第23話 帰還

 朝、手早く朝食を済ませ、ギルドの掲示板の前にいる。

 Fランク冒険者の依頼はやはり街の環境整備の依頼か、薬草の採取依頼ぐらいしか無い、俺の場合は、森深くにある自称薬草畑まで行けば取り放題なんだけどね。

 馬車で帰ることも考えたが、薬草採取でポイントを稼いで早く上位クエストをこなしたいな。

 もちろん、あくせくクエストを受注するつもりは無い。

 すでに2000万以上の蓄えがあるので1年ほどはゆっくりする事は出来るからね。

 などと考えて、いつもの薬草採取を受注することにした。

 受付にて、薬草採取を受注しマグノリアで報告することが出来るか聞いた。

 発注元により、受付た所に報告する義務があるクエストはあるにはあるが、それは特別な事例なので、何処で報告しても良いとのことだった。

 なので、依頼を受け、ギルドを後にした。


 城門までは、乗合馬車で移動していく、これからの長旅に少しでも体力を使うのが惜しかったというのもあるが、王都があまりにも広かったので歩くのがいやになったのが最大の理由だ。

 こうして、王都を後にした俺は、普通の人よりかなり速いペースで歩いているというより、もうジョギングだ。マグノリアを出てから飛ばして馬車で4日の距離を徒歩で帰るのだ。

 倍以上の日数が掛かるのは目に見えている。宿の女将に1週間ほどと言ったので凄く心配されるんじゃ無いだろうか。


 普通の人が、1日で歩ける距離ごとに宿場町がある。こちらの世界では30リーグというのか昼を少し過ぎた頃に着いた。村の宿屋で昼食を取る。

 結構足が疲れたので、靴を脱いで椅子に乗せて疲れを取る許可を貰って疲れを癒やす。

 お腹がこなれたので、宿の女将にお礼を言って次の宿場まで行くことにした。

 足を休ますことが出来たのが良かったのか、さくさくと進み次の宿場まで進むことが出来た。

 今日は、ここまでとして宿を取る。このまま行けば、薬草採取は明後日になるか。


 次の日も、ただひたすらに歩いて二つ先の宿場で泊まった。途中境界の村で昼食を取ったが、馬車での移動だったのであまり顔を覚えられていなかったのか、盗賊の話を振られる事は無かった。モブでなりよりだ。

 宿に入る頃には足がパンパンだ、昔の人は一日10時間も毎日歩いて遠くへ移動していたと何かで読んだことがあるが、何かに乗って移動する現代人はなんと足の能力が退化したものか。

 薬草採取で、一回マラソン往復したけど、それの比じゃないな。今日も早めに寝よう。


 一日をはさみようやく山越えとなった。

 さあ、山の中で薬草を採取しますか。王都で薬草採取の依頼を受けたが、実際はマグノリアへ向う道中の近くには薬草の採れる場所が無かったためまだ採取できていない。

 薬草採取のため遠回りするのもあほらしいし、山にはいろんな薬草が道から少し外れた所にうじゃうじゃ生えているのを往きで確認済みだからだ。

 山を登る途中で、脇にそれ薬草を採取していく、もちろん街道から外れるので危険な生物とも遭遇することになる。その都度、弓とククリナイフを使い始末していく。

 山を下る頃には4回程脇にそれ、薬草を十二分に採取出来たがオーガ1体、オーク3体、ゴブリン5体、ウルフ5体も討伐してしまった。

 これ、報告するとエミリーさんにまた怒られるな。あの人怒ると怖いからな、しばらく黙っとこう。


 山を下りたところで今日は、無理をせずにここで宿を取ることにした。宿にはあいにく良い肉が無いとのことだったので以前狩った鹿肉の一部を提供することにしたら、逆にお金をいただいてしまった。宿代と食事代から考えてもかなりの量を渡したのでここは素直に貰っておくことにした。おかげで、夜のご飯は鹿肉が入ったシチューとなった。

 時間が経過しない袋の中の肉のため熟成されていないが、これはこれでなかなか美味しかった。

 

 朝食をすませて宿を出る。あと、マグノリアまで40リーグある。

 徒歩での移動にしては少し離れているが、昨日帰りの旅の途中で食べた中で一番豪勢に肉を食ったので気力が戻っている。

 またひとっ走りしますかと宿場を後にした。

 昼は、麦畑を見ながら街道の脇に座り、宿屋でごくごく薄くスライスして貰ったパンに王都で買った燻製肉をこれもまた薄くスライスして乗っけて食べた。

 薄いと堅焼きせんべいと同じように唾液で充分に柔らかくなるのでそれ程苦労なく食べることができた。

 早くも、白くて柔らかいパンや、ご飯が恋しくなってきたが、無い物ねだりかもとも思う。

 一度、どこかに無いか調べて見るのも良いかもしれない。エリザベートが言っていたフェイスト帝国の情報を教えて貰ったら案外、有ったりなんかして!

 パンを食べ終わる頃には、口の中の水分が結構持って行かれたので、水筒の水をごくごくと飲むと、腹がこなれるまでゆっくり歩く。


 この頃になると、マグノリアの城門が遠くに見えていて、たった2,3日しか居なかった街だが、帰ってきた感がでてきた。

 普通に歩いてきたので城門に着く頃には太陽が傾き空の色も変わってきている。

 いつも通り、城門には人や馬車の列が伸びている。

 最後尾に付いたが直に順番が回ってきた、今度はタグを見せるだけですんなり通してくれる。

 さすが、永滞権が付与されたタグだけ有るな。

 城門を潜ると懐かしい風景が飛び込んできた。

 早くギルドに行って無事を伝えよう。

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