第33話 冒険者学校

 ギルド長の説明はこうだ。

 俺たちが、出発した次の日には、上級パーティーの数組が出発する手はずになっていた。

 クロエは、自分たちのクエストの執行期限を過ぎてからの討伐に文句を言っていたが、メンバーを集めるにも時間が掛かると言われた。

 結果的には、俺と巡り会えたんだからと宥めると少し気分が落ち着いたようだ。

 討伐の知らせを受けて、討伐に行く予定の冒険者に洞窟を確認させたところ、隠し部屋が最奥に隠されていてそこには、血の跡があったとのこと。

 結論として、どこからか人型の魔物あるいは人間の女性が複数さらわれてきて、ここでゴブリンの子を宿らされていた可能性があること。また、最奥にいた魔物はゴブリンロードで間違い無く、自然にここに入ったり進化したりしたのではなく、何者かの手によってここで進化させられたと結論づけられた。

 クロエ達シャインデザイアーが、鉱物資源採取の依頼を受けずにいたり魔物たちに捕まっていたりしたら魔物の飽和決壊いわゆるスタンピードが起こっていたのだそうだ。

 これを聞いた3人が、ゴブリンに陵辱されてゴブリンの子を孕まされていたかと身震いをしていた。

 スタンピードが起こっていたらこの街は崩壊の危機に陥っていたが、俺たちがその前に解決したことで街が救われたと感謝された。

 ただ、洞窟を焼いたことなのか元々無かったのかで、何者が画策したかは分からずじまいで引き続き調査は行うことが決定された所までを説明してくれた。

 続いて、報酬の件になったがスタンピードを抑止したという理由から一人1,000万Lu支払われることとなった。

 思わずの高額報酬に3人は大喜びで早速それぞれが900万Luをギルドに預け、残りを受け取ると町中に消えていった。

 俺は、今ある金額で1年は軽く生活できるので全額をギルドに預ける。

 話がまとまると、エミリーさんが目の笑っていない笑顔で俺に近付いてきた。

 その笑顔、とても怖いんでやめて貰いたいんですけどとはとても言えず、素直に後をついていく。行き先は、言わずと知れた冒険者学校である。

 ギルドの建物を出て裏の建物に入り長い廊下を通り2階に上がるととある部屋の前まで案内された。

 おそらく途中で逃げ出さないように、配慮しての行動だろう。

 諦められてますから!逃げ出した後が、怖いから逃げ出しませんよ。

 部屋に入ると、階段状に机が配置された教室のようだ。

 教室には、すでに多くの子どもたちが座って本を読んでいたり、グループを作って話していたりとめいめいが授業開始まで楽しく過ごしているようだ。

俺が入ってきたのが分かるとこちらを見てきた。

 どうしたものかと迷っていると俺の後の戸が開いて教師が入ってきて俺を見ると 「今日からかいルーキー君?」と声を掛けてきた。

 先生が入ったことで皆は各自決まっているのか席に着いてこちらを興味深そうに見ている。

 「ええ、エミリーさんからは逃げられないので来ました。シンノスケと言います。よろしくお願いします」と頭を下げた。

 「じゃあ皆に自己紹介して貰おうか」先生が教壇に立ち手招きをするので隣に立つ。

 「最近この街に来て冒険者登録をしたシンノスケです。冒険者のことは一から勉強することになったので皆よろしく」と挨拶をした。

 「あんなに大きいのに冒険者のこと知らないんだって」とか口々にささやき合っている。


 「空いている席に、好きに座って良いぞ」と先生に促されたので皆の邪魔にならない席を探すと一番後ろの窓側が開いていたのでそこに腰を落ち着けた。

 「新人がいるので説明をするが午前中は座学だ。地理や魔物について講義を聴いて貰う。午後は実技で得意分野、魔法と剣術に分かれて訓練をして貰う。シンノスケは今日の午後は剣術で明日は魔術の訓練に参加してくれ。では講義を始める」と黒板に向って字を書き始めた。

 午前中の講義は大変興味深かった。地理の講義は途中参加なので分からないところもあったが魔物の講義については、種類ごとに一から説明がされていくので理解することが出来た。

 要は、実力にあった魔物を討伐し自分より強いやつを発見すればギルドに報告し 高位の冒険者に討伐して貰う。自分の身は自分で守れと言うことに他ならない。

 こうして午前の授業はあっという間に終わった。

 昼は、学校の食堂での食事になるが俺は一人で食べている。他の子どもたちは年上の俺にどうせすれば良いのかはかりかねて少し離れて俺を囲むように食事をしている。

 他の子たちが冒険者としてデビューするまでは、距離を縮めようとは思っていないので彼らに任せるままにしていた。

 そのうち赤髪をツンツンさせた少し吊り目の気の強そうな男の子が近寄ってきた。

 「お前、大人なのに学校に来たのってどうしてだ?」

 「お前じゃない。午前の始めに自己紹介しただろう。遅れて学校に入ったが目上には礼儀を示すのが普通じゃないか?礼儀知らずとは話をしない」と返す。

 顔を赤くし、吊り目をさらに上げている。

 「怒りが顔に出てる。こんな事で怒ってどうする。冒険者は気持ちをコントロールする力が必要だよ」と諭す。

 依然怒りの表情のまま睨んでくるが少し考えてから

 「シンノスケどうして学校に来たのですか?」と言い直した。

 「自己紹介の時にも話したが、冒険者としての知識が皆無なんだ。だからギルド上層部が危険と判断したので俺の実力を計ることと知識を得る為にここに来たわけだ。午後の授業で分かるよ」と返した。

 「分かった。実力を見てやる。実力次第でシンノスケへの態度を改めてやる」

 また、上から目線な言葉が出て来たな。

 まあ、午後の授業を楽しみにしててくれ。

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