第44話 Dのクエスト2
コッコロさんの店の扉を潜ると奥からコッコロさんが出て来て。
「どうした、矢の補充か?」と尋ねてきた。
「クエストを受注したので、対策用に何か見繕うと思いましてね」と返すと。
「必要なのがあったら言ってくれ」
「じゃあ!とても固い鏃がほしいんです。あと剣は探しますので」と答えた。
「クエストの内容は?対象によって使えねえもんもあるからよ」
「ロックターロルです」端的に答える。
顎髭をさすりながら、しばし黙考すると「20本ぐらいで良いなら、ちょっと待ってろ、準備してやる」それだけ言うと奥に引っ込んでしまった。
俺は、ホコリ物をあさり始める。クロエ達も自分達用に色々と見て回っている。
ジェシカは、ポーションを入れた小箱を2箱抱えてカウンターに置きにいっている。
程なくして、目当ての刃が無い二振りのショートソードを見つけたので、カウンターに置くとクロエに向って「今回は、これを使ってロックタートルを惑わしてくれ」と言った。
クロエがソードを取ってから、振り返って「これ、刃が無いじゃん」
「相手は、堅物だ、刃が有っても役に立たない。それぐらいが丁度良い」そう言いながら、バレーボール大の鉄球を5つカウンターに乗せていく。
「それ、攻城兵器に使う玉でしょ?攻城兵器なんて運べないし勿論、使う所なんて無いわよ?」
「大丈夫、俺がその兵器だ」と回答するが、訳が分からないと頭をひねっている。
そんな彼女を、放っておいて獣除けの香を一箱カウンターに追加で置く。
クロエが考えている間に、奥から20本矢を持ってコッコロさんが現れた。
カウンターにある品々を見て、フンと鼻を鳴らし「鉄球なんてどうやって使うんだ?まあ、考えがあるんだろうが。ショートソードはいいもんを見つけたな。ちょっと研いでやる」そう言うと裏に消えすぐ戻ってきた。
手には、先ほどのショートソードが握られているが、輝きが増していて別物に見える。
「悪いが、しめて800万だな」申し訳なさそうな顔をしているが、素材などを見てもそれでも安くしてくれているんだと思う。
財布から金貨8枚を取り出すと手渡した。
シャインデザイアーの3人が、「私たちの分は私たちが払うわよ」と慌てるが、片手をあげて制止する。
「今回は、俺のわがままにつきあって貰うんだから、払わせてくれよ。どうしてもというんなら、成功報酬でバランスを取ってくれ」
そう言って、支払いを済ませて店を出る。
往復4日間の旅になる。
冒険者の殆どの者は、大なり小なりの魔法の袋を持っていてそこに、旅に必要な物を収納している。
だから、突発的な数日間にわたるクエストも行えるのだ。
只、魔法の袋と言ってもクロエ達3人が持っているのは、併せて荷車に乗せられる程度らしい。まだランクが低いから、街から遠く離れたクエストをこなせないから今のところは不自由しないとの事だ。
街を出てからは、順調に歩を進め日が暮れようとしている。おのおのテントを張り食事の準備に入る。クロエ達のテントは、二人用のテントである。一人は見張りとして起きていなくてはならないので、大きなテントがいらないらしい。
勿論俺のテントは、一人用である。
クロエ達に、かまどの準備をして貰って、俺は、薪になる枝を探しに出たものの、結構面倒な仕事ではあるな、今度からは、薪も買って袋に詰めておくかな?
薪を拾い集めると、ジェシカが魔法で火を付けた。
俺の袋からオーガ肉のブロックを取り出し適当に4人分に切り分けフライパンに入れる。
味付けは、少量の岩塩とハーブを散らす。この世界でも、胡椒があればもっと美味しくなるんだが、まだお目にかかれていない。
いろんな、調味料を求めて、旅行をしても良いかもしれないなんて思いながら肉を焼いていく、その横では、ジェシカが、オーガの骨から出汁を取って、乾燥野菜でスープを作ってくれていた。
テントの周り6カ所に、獣除けの香を焚いている。でないと、料理の匂いにつられて、いろんなやつがやってくる。
本来の冒険者は、たき火は、明かりと湯を沸かす程度にしか使わない。匂いにつられた獣に襲われる危険があるからだ。
旅は快適に過ごしたいので、一本2万もする香を箱買いしたのだ。
3人は贅沢だと文句を言っていたが、オーガ肉のステーキに負けてしまった。
食事が終われば後は、寝るだけである。4人も居るから2時間程度の見張りですむが、順番が大事である。どの順番で見張りをするかで話したが、俺が女の子を起こすのはいやだと言ったので、最後になった、ついでに3時間見張ることで皆が了承してくれた。
見張りは、一度起きて寝るのが結構疲れるため、3人がくじを作り順番を決めた。
最初は、クロエだ。くじを引いたときにガッツポーズを取る。最初の2時間を我慢すれば後は、朝までぐっすりと寝られる。次は、ソフィアで3番目がジェシカになった。
順番が決まったところで、おのおのが行動を起こす。
俺もテントに潜り込んで目をつぶるとすぐに意識が無くなった。
結構疲れているんだな。
体を揺すられる感覚で目が覚めた。うっすら目を開けるとジェシカだ。
今眠ったと思ったのに結構時間が経ってしまったんだな。
テントから出るとジェシカにねぎらいとゆっくり休むよう言うと大きな欠伸を一つ付いて、俺のテントに入って行く。
そうか、3人のテントはクロエとソフィアで一杯なんだ、俺の寝床で女の子が寝るなんて、思いつかなかった、なんかいけない感じがして心が落ち着かない。
テントの方を見ないようにして、たき火を調節して暖を取る。
周りを警戒するも、たき火と獣除けの香の影響かで危険は無い。香はクロエが見張り時に消えてしまっているはずだが、食事時に、近寄らなければそれでいい。
空は、まだ暗く空一杯に星が輝いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます