだが…だが今のところそれしか思いつかないのでじわじわゴミを海水ごとインベントリーに回収していった。
ただ回収するだけだと海水までなくなってしまうので常にインベントリーから排出作業も同時に行った。さながら浄水機になった気分である。
そしてかれこれ6時間ほど経ったところでなんとか美しい海は戻ってきた。
そして私はさっきのガチャで出たハズレ景品の海岸掘削機を召還した。水着ガチャでこれがでるって絶対おかしいだろう。とにかくそれを使い砂浜を掘り巨大な穴を作り上げた。そしてそこにこれまでのゴミを少しずつ出しながら間にフレイムアローを打ち込んだ。要は簡易焼却炉である。ゴミは別にインベントリーに入れたままでも良かったのだがなんか嫌だったのだ。悪党の死体は道具として役に立つがゴミはやっぱゴミである。敵にぶっ掛けるとか考えたがゴミを別の場所でばら撒くのはこの世界を愛するものとしてはちょっと嫌だったのだ。合理的な理屈ではない。単なる気分である。
そんなこんなをやってここにきて10時間が経った頃周りに人だかりが出来ている事に気づいた。
いあもっと前から気づいていたが特に声かけてくるわけでもないし放置していたのだが作業が終わったのを察して近づいてきたのである。
なにやら口々にささやいているのが聞こえる。
「あれが…伝説の純白の衣を羽織りし浄化の聖女…」
何だその長ったらしい通り名は!てか、だからお前らは毎回誰と勘違いしているんだ…何の伝説なんだ!一回その伝説の書かれた本読ませろ!
「あれほど汚れてた海岸が半日で美しい姿に…おぉ…神よ…」
なんか祈られてるし…
あ…こらそこ…ユリシア…あんたまで祈ってんじゃないよ!
「猫神様は純白の衣を羽織りし浄化の聖女でもあらせられたのですね。」
知らんがな…てか、私の予想だとたぶんその聖女…アンデットを浄化して有名になった聖女だと思うな…こんな環境汚染を浄化するような聖女の話しじゃないと思う。
きっとこの世界の人たちは超常の存在を見るとすぐ昔の伝説に当てはめて考える思考なんだろう。
「人とはそういうものですよ…わからないものはわかりやすいものに当てはめる。
良かったじゃないか。これで君の名前と同じ神の様に千変万化の存在になれたじゃないか。君はかの神の様にトラブル大好きだし…まさに名は体をあらわすって言う奴ですかね。」
こいつも人を神話に当てはめやがって…
まったく…嫌な妖精だ。
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