第30話 祝宴

 ゴブリンから採取した魔石は、100個になったこれでも、洞窟内の隠れたところの死体からは、回収していない。

 オークやオーガは素材として利用価値があるので焼けて使えなくなった物は魔石を回収して状態の良い25体を袋に入れた。

 洞窟の奥に横たわる魔物たちの主は、魔石を回収して貰った。

 夕方には、ギルドに帰らなければならないので体力を回復するポーションをジェシカ以外が飲んだ。結構飲みにくい味である。命に関わるから飲んだが、あまり頻繁に飲むものじゃないと思った。

 帰りは、何事もなく順調に進んで地平線に太陽が半分ぐらい沈む頃に、街の城門を潜る。

 ギルドの納品窓口にすべての品を納品する。

 職員は、1パーティーが納める納品量としては異常だと言っていた。

 納品を終え、受付窓口に報告を行うと、エミリーが対応してくれた。

 エミリーは、いつものようにあきれた顔で迎えてくれる。

 「あなたが関わるといつも驚かされる量が、納品されますね。規格外過ぎてこちらの心臓が持ちませんよ」開口一番ため息とともに嫌みを言われる。

 こちらは、クエストをただまじめに行った結果で有り、進んで危険に飛び込んでいるわけでもない。冷静に判断して討伐しているだけなので心外ではあるが、それを言えば説教コースとなるのは目に見えているので、言葉を飲み込んだ。

 「この時間ですので、すべての素材の査定が出来ません。あと魔石の一つが上の判断が必要になりますです。ですから、2日後に素材に対しての報酬が支払われますのでご了承願います」


 クロエが代表して答える「分かりました。2日後ならいつでも良いですか?」

 「はい。大丈夫です。鉱石採取はクエストですのでその報酬は今お支払い出来ます。量は2回分になりますので10万Luになりますね。パーティーポイントが2回カウントされますので今月のパーティーノルマが達成されました。後、今回の件については、レポートの提出をお願いしますね」

 納品した物が物だけにギルドとしては詳細が知りたいのだろう事は納得できるが、正直面倒くさいな。

 ジェシカがそれなら私がと手を上げてくれたのでお願いすることになった。


 パーティーノルマやクエストが無事達成できた事を祝って祝宴を上げることが3人から提案されお相伴にあずかることとなった。

 1時間後再び集まることになった。ただ意外なことに場所が、俺が宿泊している若葉亭になったことだ。

 何でも、無理を言ってクエストに参加して貰ったのでわざわざ出向いて貰うのが申し訳ないのと若葉亭が、料理がうまいと定評があるとの理由からだ。


 宿に帰る前に古着屋により体に合った服を2着と下着を買うと宿に帰る。

 女将さんに4人で祝杯を挙げることを告げ、席を確保して貰うようにお願いすると快諾してくれた。

 それから、湯桶を貰い部屋に引き上げる。早速体を拭き、買ってきた下着と服に着替える。

 湯桶を持って下に降り、女将さんに渡すとともに魔法の袋に入っている鹿肉の残りやオーク肉を渡しておいた。

 厨房を預かる旦那さんが、腕によりを掛けてうまい飯を作ってやると息巻いていたと教えてくれた。

 程なくして、装備を外した3人がやってきた。女の子と言うこともあって汗をぬぐい、少し化粧を施しているのかいつもよりかわいさが増しているので心臓の鼓動が早くなる。

 3人を見た女将さんは、あらあらという顔になりジョゼの顔が若干険しくなる。

 ドコゾの鈍感野郎じゃないからね、その辺の反応はわかるからね。だからそんな関係じゃないからね。いちいち弁解する必要も無いから言わないけど。

 4人で、指定された席に座る。周りの男たちがちらちらとこちらを見ている。

 3人が、かなり可愛いから仕方ないとはいえ、むさ苦しい男ばかりを相手にしてきたからかそんなに見ないでほしい。

 せっかくの祝いなので、周りの視線を無視することにして料理を出して貰うことにした。

 親父さんが、厳選した料理を出すと言うことでお任せである。

 俺も酒は苦手でも、最初はつきあいということでミード酒の水割りを注文していた。

 ミード酒が、4つジョッキで運ばれてきた。

 最初の一杯は発泡タイプの食前酒らしい。

 皆の前にジョッキが並んだとこでクロエが乾杯の音頭をとる。

 「クエストお疲れ様。シンノスケさんのおかげで2回分もの報酬がいただけました。まだ、精算できていない報酬もありますが、ひとまず皆の無事を祝って乾杯!」

「「「乾杯」」」声が重なる。

 ジョッキを傾けごくごくと飲むと、蜂蜜の香りが際立っているがほのかに甘みがあり飲みやすかった。

 ジョッキを傾けている内に、料理が運ばれてくる。

 鳥の丸焼きやローストビーフ、じゃがバターに野菜の炒め物が並んでいく。

 ジェシカがかいがいしく、いろんな料理を取り分け皆の前に差し出す。

 器用に、自分もしっかり飲み食いしていくので料理の量に不公平感はない。

 小説に出てくる冒険者のイメージでは我先にがっつくのが一般的なのに実際はそうでもないと思っていたら、クロエが暴露してくれた。

 「ジェシカも普段は、マナーなんて気にせずがっつくのにいい男が前だと、上品に振る舞うのね」とからかう。

 とたんに顔を真っ赤に染めたジェシカが言い返す。

 「クロエは、女の子なんだからおしとやかに振る舞う事を覚えた方が良いよ。上位冒険者になれば公式の場に出ることもあるからね」

 ソフィアは、カトラリーを置き、口を拭きつつウンウンと頷いている。

 二人の態度に喉を詰まらせるとミード酒を飲み干しおかわりを注文する。

 「仲間内のお祝いで美味しい料理の前だから良いの!美味しい物を美味しく食べることが大事なの!それより、今日のクエストは怖かったけど楽しかったね」

 こいつ、自分が不利になったからって無理に話を変えてきやがったな。

 でも、今日は楽しく語らいながら飲み食いすることが主体である、二人とも大目に見てやってくれ。

 次に出た来たミード酒は少し辛口の味だった。スッキリした味は肉に合い美味しかった。

 こうして料理と酒を飲みながら宴は続いてゆくのだった。

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