第36話 冒険者学校2日目
2日目の冒険者学校の教室は、いつもと違っていた。
教室に入って自分の席に着いたとたん複数の生徒に囲まれて話しかけられていたのだ。
「昨日は凄かったぜ。家に帰り着いたとたんバタンキューで寝たんだが、起きたら凄く腹が減ってていつもの倍は食べたんだ。そして今朝もすごい食欲で親に怒られたよ。んで、なんか体の中からモヤッとするものがあったんで学校まで走ってきたんだ。これって、昨日の鍛錬のお陰かな?」
「んな訳あるか!昨日の今日で体力が格段に上がるわけ無いだろう」と怒られたことをキシシと笑いながら報告するロイに突っ込む。
「俺は、今日体中が痛くてまともに動くことが出来ないぞ」別の生徒がぼやく。
うん、これが普通の対応だとうんうんと頷いているとロイは腕を差し出してきた。
「嘘だと思うんなら触って見ろよ」ぐっと腕に力を入れて力こぶを作る。
仕方なしに確認したところ昨日より確実に多くなっていた。
「驚いた、昨日より筋肉が多くなっている!」と感想を言うと嬉しそうにどや顔を決めてきた。
周りの友達も、驚きを隠せない。頑張れば確実に強くなれることが証明された格好だ。
これで、剣技も実際に上がっていれば皆の注目の的間違い無しだが、あいにく今日は魔法の実技で確認は出来ない後で報告して貰おう。
ここで授業開始の鐘が鳴ったので話したそうにしている皆は、自分の席に戻っていった。
午前の座学は魔物の特性とかで少しだけ退屈になってきた。
これは、ちゃんと聞かないと後で自分に返ってくるとあくびが、出そうになるのを必死で我慢して一応頭の片隅に記憶していく。
昼食になり、食堂に移動したところ俺の周りには、剣術の講義を受けている連中で一杯になった。
剣の裁き方を、俺に質問してくる。お陰で何を食ったか覚えていない。
午後の講義の時間になり、俺は昨日とは別の校庭に来ていた。
剣技のすごさを聞かされていた皆は俺が、凄い魔法を使うのではないかと期待しているようでそんな話ばかりを振ってくる。
「いや、だから俺は魔法を一度も使ったことが無いんだよ。本を読んで独学で練習したが魔法の兆候すらなかったんだから」その都度説明を繰り返すが、謙遜で行っていると思っているようで信じてもらえない。
昨日と同じように俺たちがいる反対の門から、女性の先生がやってくる。
真っ赤なタイトドレスに黒のマントを羽織っている。服がタイトなせいもあって胸がやたらと強調している。細い体にそれはないんじゃないかと言うぐらいにでかい為、ついつい目が吸い寄せられるが女性の勘は鋭いのであまり見ないよう心がけよう。
「はい、皆集合!」先生の号令とともに皆が移動した。
「おはよう。今日は新人君が来ているわね。シンノスケ君だったかしら?私は、マリアンヌよ、よろしくね。今日は私があなたを個人レッスンしてあげる。」ウインクして怪しい笑みを浮かべた。
「他の皆は、昨日の続きね。昨日より大きく出来た人から報告に来てちょうだい。新しい課題を教えるからね」というとほかの皆は、距離を置いてばらばらに散っていき呪文を唱え始めたいた。
マリアンヌ先生は、皆の様子を確認してから俺に向き直りコホンと咳払いを一つついた。
「昨日の、実技では凄いところを見せたそうじゃない?魔法の方も期待しているわよと、言いたいところだけど魔法の操作をまるで知らないと言うことで間違い無いかしら?」
結構俺のことについて詳しいな?なんか怖いんだがそんなことを口に出せるわけもなく、頷くだけで済ました。
「じゃあ!基本から行くわね。両手を出して」といわれたので、先生の前に両腕を上げる。
「魔法は、まず自分の中の魔力を知るところから始まるの。そして、それを自在に操ることで魔法が発動するわけ。魔法により魔力の量が違うから徐々に自分の魔力量を増やす鍛錬が必要になるわけだけど。魔力の流れが分からなければどうしようもないからね。これから私の魔力をあなたに流すからそれを感じ取ってちょうだい」というと俺の手を握ってきた。
握ってきた白い手は、指が細くしなやかで柔らかかったが少し冷たかった。
別のことに意識が飛んでいたが、先生が意識を集中させたのが分かったので、魔力がどんな物かとその何かに集中した。
けれども、感じるのは柔らかくも冷たい手の感触と、先生の甘く香る香水の匂いだけであった。
「何か感じた?」先生の質問に首を横に振る。
「今度は、もう少し強く流してみるわね」と言うと先ほどとは雰囲気が変わった。
息を数回繰り返すと先生から手を離された。
「まあ、一回で魔力循環を感じられる人って珍しいからね。長くて一週間掛かる人も居るくらいだから、気長にやってね。端で自分の中を巡る何かを感じられるように瞑想して下さい」と壁際を指さされる。
素直に移動し、座禅を組むと自分の中に対して向き合う。
先生はそれから、他の生徒の魔力を操っている方に行った。
俺には分からなかったが、順番に課題を終える生徒の中から先生に指示を受けた生徒がいた。
「シンノスケ君、私と魔力循環の練習をしてくれませんか?」一人の少女が俺の前に立った。
少し目がたれているがかわいい系の美少女だ。やはり、女の子には耐性がない。
顔に熱がこもるのを感じながら立ち上がると少女の手を取った。
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