第9話 武器商店にて

教えて貰った通りにギルドを出ると左に進むと、直ぐに一つ目の角を曲がった。そこは、多くの人が行き交うメインストリートのようで露店や立派な店構えの店が並んでいた。

お上りさん丸出しで、左右の店を見ながらゆっくりと進む、思わず立ち寄りたくなるような、肉を焼くいい匂いを出している露店や面白そうな物を売ってそうな店舗もあるが今は武器屋だ。教えて貰った店を探して歩くと、通りには路地がいくつか有り、その一つにコッコロという文字と2本の剣が交差した後ろに盾をあしらった看板を見つけた。

店は、隠れるように細い路地にあった、早速店の扉を開けて中に入ると、店の中は、薄暗くそして誰もおらず鉄の焼けたような臭いに包まれていた。

鍛冶屋も兼ねているのだろうか、「誰か居ませんか?」と声をかけると、奥から小さいけれど体のごついおっさんがのそりと出て来た。風貌が元の世界でのイメージから、ドワーフと呼ばれる種族かなと思う。

「なんじゃ?」と一言だけ無愛想に言う。


 「弓と矢がほしくて。見せて貰ってもよろしいでしょうか?」


 僕を上から下までじっとりとみてフンと鼻を鳴らし「おまえさんに合う弓があれば良いが、好きに見るが良い」と素っ気なく返された。まるで、僕に合う弓なんか置いて居ないという感じがひしひしと感じる。


 こくりと頷き、端から順に色々と眺める。よく見ると派手な装飾の割になまくらであったり普通なのに良く打たれた剣が、普通に並んでおかれているその割になまくらのほうが、値段が少し高かったりしている。

 この店主、嫌らしい性格をしているようだ、わざと良い剣と悪い剣を並べて見極める技量を試しているな!

 まあ、今は剣よりも弓だ。弓を並べているところに移るとふと、視線に気づいた。

 店主はカウンターからこちらをじっと見つめている、何を選ぶか観察しているのかな?

 弓を一つ一つ手に持って弦を軽く引いて手応えを見るが、今ひとつピンとくる物がない。ふと、壁に張り付いたように展示された弓に目が止まる。それはここにある弓とは一線を画す事が分かる。全体のフォルムは白く所々にオパールをはめたのかと思うような虹色に輝く箇所があって弦は銀色だ。値札が掛かっているが目をこすってしまった。ゼロが1.2.3・・・え!とびっくりする100万とはさすがに高い、それでも思わず手が伸びると「おまえさんに、そいつは無理だ。今まで誰も、使えなかった代物だ。他ので我慢せい」と静かに言葉を発してきた。


 「とても、気になったので触るぐらいでも良いですか?」


 「ああ、触るぐらいなら」とフフンとあざ笑うように返す


 どんな凄い物なんだと、ますます興味がわく。手に持つと軽くもなく重くもなくしっとりとした手触りだ。かまえると自然と体になじむ。


 「そいつは、俺が若い頃に偶然浜に上がった神獣の白鯨の骨や皮とひげで作った物だ、若気の至りで自分の思いをぶつけた結果、誰も使い手が現れなかった」


 なんで今、独白を受けるの?と思い弓を構える腕は自然で力がいらない。弦を摘まみ引こうとすると、おやじが「やめておけ、怪我をするか、びくともせん」


 「もし引けたらどうしますか?」と挑戦的な目で聞いてみた。


 「そうさのう、わしもかなり歳を重ねすぎた。そいつを愛し使いこなすやつを見てみたい。もし使いこなせるなら半額にしてやる」とにやりと笑う。


 いや、そこはただでとか言うところじゃないんかい?ウーン結構シビアだな~と思うがホ○リ物と言うことかな。

 気を取り直して、真剣に素引きをする、手応えがあるが引けないことは無い。

 キリキリと弦を引ききるとゆっくりと元に戻す。動作の一部始終を見ていたおやじが

 「綺麗な型だ。うんいい、良いぞ」と褒めてくれる。


 これはなかなか良い代物だ。ぜひともほしいが、弓で100万は手が出せない,

すると「おまえさんなら、10万で譲ってやる。大事に扱えよ」と突然におやじが言ってきた。

 素材からすると、とても高い物だろうが10万なら是非買いたいと答える。

 次に、矢を見せてと言うと、10本一束の矢を数束奥から持ってきてくれた。

 束には1,000Lu の札がかかっていている。一束を取るとカウンターに広げコロコロと手でなぞりながら転がす。次に鏃が回転するのを眺め、最後に羽を触りそして中から3本だけ取り出すと

 「親父さん、この3本は返します」とだけ伝えた。


おやじは、無言で受け取ると1本1本丁寧に見ていたがぼそりと「おまえも、なかなか厳しいな、分かったこの3本は売らん」というとカウンターにあった矢を丁寧にまとめ次の束を並べ始めたそうしてまた同じ作業を繰り返すこと3回、合計8本が返却された残り32本の値段を聞くと2000で良いという。


出費は102,000Luと結構押さえることが出来て満足である。大銀貨と銀貨を1枚ずつ出しておつりの大銅貨を8枚受け取ると弓と矢を袋に収める。


「おまえ、結構見所有るな。何かあったらいつでも来い。たいていのことは相談に乗ってやる」と、にかっと笑う。

これでようやく、街の外に安心していける。さあ次は依頼を探して大金を稼ぐぞ!

今まで毎日が忙しかったんだ、これからはゆっくりのんびりの生活がまっているんだ~

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