第2話 命の値段


拝啓…仲のよかったリアルのみなさま。お元気ですか?

って私には仲のよかった友達なんていない?

うるさいわ!

とりあえず私は今レベルいくつなんだろう?

このキャラの顔はあまり覚えてない

どのアカウントの顔だこれ?

えーとどうやってステータス見るんだ?Escキーはどこ?マウスは?ネズミの方のマウスはさっきから床を走り回ってるけどパソコンのマウスはどこよ?

ステータス…ステータス

お…なんか目の前に画面が出た!なになに…

名前 草壁草子

レベル 1

職業 無職

HP 25

MP 38

腕力 5

体力 5

魔力 5

敏捷 5

所持金0ギル

現金58670000円

あ…終わった…

私の人生…短かったけど今終わったわ…

この子はほかのアカウントの要らないけど捨てるに忍びないアイテムを持たせてた倉庫キャラだわ。

そりゃ覚えてないわ

しかもなんだよ草壁草子って…倉庫だけに草子ってか…

自分のネーミングセンスに嫌気がさすわ。

まさか私はこれからこんなふざけた名前を名乗って生きていかなければならないのか。

冗談じゃない…いい加減にしろ!出てこい!運営!


『はいはーい。こちら運営…なにかお困りですか?』

「…」

突然脳内に響いた声にしばらくの静寂…

『もしもーし。こちら運営です。ご要件をどうぞー』

運営おるんかーーい

「…あの…もしかして…あなた…いあ…あんたもしかして私の事撃ち殺したあの運営責任者?」

『やだなぁ…もう…人聞き悪いこと言わないでよ。僕は撃ち殺してなんていないよ。まぁ確かに撃ちはしたけどさ…君は死んではいないよ』

「え?でも私…撃たれたし…この体私のじゃないし…よくあるこれってゲームの世界に転生しちゃった…ってやつじゃないの?」

『違うよーあれは僕の能力で作ったゲームの世界に魂だけ転送する銃だよ。どっちかって言うと僕が異世界転生して地球に来た人かな』

「なんじゃそりゃー!」

『大丈夫…安心して…ここは確かにゲームの世界だけど、君をここに送った時点でもう僕の世界じゃないから理不尽なテコ入れメンテナンスとかしてバランス崩壊させたりとかしてこの世界に干渉する事は出来なくなってるから。』

「そう…それは…安心…していいのかな?確かに私が頑張って最高のスキル構成に育てたのにいきなり弱体化修正とかされたらやってられないのは事実ね…でもそれって例えば突然凶悪な魔王が誕生してどうやっても勝てないようなのが現れても修正が入らないってことよね?その時は私死んじゃうんじゃ…」

『うん…まぁあっちの世界の君の肉体は生かしてあるけど今の君にとって現実はこっちだからこっちで死ねば普通に死ぬね…あははは』

「笑い事じゃないよ!洒落になってないから…現に今初級ダンジョンとは言え最深部にレベル1の状態で放置されてるんだけど?最深部は適正レベル20だよね?」

『うん!まぁ大丈夫!そこで必要なのが課金システム。君の地球での銀行の貯金を使ってじゃんじゃん課金してくれたら課金アイテムを提供して君を助けてあげるよ。』

「あぁああ!やっぱりあのステータスの現金って私の貯金額か!なんでそんなの知ってるのよ!犯罪じゃない!」

『犯罪じゃないよー僕の能力だから法の範囲外だよ。相手の貯金額とか居場所も特定出来る能力もあるんだー』

悪びれず開き直る運営のやろう。

「なによそれ…どんなふざけた能力よ…チートじゃん…運営がチートって…」

『まぁそういう訳でとりあえずレベル1から装備できる強力な武器とかどう?攻撃力135の光の剣なんておすすめなんだけど…今なら3万円でいいよ』

「うぐぐ…確かにいい装備だ…欲しい…お金は充分あるから命の値段と思えば安いけど…」

『ついでに神秘の鎧防御力95も一緒に付けるよ?もうこれだけあればこのダンジョン目をつむってもクリアできるよ?』

プチン…その時私の中で何かが切れる音がした。

「いらない…そんな目もつむってもクリアできちゃうような装備でゲームクリアして何が楽しいのよ!私はあなたたち運営のこのゲームは大好きだけどそういうバランス崩壊させちゃうようなやり方が嫌いなの!だから課金しないの!」

『あらら…怒らせちゃったかな…でも君のためを思って言ったんだけどな…さすがにレベル1じゃここ突破も脱出もできないよ?』

「ふん…私を誰だと思ってるのよ…無課金でトップになった廃プレイヤーよ!」

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