第4話 いざマグノリアへ
平地にでてから3時間、途中の村で馬を休ませながらなかなか城壁が近付いてくるようには感じられなかったその壁は、何処まで続くのかと思うほど長いという事がわかるまでには近付いてきた。
日は、2つ分で落ちるというところまで傾いている。
「もうまもなく、城門だ」と御者席から声が掛かる。
「私たちは、通行札を持っているので簡単な検査で門を通れますが、シンノスケ様は身分証はお持ちではないのですよね?」とエリザベートが質問をする。
「はいありません。どうすれば門の向こうに行けますか?」と返事をする。
「詰め所で、簡単な質問と検査を受けていただくと身分証を発行してくれますよ。後、入街税が必要になります。」
「では、門の前でお別れですね。色々とお世話になりありがとうございます。」
「こちらこそ、出会わなければ私たちはこの街に来ることが出来なかったですから。」と名残惜しそうにエリザベートが言う。
程なくして、門に入る人たちの列が見えてくる。
列は、徒歩の人たちと馬車で分かれていて、さらに馬車にはもう一つの門があった。もう一つの門をくぐる馬車は金細工で飾られた紋章付きで、止まることなく中に消えていく。
「あちらは、貴族専用の門です。」と俺の視線に気づいてエリザベートが解説してくれる。本当に気立ての良い子だなー。
そんな話をしていると徒歩の列の最後尾までくると馬車が静かに止まる。
「これでお別れですね、門の中でまた会えるのを楽しみにしておきます。」というとエリザベートが手を差し出してきた。
俺も「そうですね。会えるのを楽しみにしておきます。街で見かけたなら声をかけてください。」と手を握る。小さくて柔らかい手だった。
ジャンとアリエルからも「ありがとう。こうして街に来られたのは君のおかげだ」と握手を求められた。
馬車を降りると御者台のダグラスから「俺たちもギルドにはちょくちょく顔を出すからすぐに会えるかもな。礼に一杯奢るからそのときは一緒に飲もう。」とイケメンな声をかけてきた。御者台にも車内の会話が聞こえていたらしい、道理でノックだけで袋を渡してきたわけだ。言い遅れたがダグラスが冒険者パーティーのリーダーでパーティー名を「疾走の風」とアリエルから聞いていた。
馬車が再び走り出し窓からエリザベートがまたねと手を振る。
馬車の列は、何らかの取り決めがあるらしく門番と少し話をしてから次々と門をくぐっていき、エリザベート達の馬車もあっという間に門の向こうに消えていった。
さてと、中はどんな風になっているのかなと列に並ぶ。
空が色を深くする頃、ようやく俺の番になった。門番が身分証を提示するように言ってきたが、ないというと門の中の詰め所に案内された。門は結構厚く小さな家が入りそうなほどである。
詰め所の中で、別の兵士から「文字は書けるか?書けるならこちらの書類に記入をしてくれ」と一枚の羊皮紙と思われる紙を示される。
情けないが首を横にふるふると振る。だってまだこの国の文字を見てないんだ、書けと言われても日本語しか書けない。
すると紙を自分のところに戻し「質問をするので答えるように、こちらで記入していく」と命令口調でペンを取った。どうやら識字率は結構低いようでこういうことは良くあるようだ。
兵士は、「名前、年齢、出身地、どのような用件で来たのか順に言ってくれ」と簡潔に言うように促す。
「名前は真之介、歳は15、出身地は唐間市です。旅の途中でしばらく滞在したいと思います。」と答える。
兵士は、すらすらと記入していく。見ていると文字が理解出来るって日本語では書かれていないのに謎要素がある。書き終わるとこちらへと席を立つと別の席に案内された。案内に従い別の席に着くと前にはボーリングの玉のように大きな水晶玉が置かれていた。
「水晶に両手を包むように置きなさい、犯罪歴と魔力の適性と属性を調べる」といわれるが犯罪歴は良いとして魔力の適性?属性?なんだそりゃと突っ込みそうになったがここで質問をしたら面倒な事になりそうな流れだ。ひとまず黙っておこうと手を置く。
水晶玉が、光り7色の色が浮かんだ、綺麗な色だと思っているともう良いと言われ手を離す。
「犯罪歴無し、魔力適性は全属性にありと、よし審査はこれで終了だ」と金属プレートを取り出した。
ウーン全属性に魔力の適性が有るってどうゆう事だろう?俺って魔法使い?
考えてもわからないことで悩んでも仕方ないと思考を放棄することにした。
「10日の滞在許可が下りた。身分証のIDタグだ、無くさないように。無くした場合は銀貨5枚で再発行可能だ。延長の場合は中央の入街管理詰め所または、ここに追加料金を払いに来なさい。追加料金は大銅貨3枚で10日間だ。永滞希望の場合は10日後に銀貨2枚の支払いを行え。支払いを怠れば奴隷落ちになるから気をつけるように。今日は身分証 発行手数料で銅貨3枚と入街税の大銅貨3枚を納めるように」と早口に言われた。
もう帰りたいのだろうなと周りを見た、兵士はすでに入れ替わっていた。
革袋から大銅貨3枚と銅貨3枚を出した。
詰め所から出て、門を抜けると夜のとばりが降りていた。
さあマグノリアの街だ。早く宿を決めて落ち着かなくちゃね・・・・・
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