第50話 平衡感覚
「ふざけんな!片手を失ったくらいで勝ったとおも…ん?なんだこれ?手あるじゃねぇか…もしかしてお前のその能力って俺を透明人間にする能力か?だははっははは!何だ!その間抜けな能力は!敵を強化してどうするんだ!?とんだ間抜けがいたもんだ!」
「ふふふ…みんな同じこと言うのね…どいつもこいつも芸がないわ…少し考えればこの恐ろしさに気づくでしょうに…」
「だはははは!はったりもそこまで来れば立派だな!ほら!どんどん俺の体見えなくなってるぞ!もうすぐ俺の一方的な虐殺が始まるぞ」
「そうねあなたを一方的に殺すほうの虐殺だけどね!」
そうこういってるうちに男の体が全部消えたらしい。
満足げに余裕かまして踊って嫌がる…
「よし、さて殺すか!」
男は私に襲い掛かってきた。当然余裕でかわす私。
「な!よけただと!」
驚愕の声を上げる男。
驚くほどの事ではない。簡単な事。
そう…見えているのだ…私には。私が消したのは相手の視覚情報から相手の体を消しただけ。
だけど、まだこれで終わりじゃない…これからが地獄の始まりだ。
奴の下の地面もどんどん透明になっていく…いってるはずである。私の認識では何も変わってないからはっきりは言えないが足元も透明になっているはずである。
「うわぁあああ落ちる!…あれ?これも透明になってるだけか。とんだはったりだけのこけおどし魔法だな。」
言葉とは裏腹にだんだん事の異常性に気づいたようだが無意識に認めないようにしているようだ。
3分経過…じっくりと回る毒のように…このまったく無害の風景があなたを蝕んでいくわ
「さぁかかって来なさい。私は何もしないから怖くないよ?怯えなくていいから早くかかってきなさい」
とにかく挑発する私…
そうしている間もどんどん周りの景色は透明になっていく。
「こ、この野郎なめやがって!おりゃあああ!」
自分の身に何がおきようとしてるかわからない得体の知れない恐怖を怒りで誤魔化すように挑発に乗り勢いよく走り出そうとした。
ふふふ…実に滑稽だ…
自分の足の長さも地面の距離も何一つつかめない状態で生物は果たして走るなんて出来るのだろうか?否!不可能である。平衡感覚が完全に狂いまともに歩く事さえ出来なくなる。そしてやがて…
「うげぇええ!な!なんだ!?突然目の前に見えない壁のようなものが現れやがった!どうなってやがる!くそ!邪魔だぞ!壊れろ!」
魔人族の男は自分がすでに地面に伏していてその壁が大地だと気づかずパニックを起こし殴っている。
そして、そろそろ5分である。
「おぇえええ!なんだこれ!気分が悪い吐き気がする眩暈がする。透明な壁に張り付いて動けない…
どこ行きやがった隠れて毒をまきやがったのか!なんて卑怯な!」
男は吐きながら訳のわからないことを言っている。
毒などまいていない…三半規管がいかれただけだろう。私は逃げも隠れもせず最初の位置から動いてない。自分が勝手に転んだせいで私が見えなくなったのだ。奴は今自分が立ってるのかどこにいるのかすらわからなくなってきている。
地面のほう見ても私はそっちにいませんよ。
さぁそろそろ終わりにしようかな。
「さよなら…」
そう言って地面に伏した男の首を切り落とした…
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