第13話 クエストにて

 黙々と採取を行っていると100株になった。クエストに必要なのは15株だから先に取っていた分を合わせると8回分を取ったことになる。

 見つけてから、小一時間は集中していたかな?もうこれで帰ろうとして背を伸ばしたところでこちらに近づく何かがいる。

 目をふさぐといつもの暗闇の中にクリスタルの世界が広がる。全部で、7匹か!俺を感知しているので逃げる訳にはいかないな。

 目を開けて背中にある袋から弓を出し、矢筒を腰に付け奴らが来る方をにらむ。

 矢を弓につがえ、引き絞るとまたクリスタルの世界にもどる。

 近付いているいるのは、魔狼だ!先頭を走る一匹は一回り大きい。こいつの左右に3匹ずつ徐々に後退している、つまり矢印の先っぽのような形だ。

 この集団のボスだろう魔狼は弓矢一発で仕留めるには距離があるかな?こちらが仕掛ければ躱してしまいそうである。

 隊列を崩すために2番3番を始末するか!標的を左側の2番目の魔狼に変え、矢を放つと額を貫いた。勢いで後続の2匹の魔狼を巻き込んで地面をゴロゴロと転がった。

 すぐに矢をつがえ、右側の魔狼を打ち抜く、後続の魔狼は先ほどと同じという訳にいかず、貫かれた仲間を躱して走り続ける。

 躱したせいで、隊列が乱れたので複数同時に襲っては来られないだろう。

 もう一度矢を放つ余裕はないところまで近付いてきていたので弓を置くといつものククリナイフを腰から抜くと同時に、魔狼のボスが草むらから飛び出してきた、 口を大きく開け鋭い牙で食いちぎろうと迫ってくる。頭を軽く持って行かれそうな大きな口が目前まで迫ってきた、すんでの所で左にステップを踏んで躱すとナイフを勢いよく振り上げる。魔狼も軽く首を振り牙でナイフをはじく。

 着地すると、少し距離を取ってこちらに振り向いた。大きさは軽く2メートルを超えているが、見た目はほとんど狼だ。

 草むらから、後続の2頭が飛び出し、襲ってくる最初の魔狼は躱し際に、首筋にナイフを入れることが出来たが2匹目は躱すので一杯だった。

 ナイフを入れた魔狼は、どす黒い血を盛大に噴き出しながら頭から地面に突っ込み体をピクピクと痙攣させた。

 奇襲に失敗した残りの魔狼達は、一斉に攻撃するべく僕を取り囲むように草むらから現れる。

 一斉に来られると、対応しにくいんだがな~。ふっと息を吐くとククリナイフ一本でも対応出来なくともないが保険として矢筒から矢を取り出し矢の真ん中を持ってかまえる。

 ボスが、Goruと吠えると3匹が一斉に飛びかかってきた。

 牙をナイフで躱し腹に矢を打ち込み勢いのまま振り抜く2匹目の顔に当てる、3匹目の下をくぐり抜けると同時に縦におなかを切り裂いた。

 3匹ともGyaunと鳴いて地面に倒れたが、腹を割いたもの以外はすぐに立ち上がる。裂かれたものは、内臓が切れ目からはみ出ていて痙攣を起こしていた。

 今度は、こちらの番だ!勢いよくダッシュすると腹に矢を受けた魔狼の頭にナイフをたたき込み、背を踏み台にして方向を変えもう一匹に斬りかかる。

 魔狼は後ろ足で立ち上がり、牙と爪で応戦しようとするが、体を低くして懐に潜り胸にナイフを入れる。覆い被さるように倒れ込んできたところ、ナイフを抜くと横にステップを踏む。魔狼は力なく地面に倒れ伏した。

 魔狼のボスは、憎悪を募らせ牙を剥き低くうなり低くかまえている。

 俺は、ボスに向き直りナイフをかまえる、双方とも相手の隙をうかがい一歩も動かないでいる。

 ボスが大きく口を開けると口から黒い玉を打ち出した。

 黒い球は、俺がいた場所で大きくはぜる。そう、俺は、黒い球が口から離れる間際に真横に跳躍していたのだ。

 着地と同時に、今度はボスに向って跳躍すると、横一閃ナイフを振る。目をつぶそうと思ったがこれを牙でキャッチしたのだ。

 ボスは、そのままナイフを噛み砕こうと牙に力を入れたので、左アッパーをボスののどに入れた。

 のどの痛みに、たまらずナイフを放したボスに、とどめの一撃と眉間にナイフを押し込むと俺の勝利が確定した。

 横たわるボスを見下ろしながら、先ほどの戦いについて考えた。途中ボスは口から黒い玉を放ったが、あれがいわゆる魔法というものか?

 魔力も素質も有りながら魔法を使えない俺って何なのかな?この世界に飛ばしたあいつが忘れたんじゃないだろうなとか思うが時間が刻一刻と過ぎてゆく。

 早く帰らないと日が暮れる。急いで魔狼達の死骸を袋に詰めると背負い走り出した。

 はあ!行きも帰りもマラソン、まじ疲れる。


 太陽が、山の稜線に掛かる頃、ギルドに到着した。早速、クエストの納品を行うもちろん今日取った薬草全部と、魔狼達である。

納品すると、前にお金を貰ったところではなく報告のため受付カウンターに行く用に言われたので行くとお姉さんが、ものすごく怖い顔で睨んできた。

「あなた今日、登録したばかりよね?何なの?ねえ、なんなのよ、魔狼7匹って?」


何を怒ってらっしゃる?不思議に思うも「何って言われても、襲われたから返り討ちにしただけですけど」と返す。


「返り討ちって・・・はあ、・・・魔狼はD、Cクラスが受ける討伐対象よ!納品所から来た報告で肝が冷えたわよ。それに、魔狼が出る領域って森の奥じゃない!薬草は、麓で採れるでしょ?なんで森の奥まで行くのよ」と怒られた。


一回のクエストで一日潰すのも勿体ないということ、山の奥には薬草の群生地があると思ったこと、群生地で採取すれば数回分の量が得られると思ったことを説明するともっと怒られた、解せぬ!!

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