第43話 Dのクエスト

 次の日の朝、俺はクエストボードの前に立ってクエストを選んでいる。

 しばらくは、自由に遊んで暮らせるだけの貯蓄は出来ている、この世界に来てから動き詰めで冒険者学校を出たらのんびりする予定だったのだが、魔法が使える様になれば試したくなるのは、自然の流れという物である。

 そこで、Dランクでも少し高めを狙っているのだが、今一ピンとくるクエストが見つからない中一件のクエストに目がとまった。

 鉱石採掘場に数匹の魔物が棲みつき鉱石の採取が出来なくなったため、魔物を駆除するという物で有った。

 魔物の名はロックタートル、最大3メートルを超すモンスターで体が岩石で出来ており、餌が鉱物というやつである。

 やっかいなのは、攻撃魔法を食うとその魔法が使えるようになり口から出すことができ、また体を回転させて突撃を仕掛けてくるモンスターだ。

 依頼日から結構経っているにもかかわらず、ボードに貼り付けてあるということは難度が高いのだろう。

 そいつをボードから剥がすと受付に持って行った。

 エミリーさんが、用紙を確認すると渋い顔をした、美人さんがする顔ではない。

 「そんな顔をしないで下さい。美人が勿体ないですよ」いらぬ声を思わず掛けてしまった。


 「誰が、こんな顔にさせたと思っているんですか?昇格初日から、えらく難度の高いクエストを選ぶんですね?お勉強が足りなかったのかしら?」額に怒りマークを幻視した。

 「対策は、いくつか考えています。リスクについてはちゃんと考えていますから。確かに難度は高いですが、それほど危険というわけでもないです」


 「その過信が、命取りだと何度言ったらわかるんですか?これはパーティー用クエストで、ソロで受ける物じゃ有りません」しまった、説教コースにまっしぐらだ。


 「なになに?クエストでなんかあったの?」明るい声で声を掛けてくれる救世主登場だ。

 隣には、にこやかに笑うシャインデザイアーのクロエが立っていて他の二人が後ろにいた。

 「良いとこに来た。クロエ!俺と一緒にクエストをやろう」


 両肩をがっしりと捕まえられたクロエから笑顔が消えて、引きつった顔に変わった。

 「以前に助けて貰ったし、別に組むのは構わないんだけど。貴方からの誘いだとなんかありそうね」

 「いやなに、クエストを受けようとしたらパーティー用のクエストだったんで、ちょっと手伝ってほしいだけなんだ」とにこやかに笑う。

 「パーティー用って、依頼をちゃんと見なかったの?」と冒険者の初歩を忘れたのかと批難の眼差しをしてきた。

 「ちょっと!シャインデザイアーはEランクパーティーです。Dランクのクエストは荷が重いとおもいますが?」とエミリーさんが口を挟んできた。

 クロエがそれを聞くとエミリーさんに視線を向ける。エイリーさんのまじめな顔つきから冗談ではないと悟り俺に視線を戻し。

 「シンノスケ!あんたFランクでしょ?何馬鹿な依頼を取ってくるのよ!」怒気と呆れが混じったワントーン低い声で尋ねてきたので胸からプレートを出した。

 プレートには草の模様が施された銀の枠が有り、ランクを示す場所にはDの文字がきらびやかに輝いたいた。

 クロエが、ゆらゆらと揺れるプレートを見て啞然となる。4~5日前にはFランクだったはずのやつが、今は1ランク飛ばしてDランクの冒険者証を持っているのだから。

 クロエが、口をハクハクとさせてから「どうやって、私たちより上のランクになったのよ」

 ころころとよく表情が変わるやつだ、今度は嫉妬が混じってやがる。

 「まあ、話は長くなるから後で教えてやるよ。パーティーにDランクが居れば良いんですよね」後半の部分はエイリーさんに向けた言葉だ。

 「確かに、規約上はDランクが居れば依頼の条件はクリアできますが・・・・」後に続く言葉を探している様だがうまく言葉にできないようだ。

 「なら、このクエストは受理してもらえますね?」にんまりとした顔で受理する様念を押す。

 「ちょっと!人を無視するんじゃないわよ。私たちはまだ、組むっていってないわよ」慌ててクロエがまくし立てる。

 「前回も、結局オーバーランクの依頼にもかかわらず達成できたじゃないか。今回は、事前情報があるから対策が立てられる」ぽんと右手を肩に手を置き、左手の親指を立ててウインクした。

 クロエは、頬を染め言葉に詰まる。


 「以前こちらが無理を言ったから、おあいこなんじゃない?」とソフィアが提案する。

 「いざとなったらシンノスケが、なんとかしてくれるんじゃない?」ジェシカの援護が加わりクロエが「分かったわよ。手伝えば良いんでしょ?組んであげるわよ」と顔をそらしていう。


 「ということで、パーティー成立ですいかがですか?エミリーさん」

 エミリーさんも諦めて受理の手続きを始め「良いですか。危なくなったら撤退して下さい。絶対無傷で帰ってきて下さいね」と受理書を手渡してくた。

 それってフラグじゃないですか。縁起でも無い事をいわないで下さいよ、とは言えないな。

 どうかフラグが経ちませんようにと祈りながら3人をつれて、ギルドを出た。

 「で?内容はどんななの。内容も知らずに相手を組まされた身にもなってよ」

 「採掘場に棲みついた数匹のロックタートルの駆除デス」お前がそれを言うか?と返せないほどには質問するクロエの目が怖かったため思わす敬語になった。

 「先ずは、コッコロさんの店でクロエ達の武器を調達だな!」ということで店を目指して歩き出すのだった。

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