第46話 Dのクエスト4

 クロエが走り出すとソフィアは、先が少しつぶれた鋼の矢を弓につがえ、ロックタートルの目が開くのを待っている。

 ジェシカが、ファイアボールを放つ、ロックタートルの頭に命中し弾ける。

 目を開け俺たちを目視したロックタートルが咆吼をあげると、ソフィアの矢がロックタートルの目を射貫く、いくら頑丈な体を持っていても鋼の矢にはあらがえなかったようだ。

 さすがソフィアだ、的中率が高いな、一発で目的を一つ完成させた。

 ロックタートルが苦痛によりヘイトをあげると、クロエが飛び上がってからの上段からの一撃が背中にある甲羅にある結晶と結晶の間に炸裂した。

 ロックタートルは、一番近くに居るクロエに狙いを定め、首を伸ばしかみつき攻撃をかます。

 クロエは、バックステップで難なく躱すとサイドステップで敵を翻弄する。片目がみえないために、首を左右に振り視界に入れば、噛みつこうと大きく口を開け、歩を進める。巨体のため歩みはゆっくりだが、首の方は俊敏だ。結構長く伸びる首に、クロエは注意しながらロックタートルの攻撃をギリギリ躱している。

 これが、“ギリギリで”なのか“ギリギリに”なのかは分かりづらいが、クロエの表情から意識的に躱しているように感じる。

 俺は、20センチ程の鉄球をようやく持ち上げ、ロックタートルの口腔内が見える瞬間を見極める、激しく首を振るためなかなか見極めのタイミングが合わないが、俺とロックタートルの軸線上にクロエが立つ。

 ロックタートルが大きく口を開けたとき、しっかりと口腔内が見えた。

 両手を押し出す様に前に出すと、手の中の鉄球がダンという音と共に消えた。

 高速で打ち出された事による物なのだが、早すぎて玉を視認できないために起こった現象だ。

 危険を察知したロックタートルが口を閉じたが時すでに遅く玉は、ロックタートルの口腔内へと入っていく。

 鉄球がロックタートルの中で盛大にはぜたのだろう、甲羅にヒビが入り、口から盛大に体液が吹き出る。

 「ヒビに、剣を刺せ」大声で指示を出すと、クロエは、走って回り込み勢いを生かして跳躍すると甲羅の真ん中にできた大きなヒビに剣を深く刺した。

 剣は、つばの所まで刺し込まれたところでロックタートルはその一撃で絶命し、体が半分にガコンという音と共にいびつな形で割れた。

 皆で、ロックタートルのそばに立っているクロエの所に駆け寄り、俺が皆にねぎらいの言葉を掛ける。

 「ありがとう!見事な連携だったな。目的の一つ確認が取れた。まだ居るから残りをこの調子で片付けよう」

 「相変わらず変な能力ね、どんな力なの?」クロエが問うてくる。

 「ウーン、知らん。意識すると使えるから使ってるっていう感じかな」

 「一度、教会で見て貰った方が良いと思いますよ?他にも、使ってないけど使えるスキルとか有るかもしれないですし」ジェシカが返す。

 「分かれば戦術が増える」短くソフィアが補足してくれる。

 「分かった、これが終われば行ってみるよ」


 袋に、ロックタートルをしまうとクロエを先頭に菱形に陣形を組んで坑道に入って行く。

 坑内は、入り組んだ形をしているが基本は、本道から枝葉を伸ばすように脇道ができている。

 鉱石の影響か薄く青く光っている坑道は、照明を必要としないほどには真っ暗闇とはなっていなかったので、そのまま奥に進んでいく。

 その本道を、しばらくたどっていると異様な脇道に出くわした。

 その脇道は、今まで見てきた道より二回りほど大きく、明らかに人の手による物では無いと分かるぐらいである。

 おそらく、ロックタートルが食い漁ってできた道だろう。

 近くに居るかもしれないので誰も口を訊かず、クロエがそこを指さす。

 3人で首肯するとクロエが、歩き出してその坑道に進んでいき皆も追随する。

 奥の方から、息遣いが聞こえ、がりがりと岩を砕くような音も聞こえてくる。

 しばらく進むと少し開けた場所に出て来てそこは、ロックタートルの餌場になっていた。

 一匹のロックタートルが、無心に青く光る岩をかじっている。

 クロエが、音もなく駈け寄り跳躍すると最初の一撃を甲羅に打ち込んだ。

 今度は、甲羅から生えた結晶の柱がはじけ飛ぶ。

 ロックタートルは、食事の邪魔をされて苛立ったのか。クロエの方を見て吠える。

 方向をゆっくりと変えて邪魔者を殺そうと首を伸ばす。

 クロエを援護するために、ソフィアが鋼の矢を放ち、ジェシカもファイアボールを打つ。

 矢は、甲羅や足に刺さるものの、有効打にはならいが意識は此方に向けられた。

 ファイアボールが当たったところは、少し赤みを帯びるもののこちらも有効打にはなっていないが、ヘイトをあげるには十分効力を上げていた。

 クロエも死角から甲羅への斬撃を加えて行く。

 周りを飛び跳ねるクロエをうっとうしそうにし噛みつこうともがいていて此方には、近づけないで居る。

 俺は、魔力を練る、ジェシカと違って覚えはじめだから魔法の発現まで時間が掛かる。

 ようやく、青白く輝く魔弾が完成すると、それをソフィアが見て鏑矢を放ってくれる。

 唸りながら鏑矢が飛んでゆくと、クロエが俺とロックタートルの軸線上に移動する。

 つられるように、首を振り噛み砕こうと口を大きく開けたので、口の中が丸みになった。

 俺が“ファイアブロック”と技名を発すると魔法が発動されて魔弾がロックタートルの中に消えていく。

 こうして2匹目が討伐された。

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