第36話 グレン4
夜の見回りをしていると町の北口から馬に乗った男が現れた。全力で走ってきたようで息も絶え絶えだ。
馬から転げ落ちるように降りた男が息を切らしながら報告をした。
「はぁ…はぁ…たいへんだ…ゴブリンが…500匹以上この先5キロのところにいた…進行スピードから言って今はもう3キロくらいだろうか…時間が無い…町から逃げろ!」
馬鹿な…ゴブリン500…いったいどこから…
「そんな町を捨てるなんて…」
「でもだったらどうするって言うんだ!戦うってのか?こっちも最低でも500人の戦士を用意しなきゃ時間稼ぎにもならないぞ。こんな時間にあと、30分で戦闘準備できるか?」
「それこそ無理だ!」
「もうおしまいだ…」
「ちくしょぉぉ…せっかく自分の店が持てて軌道に乗ってきたってのに…」
「やっぱりあの嬢ちゃんがオーガを持ってきたときに警戒してちゃんと町の強化をしてれば良かったんだ。どこの町から来たかは知らないがそう遠くは無い場所であんな魔物が発生していたんだからここももっと警戒すべきだったんだ。」
口々に皆泣き言を言っている。そんなこと言ってる場合ではないだろうに…
だいぶ混乱してきているようである。
まぁあのお嬢さんが災いをもってきたって言う風に言い出す人がいないだけ、まだマシな部類なのかもしれない。
はぁ…仕方ない…時間稼ぎになるかわからないが30匹くらいは倒せるだろう…
焼け石に水かもしれないがどっち道今更逃げたところで全滅は避けられない。ならさっさと決断してこちらから攻めたほうがまだ勝算はある。
そして俺はみんなが逃げる方向とは反対の街の出口に向かった…
「あ…」
ん?
北出口で精神を統一しているとそこには赤いドレスあのお嬢さんがいた。
「どこへ行くつもり…」
「よう…お嬢さんか…この前は高だか十数人程度に無様に死に掛けたが、これでも俺はこの町で最強を自負している。だから、今度こそ死地とわかっていても逃げるわけには行かないんだ…」
「ホント馬鹿ね…」
「ふ…じゃーな…ちゃんとお嬢さんは逃げるんだぞ…」
そう言い俺は背中を向け歩き出した。
「待ちなさい…」
そう言うとお嬢さんは俺に向かって剣を投げた。
剣は放物線を描き俺はそれを右手でキャッチした。
「これは…いったい…」
俺が持っているロングソードとは比べるのもおこがましいくらいの力をその剣から感じた。
「あなたにふさわしい武器よ。必ず生きて帰りなさい。」
「この輝き…まさか…オリハルコン…そんな馬鹿な…」
こんなもの…いったい誰が作りどこで手に入れたのか…
「…」
彼女は何も答えず背中を向けもうひとつの出口に向かった。
結局彼女がいったい何者なのか知る事は出来なかったな。
この剣があったとしても生きては帰れないだろう。
最後に話が出来ただけでもいいか…
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