第6話 マグノリアの朝
空が白んで朝日が昇り始める。鳥たちのさえずる声で目が覚めた、野宿の後でのベッドはとても気持ちよく目覚めることが出来た。
今日は、冒険者ギルドで登録して魔法袋の中の素材達を売り払い新しい武器を購入後に、何か依頼をこなしてと予定が一杯だ。
窓の外を見るともうすでに人々は仕事に精を出している。武器を携えた者は冒険者だろうか街の外に出て行こうとしている。
扉を開けると水の張られた桶が下に置かれていた。これで顔を洗えと言うことか。部屋に持ち込み顔を洗うと桶を持って下に降りていった。
食堂にはすでに、食事を終えた者や食事を楽しんでいる者がいる。みんな早起きだな~なんてぼんやり考えていたが、そういう僕も鍛錬で朝早くから起きて稽古に励んでいたんだけどそれよりも早い。
僕の姿を見つけたエプロンを着けた女性が「あらあら!桶は部屋に置いておいてくだされば頂きに参りましたのに」とスススと近づいてきて桶を受け取ると「私、この宿の女将でアンナと申します。至らぬ事が多々あると思いますが何なりとお申し付けください。ささ、朝食の準備が出来ております。お席にどうぞ」と流れるように言うと席に案内された。
朝食は、厚切りのベーコンとサラダ、塩味のコンソメスープに似た物と黒パンであった。黒パンはスープに浸して食べる。塩味と野菜が良く煮込まれた味がパンにしみて美味しい。
ベーコンは、カリッと焼かれていて朝食としては十分な量になった。
朝食を終えるといったん部屋に戻り、魔法袋からククリナイフを取り出すと腰に差し袋を担いで部屋を出た、受付には昨日の女の子がいて挨拶を交わす。
「おはようございます。昨日は良くお眠りになりましたでしょうか。」
「おかげさまでよく眠れました。これ部屋のカギです。」とカギを手渡した。
「ありがとうございます。今日のご予定はどのようになりますか。」
「冒険者ギルドに登録をしに行きます。今日の夕方ぐらいに戻ります。宿泊費として10日分そのときにお支払いします。」
「承りました。お気をつけていってらいませ。」
「ありがとうございます。あ!!お名前を伺っても良いですか?」と尋ねると女将が「ジョゼ!あなたお客さまに自己紹介してなかったのかい?」と苦虫をかみつぶした様な顔をしてあきれたように言ってきた。
少女は自分の失態に気づいて口を大きくあけ両手でそれを隠すと「あ!!申し遅れました。私、この宿屋の娘のジョゼと申します。」とカウンターに頭をぶつける勢いで頭を下げた。
しっかりしているようで結構ドジっ子のようだ。
苦笑して「行ってきます」と言い宿を出る。背中越しに明るく元気な声であらためて「行ってらっしゃいませ」と声がかかった。
宿を出て15分ぐらい歩くと、ひときわ大きな4階建ての建物に着いた。玄関は大きな2枚扉のスイングドアの様でごつい大男や凄く均整の取れた美しい女性など多くの人の出入りが結構ある。
その姿を見ていてテンションが高鳴る。お!!エルフみっけと女性のグループの中に少し耳のとがった緑の長い髪をなびかせ神々しい美貌の女性に目が奪われる。
羨望の眼差しで見つめていたのだろうかそのグループが横をすれ違ったときクスリと笑われてしまう。顔が少し熱くなる。
気を取りなおしスイングドアを潜ると、大きなホールのように大広間になっていて奥にカウンターの窓口がいくつも並んでいてそこに、多くの列が出来ていた。
周りを見渡すと長机が並んでいて、いろんな種族の人々が腰をかけ紙を囲み話をしている。
左のほうの壁には大きなボードがあり、いくつも紙が貼られていてその紙を多くの人が見ている。ここからは顔は分からないが、きっと割の良い仕事を真剣な顔をして探しているのだろう。
右の方には大きなカウンターがあり飲み物や、食事を提供する事も出来るようになっていた。
ホールの観察も終え、人々の並んでいるところに行こうと歩いて行く。あるテーブルの横を通り抜けようとしたところ、不意に足が出て来た。止まらなければ足に引っかかりこけるタイミングだ。よく見ているな、新人いびりか?
歩いている人を、写真に撮ったような姿勢でピタリと止まり笑顔を崩さず足を出してきた男にギギギと音が鳴るような感じで顔を向ける。
目は笑っていないが「先輩、人が悪いですね。このまま歩いたら何もないところで転けた間抜けになるじゃないですか。足を引っ込めて下さいますか?」と声をかける。
男は筋肉がパンパンに張った体をしており無精ひげ面で小物臭がぬぐえないが「ああ、すまねえな」とにたにたと笑って足を引っ込める気配がない。
絡む気満々の顔に、ため息をつき足を高く上げ男の足を超えると人々の列に並んだ。
しばらくすると、僕の順番になる。
受付の女性が「お見かけしないお顔ですね。初めての方ですか?本日はどのようなご用事でしょうか?」と声をかけてくる。
結構の人がいるのに、初めてとかよく分かるなと関心してしまう。緑のウエーブがかかった長い髪をして瞳も緑だ。メガネが似合う美人さんだ。ふんわりとした笑顔でドキリとさせてしまう。
カウンターに座っていなければ、気があるのかと思わずにはいられない程に笑顔がまぶしい。ここに来て女性に対して接してこなかった弊害が出て来た。
しばし、用事を忘れて笑顔に見とれてしまいました。
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