無双剣士は異世界でスローライフを送りたい
モッチー
第1話 まさかの異世界転生
5月の夕刻、昼の暑さが嘘のように肌寒い商店街は夕食の買いで混み合っていた。そんな中、額に珠のような汗を浮かべた一人の高校生が皆の注目を集めていた。
彼の名は香山真之介まだ15歳である。なぜ彼が注目を浴びているかというと、木刀や竹刀を10本束にして持ち防具袋を肩に掛けスクールバックを持っているからである。
「あのくそじじい、何が鍛錬だ、こんなの弟子に取りに行かせりゃいいものを学校の帰りに取って来いとは鬼だ」とブツブツと文句を言いながら家路を急ぐ。
祖父は、極相流古武道術27代目宗家であり、彼自身は師範代でこのような道場の仕事をする様な立場でない。それでも言いつけを守るのは祖父にまだ一度も勝った事が無いからもあるが、彼の元来のまじめな性格からきている事が大きい。
家族構成は祖父母をはじめ父母と兄と姉の3世代7人家族である。父親には武芸の資質がなかったため、公務員をしている。家族の他に多くの門下生がおり広大な敷地に大きな屋敷が建っている。
後10分ほどで家に着くかというところで、空気が揺れる嫌な感じがあり何だと思った瞬間、地面が大きく揺れて目の前の空間にヒビが入り黒い裂け目が現れた。
裂け目は彼を飲み込もうと近付いてくる、地面が揺れるせいで立っていることは出来るが、移動まではさすがに出来ない。
そして裂け目に入ったとたん体の内から大きな力が働くのを感じて彼の意識はなくなった。
次に意識を取り戻したとき真っ暗な中で立っているのか寝ているのかわからない。体があるという感覚も無ければ臭いや音すら感じないただ闇があるだけである。
そんな中、突然「君には、大変申し訳ないことをした。謝って済むことではないがな」とどこからともなく声が聞こえた。
「ここは何処?あんたは誰?俺はどうなったんだ?」と声にならない声をかけた。
「ここは時空の狭間、神々の住まうところだ。君は神々の戦争の余波を受けてここに飛ばされてきたのだよ。」
「と言うことは?」と返せば「ああ、君は死んでいる。我々は自然現象には介入しない事になっているが、今回の件について非が我々の方にあるからあの場所には地震がなかったことにしてけが人や死者は元の状態に戻してある。ただ君だけが、この場所に飛ばされてきたために元の場所に返してあげることは出来ないのだ」と謎の声が返す。「どうして返してもらえないんだ、悪いのはあんた達だろうが責任を持って返してくれよ!」と怒りを込めて言う。
「こことあの場所は位相がずれていて道がつながらない。ただこのままでは君に申し訳ないのでこことつながる世界に君を生き返らせることが出来るが君の希望をきかせてくれないか?」と返された。いわゆるラノベの異世界転生と言うやつだ俺も結構好んで読んでいたので、即答で「お願いします」と叫んでしまった。
「あいわかった。彼の地は君たちの中世ヨーロッパのような世界でな、前の状態の君を送るとすぐに死んでしまうため君の体を彼の地仕様に変更しなければならない。ただ君は現在魂だけの体がない状態なのだよ。体を作ってそれに君の魂を結びつける必要がある。体と魂を結びつけるとき少し痛むが辛抱してくれ、あと君の持ちものも彼の地仕様に変更しておくよ」と声は言った。
生き返れるのなら仕方がない辛抱しようと思ったら、謎の声に気持ちが伝わるのがわかった。
「彼の地で2度目の人生を謳歌してくれたまえ」と謎の声が言うと周りがまばゆいばかりに輝き白い世界と変化していく。「おい向こうの世界はどんな世界だ」と質問するもないはずの体にこんなの耐えられるかという程の痛みが走って意識がかすれていった。
次に意識が戻ると、森の開けたところに寝転んでいた。そばには、円柱状の丈夫そうな革袋と、なぜかスクールバックが置いてあった。
いやおかしいだろう、あいつは彼の地仕様にすると言っていたのにこれでは悪目立ちするではないか思いつつ持ちものを確認することにした。
服は、麻で出来ており腰には、小さな革袋がぶら下がっている。中にはこの世界の貨幣と思われる硬貨が入っていた。銀貨が1枚大きな銅貨が4枚小さな銅貨が10枚である。こちらにくる前には財布に15,000円入っていたので銀貨は1万円と思って良いのか。
あとスクールバックの中には、確かに見覚えのない本がぎっしり詰まっておりこれは後で読むことにした。次に革袋の中を確認する中をのぞくと何もない。見間違いかと手を入れ探ると何かに触れる。取り出せば大小様々な刀やナイフが10振りと後、籠手と鎧が出て来た。
いやいや容量がおかしいだろう。あ!!魔法の収納鞄かほんとラノベの世界だわ。
刀は、マットブラックのいわゆる忍者刀が一振り、うっすらと朱色に輝く物や青白く光る物、金色に光る物とか光り物が多すぎる。一振りまともそうな刀があったが、刀身が長いいわゆる野立という野戦向きの刀である。後、木の目状に鍛錬の後が残るナイフが二振りあった。記憶からしてダマスカス鋼製のククリナイフというやつとサバイバルナイフである。
サバイバルナイフと忍者刀を腰につけ、後は袋に戻すスクールバックもついでに袋に入れた。背中に担ぐと重さを感じなかった。
こんな山中で、いつまでも至れないので移動することにした。低いところに行けば村があるだろうと適当に歩く。
木の陰でカサリとかすかに何かが動く気配がした、意識を集中して目をつむるとまぶたの裏に真っ暗な世界が現れた真っ暗と言っても木の形や隠れた物の姿が陰のようにに映し出されている。突然のことにびっくりしてウォと声が漏れる。
音に驚いて隠れていた獲物が飛び出し逃げるが、反射的にサバイバルナイフを投擲した。ナイフは獲物の首筋に刺さりドサリと草の中に落ちた。
確認すると、1メートルほどの大きなウサギであった。思わぬ食材をゲットだ、実際持ちものの中には食べ物がなくこれからどうしようかと不安があったので、ひとまず安心である。
皮をはいで袋に放り込む、血のにおいで他の肉食獣が来ないうちにその場を離れた。1時間ほど歩けば竹にそっくりな林にでたので忍者刀で切り出し水筒をいくつか作成する。人間水がなければ3日と持たないからね。川を見つけたら補充しないと持ちそうにない。また竹を組んで弓と矢を作ることにし弦は、先ほどのウサギの腱を利用する。本来は切り出した竹を乾かし膠で貼り合わせるがそんな時間はない不思議と作成の仕方が頭に浮かんでくる。これがこの世界仕様と言うやつなのかと思う。出来た弓は数回使えば壊れるだろう。
さらに2時間山を下ると水の音が聞こえてきた。走り寄ると沢があった。
水筒に水を入れのどを潤す。後は沢伝いに降りれば村があるはずだ。沢には俺の知識が正しければ薬草がこんもりと茂っている。これも、自然破壊にならない程度に刈り取って袋にしまうことにした。
刈り取るのに少し時間がかかりもうすぐ日が落ちる、これ以上移動は危険であるので野宿の準備に入る。火を熾すのは忍術の知識が役に立つ、それほど時間を立てず火が燃えさかる。後は、ウサギの肉を焼いて晩飯だ。ウサギの肉は意外とうまかった。昼にウサギを狩ったときのように目をつぶり周囲に意識を飛ばす。
すぐさま周りの景色がまぶたの裏にクリスタルの森のように展開し危険な動物が居ないかがわかる。火を恐れてこちらを伺っているようだ。火が消えないように木を組んで仮眠を取った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます