第14話 おかしな指名依頼

 「申し訳ありません」と領主とエリザベートの前で、二人が腰を深く折り謝罪している。


 「我々が、思っている以上に優秀な様だ。お前達から姿をくらますなどとは」と重々しく領主が口を開く、その表情から二人のエージェントを罰する事はないことが分かる。


 「はい、森までずっとはしり続け、森に入ったとたん気配が消えました。森には入った痕跡すら見当たらず、高度な工作員の技術を所持していると思われます」


 「まあ、私たちに接触した時点で高位の何者かということはわかっていたしね。となると、ますます叔父様を狙うアサシンの可能性を捨てきれないわね?」と懐疑を抱く

 

 エリザベートの言葉に皆がうなずくと「はい、我々もあの様にアッサリと尾行に気づかれ追跡の手を逃れる輩は初めてでございます。屈辱の念を拭えません」と悔しそうにエージェントの一人が顔をゆがめる。


 「やはり、彼をこのままにしては帰れないわね」と、つぶやき思考の海に沈む。

 しばし黙考の末に「彼には、帰りの護衛として王都まで一緒して貰いいましょう。そうすれば叔父様から離せるし、彼の素性も探れるし、そうしましょう!」と結論を述べる。


 「シシィ!それはならぬ。お前を替えって危険にさらすことになる。」思わず領主が叫ぶ。


 「いいえ叔父様。彼の狙いが叔父様の場合、私たちを襲えば返って警戒を強めることになります。この場合、彼には不都合になります。だから完全に私たちを王都まで護衛をすれば信用が得られ、叔父様に近づきやすくなると思われます。」と自分を襲うデメリットが多いことを強調しておく。


 オーグストは、やんちゃな姫の意見は変えませんという表情を見てうなだれた、そして配下に目配せを送る。

 エージェントの一人が、一礼すると忽然と姿を消した。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ため息をつかれながら、討伐報酬を貰った、しめて788万Lu(ルー)になった。

これで、1年間は自由な時間が取れてこの世界を、のんびり観光と勉強が出来るなとほくそ笑んで冒険者ギルドを後にした。


 宿に向って歩いていると、後ろから子どもが走ってきて俺の前に立ちふさがる。

 「兄ちゃん、冒険者のシンノスケだよな!」肩で息をしながら問いかけてきた。


 「ああそうだ、なんか用か?」


 「兄ちゃんを、ギルドに連れ戻すのが俺のクエストだ」と胸を反らして高らかに宣言する。


 いや!俺が拒否したらクエスト失敗だろうに・・・と思うに、こんな子どもでも一応冒険者か、嫌な予感がするがおとなしく戻ってやるか。

 冒険者ギルドに戻るとエミリーと見知らぬ男がカウンターの前で待っていた。


 「エミリーさんどうしました?」


 彼女は信じられないという風にこめかみを押さえながら「あなたに、指名依頼が急遽入ったのよ」というとため息をついた。


 何が彼女を悩ませるのか分からないが一応聞いておく「依頼の内容は?して、そちらが依頼主さんですか?」


 「私、プラダ商会のセバスと申します。先日はうちのお嬢様をお助け下さり、ありがとうございます。明日お嬢様が、王都に戻ります際に護衛をしていただきたく、ご指名させていただきました」と、そこまで言うと深くお辞儀をした。


 あああのお嬢さんか、確かに二日後に王都に帰るって言ってたっけ、と合点がいくもなぜに指名されるのだろうか。

 セバスと名乗った男は俺が不思議がっているのを見て「冒険者になられて間もないと伺っておりますが、オーク兵を討伐した手際の良さに惹かれたとのことです。また、負傷した護衛をしていた冒険者ですが、治療を優先させるため今回は遅れて王都へ帰還させる予定になっておりまして、欠員をあなたにお願いしたく存じます。」と追加で説明をしてくれる。

 

 「護衛は、Cランク以上のクエストよ!ただ、ご指名となれば話が違うの。ていうか、納品したオークってやっぱりあなたが討伐したって本当だったのね?」とエミリーさんは少し驚いていた。どうやらオークは誰かから貰った物だと思われていたようだ。

 実際、オークを複数相手するとなると、それなりの腕が要求されるのだからそう思われても仕方がないのだが、エミリーさんは続ける「あなたは、Fランクだから断ってくれても良いわよ。でも、記録には残るんだけどね」と申し訳なさそうな顔をした。


 はー、せっかく観光を楽しもうと思っていたのに残念だ、自然とうなだれてしまう。それに記録に残ると言うことはマイナス評価として後で響くかもしれない、選択肢がないなと仕方なく頷くと「報酬はいくらになりますか?」と聞いた。


「成功報酬は50万Lu、途中危険を回避した難易度により追加報酬をお支払いいたします。」とセバスさんから言われた


エミリーさんがなぜかスススと俺の隣に来て「普通、商人の護衛はここからだと30万が相場よ。ずいぶんと破格値ね」と耳打ちされた。


分かりましたと返事を返す。決して報酬につられたんじゃないからね!評価を気にしてだかね!


この後、契約を交わすと槍を買うのと矢の補充のために、コッコロさんのもとへと走った。

宿に戻ると朝の約束と違うので女将さんに一月分の宿代を払い、明日から1週間ほど留守にすると言うとその分を差し引いてくれた。女将さんやさし~

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