第27話 宿の現実
商店通りを抜けしばらく歩くと宿屋に着いた。この町に一軒しかない宿屋である。
「あの…ロキ様?ロキ様は自分のお家をお持ちですよね?どうして宿屋に?」
ユリシアが私に尋ねてきた
ふ…これだから素人は…
「それはね…ユリシー…」
たっぷりタメを作ってから私は答えた。
「気分よ!」
「気分ですか?」
「そう…自分の家のが豪華なのは当たり前。でもそれじゃ旅の意味が無いわ。快適だけを求めるのであればそれならいっそもうあの家に引きこもってればいい。でもそうじゃない…私たちは旅をし世界を見て回っているのだよ。」
「はっ!そういうことだったのですね!感服いたしました…神とは言えちゃんと下々の生活を体験してみないといけないという事ですね。なんと深いお考え…」
「と、高尚な事を言っているが、途中でマイハウスを開くに10万ギル…」
悪魔妖精がありえもしないことを言う。
「はぁ?なに言ってんの?そんなことありえないしー私テントで野宿とか出来るし!」
「くくく…そうだね。うん、そうだといいね。大丈夫、大丈夫。君なら出来るよ。うん、きっと」
なんかいちいち引っかかる言い方をする嫌なやつである。
「…と言う訳で、二人部屋お願いしまーす。」
と、受付の女の人に頼むと部屋に案内された。
部屋は一応の形にはなっていた…そう…一応である…
現代地球の日本の清潔さから言えば汚い以外の言葉が出ないくらいであるが…
「ま…まぁ…住めば都って言うし?なんとか?なるかも?」
必死に自分をごまかしながら布団に入っていった。
そして深夜…
カサカサ…
ゴソ…
カサカサカサ…
何かの音に目が覚め目を開くとそこには…
人の顔くらいの大きさのクモが動いていた!
「ひぎぃいぃゃああ!」
私は反射的にピコハンアックスを振り落としていた。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
そして真っ二つになったクモをインベントリーに収納し無言でマイハウスの扉を呼び出した。
「あはははは!ほらね!この時代の衛生観念をなめたらダメだよー。日本の森でちゃんとした技術が使われた立派なテントで野宿したくらいで生意気言っちゃダメさ。くくく…あんなクモくらい見つけてもゴキブリ食べてくれる益虫だなーって眺めれる位にならないと」
くぅぅぅっ…くやしいいぃぃ…
「な、何を言ってるのかわかりませんことよ?わたくし宿屋に泊まった真の目的はどこにも泊まった形跡が無かったら怪しまれるから部屋を借りただけで、庶民の暮らしを見るのは副次的なもので、もう充分に理解したから予定通り…そう予定通り!最初からこの時間になったらマイハウスを出す予定だったのです。だから賭けには負けていませんわ!むしろ本来はわたくしの勝ちなのですよ。
だいたい、途中という言葉の定義もあいまいですし何を持って途中とするのかそれが決まっていなかった段階で賭けは不成立なのです。もう一度いいますが本来はわたくしの勝ちですがあなたのがんばり、健闘を称えノーサイドって事にしておきましょう。」
「まぁいいですよ?くくく…別にこの世界の10万ギルなんてぼくにはどうでもいいことですし。必死に言い訳で誤魔化そうとする子供相手からお金を巻き上げたとあっちゃ大人の沽券にかかわりますからね!」
うきぃぃいぃぃ!!!この悪魔めえええ!!!
ゆるすまじぃぃぃ!
何とか怒りを抑えマイハウスの扉を開けようとしたその時!
「たいへんだぁあああああゴブリンの大群が攻めてきたぁぁぁ!」
宿の外から男の叫び声…
「ストレス発散きたぁああああああ!!!」
私は叫び宿を飛び出した!
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