第50話 Dのクエスト8

 クエスト完了の報告のため、受付まで移動するとそこにはエミリーが、笑顔で待っていた。

 只その後ろには、黒いオーラが漂っているんだけどね。

 「エミリーさん、クエスト完了の報告に来ましたよ?」

 「お帰りなさい。で?」たったそれだけなのにビクリとさせられる。


 「討伐と素材はぎに一日かかりましたが、採掘場のロックタートルの駆除に成功しました」

 「で?」それしか言ってくれないので続ける。

 「坑道の入口で昼寝をしていたロックタートルを4人で協力して倒した後、坑道に入り脇道に1匹さらに、本道の最奥で3匹見つけて倒しました。鉱山にはそれ以外は確認されていません。以上です」と締めくくる。

 「で?」

 「で?とは?」と思わす聞き返してしまった。

 「ずいぶんと、はしょった報告ですね。他に言うことがあるんじゃ無くて?」と睨まれる。

 ハァ仕方ないか、と思い「4匹目にはジェシカのファイアボールを食われてしまって、火炎放射の攻撃で火傷しそうになりました。5匹目には回転攻撃でクロエが弾かれて壁に打ち付けられましたが無事に帰って来られましたよ?」もう言うことは無いと口をつぐむと、エミリーさんの目がつり上がって行くのが分かった。

 「無事にじゃ有りません。皆には荷が重いって言ったじゃ無い!下手をしたら、確実に死亡案件ですよ。貴方が強くても皆を守れる保証は無いんですからね」とこれが、説教の始まりとなり小一時間延々と説教をただただ受け続けた。

 それから再度確実なクエストを受けることと教会へ行くことを誓わされる。

 教会で、自分の力量や技能について調べて来いというのだ。

 技能については、個人情報で秘匿しても良いが高いか、低いかだけでも知らせろと念押しされて解放された。

 ロックタートルのクエスト報酬は意外と純度の高い希少鉱石が取れたとかで1億Luと高額をいただいたのである。


 解放された後は、勿論打上げをする運びで一度、宿に戻り身ぎれいにした後、再度集まって祝宴をあげることとなった。

 宿に帰り、湯をもらい、体を拭く本当は風呂にゆっくり浸かりたいと思う様になってきたのは、日本人のサガなのか習慣なのか分からないが、無性に恋しい。


 着替えを済ませ荷物の整理をしているとあっという間に時間になった。

 大通りの一区にある噴水広場に集合とのことで遅れまいと、急ぎ足で歩く。

 体が少しポカポカとなるぐらいの早さで軽快に人をよけて歩くこと十数分で到着した、周りをきょろきょろと見回すもまだ、来ていないようだ。

 遅れずにすんだことに胸をなで下ろすと噴水の縁に腰を下ろし一息つく。

 行き交う人の、流れを何気なしに見ていると、人々の表情の豊かさに気が付く。

 近しい人との、時間を楽しむ笑顔や、仕事を終えた疲労感とこれから帰るであろう家に早く着きたいと如実に語っている顔、重大な事をこれから行おうと決心に満ちた顔、それらの生き生きとした様々な顔を見て“ああ良い世界に生まれ変わったんだ”という思いがこみ上げてきた。

 この世界の一員になれたことを感謝しつつ、謎の空間で聞いた声の正体が気になり教会に足を運んでみるのも悪くないかと思っていると、遠くに3人の姿がみえた。

 クロエが先に気づき元気に手を振ってここに居るアピールをしている。

 3人は、さすがに鍛えた足なのかすぐに近くに来る。ヨイショとばかりに腰を上げる。

 「待った?」なぜか一番に声を掛けたのはソフィアだ。

 「いや、遅れまいと急いで来て、今腰を落ち着けたばかりなんだ」ともっと気の利いた言葉を、掛ければ良かったと後悔しながら言ってしまった。

 気の利くやつなら、彼女らに気を遣わせないスマートな言い回しをするんだろうと思うが、そんな生活をしてこなかった為に、変な言葉遣いになった。

 「ごめんなさい。気を遣わせてしまって」ジェシカに謝れてしまった。

 「変な言い方になってしまって、こっちこそごめん」気を遣われたことに謝罪する。

 「固いこと、いいっこ無し無し、時間通り合流できたんだし早速ご飯にしようよ」クロエが、明るい声で返してくれる。

 良い返しをしてくれるクロエに感謝しつつ移動する。大通りに面したレストランは落ち着いた雰囲気の中にも豪奢なたたずまいを見せる店で、俺には根性を入れないと入れなさそうな雰囲気を醸し出していた。

 店に入ると「予約無しですいません。4人でいけますか?」とホールの店員に聞くと洗練された一礼をして「しばらくお待ちくださいませ、確認して参ります」と再度礼をして店の奥へと消えた。

 すぐに現れた店員が礼をして「お待たせいたしました。ご案内いたします」と手を流れるように示して歩き出した。

 自然とその流れに乗って、ついて行くとなにを基準にしているかと想うほどに広めの席に案内された。

 店員に椅子を引かれ順に座っていくと一気に緊張の汗が噴き出る。

 何を注文したら良いのか分からないので、大銀貨4枚を握らせシェフのおすすめを4人分頼んだ。勿論お酒の代金は、含まれていないし、料理に合うお酒を選んでくれるように頼む。


 透明なグラスに注がれるお酒で乾杯をして、これまで味わったことの無い料理に舌鼓を打ちながらたわいも無い話に花が咲く。

 良い気持ちで店を出た後、しゃれた店だと肩がこると2件目での飲み直すことになった、


 俺の記憶はここまで、目が覚めたら見知らぬ部屋でどうしたのかと困惑しながら起きると、3人娘がすやすやと寝息を立てているのだ。

 俺どうしちゃったの?

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