第12話 クエスト開始
現在、薬草採取のクエストのため街から出て、西側に連なる山の麓まで走っている最中である。普通なら、徒歩で朝一に街を出て夕方に戻ってくるぐらいの距離にあるが、絡まれたり買い物をしたりと結構時間を取ったからである。
クエストボードの所に戻ったときには結構な時間が経っていて、冒険者の姿もちらほらとなり、クエストも実入りの良いクエストも無くなっていて冒険初心者の僕には受注出来ないものしか無かった。かといって、Fクラスのクエストでは、子どものお使い程度で受ける気になれないので、常駐クエストの薬草採取のクエストを受けることにしたのだ。
冒険者には危険が伴うために、対処用のポーションが必要で需要がつきないからである。また、町医者が使う薬の原料ともなるので駆け出しにはもってこいの仕事である。
そして街を出てから1時間ぶっ通しで走っているのには、もう一つの理由があった。
二人が、距離を置いて尾行しているのである。街を出てすぐにその存在に気づいたが、襲ってくる訳ではなさそうなので、どの程度の輩か確認するために、走り続けているのだが何をしたいのか付かず離れずの状態を保っている。
もう何組かの冒険者の集団を追い抜いた。彼らのことはパーティーと呼ばれ、自分の苦手な分野を仲間にゆだね高難度のクエストをこなすらしい。
パーティーは、二人以上でパーティーメンバーの数やクラスでパーティーにもレベルが付くのだと、受付のお姉さんに教えて貰い早くどこかのパーティーに入るよう進言されたことを思い出した。
そうこうしているうちに、山の麓に着いた。いい加減に追いかけっこにも飽きてきたなと思いながら、ひときわ大きな木に跳躍すると気配を絶つ。
すぐに二人が、そばまで来て「くそ!やはり感ずかれていたか?見失ったとか報告できないぞ。分かれて探すぞ」と一人が言うともう一人がうなずき一方向を指さすと、そちらの方に音もなく消えていった。
なんかしゃべれよ!かの有名なモンスター主人公の様に心の中で叫んだ。ひっ捕まえて吐かせるのも手だが、後々面倒にしかならないので消えてもらったほうが、都合が良い。
もう一人も、別の方角に消えたのを確認してから木から飛び降りた。本当は、森の奥深くではなく麓を探せば薬草は採れる。
普通はそうするほうが、安全にクエストを完了できる。森の奥では、魔獣に遭遇する危険が格段に上昇してしまう。自分より格上の魔獣に遭遇すればそれで終わりだからだ。
でも僕はそれを実行してしまう。だって、前日に森の中に薬草畑のごとく群生しているのを見ちゃったんだから。
ここでも、探せば群生地が見つかる可能性が高い。と言うことで行動だ。
走りながら、見た山の形から群生していそうな場所をいくつかピックアップしていたので、順番に回ることにして奴らに見つからないよう静かにそして素早く森を走り抜けた。
途中彼らの居場所を感知する、しばらく森の中をさまよっていたが3回目の探知で彼らの存在は、無かった。
諦めて帰ったのだろう、彼らぐらいになれば、魔獣に襲われる事は無いはずだと思いたい。
森の中には、所々に薬草を見ることが出来たので、少しずつ取っていく。一応、クエスト分は確保出来たのだが求めているのは群生地である。楽をするために苦労しているのはやはり、日本人のサガなのだろうか。
何カ所か回っていると、昼を少し過ぎたぐらいになった。しまった!弁当忘れた。一食抜いたぐらいでどうにかなるとは思わないが、日頃の習慣でなんか落ち着かない。仕方が無いので木の実をいくつか取ると口に放り込んだ。
栗に似た味がするが、少しえぐみもある。食べられないことはないが、やはり調理しないとまずい。
訓練していたとはいえ、今がサバイバル状態とは思えないので、日本人の舌として味を求めてしまう。美味しいに超したことはないからね。
途中で、鹿とイノシシに似た魔獣とであったので弓矢で狩る事にした。矢を放てば思い通りに飛んでゆき弓の残心が心地よい。
以前に読んだ魔獣について書かれた本には、攻撃本能が異常に高いため人を察知するとほとんどの魔獣は、比較的おとなしいものでも人を襲うらしいので、人里近くで発見したならすぐに狩るのが普通で、巣窟である森には訓練で実力をつけたものしか入れないとあった。
狩った後は、すぐに皮を剥いで血抜きをする。これも帰ったらギルドに買い取って貰おう。と言うことで、お腹は空いていたが口にするのはやめて袋に放り込んでゆく。
あと残り2カ所回ればおしまいかな?無かったらあきらめて帰途につくしかない。もうスケジュール的に探す時間が無いところまで来ている。
有れば少し取って走って帰れば間に合うだろうと思いながら、最後のポイントに近づくと水の流れる音が聞こえてきてそこは、思った通り薬草畑になっていた。
これ間引いたとしても、何十回分のクエストになるんだろうか。これでしばらくだらけることが出来る。イヤッフー!!
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