第41話 卒業
放課後、夕日が照らす職員室の横にある会議室の中央に一人腰掛ける。
目の前には学校長であるギルドマスターを始め俺が受けた講義の先生方がその両脇を固めていて、とても居心地が悪い。
校長が、最初に口を開いた「マリアンヌ先生から報告を受けたが、魔法練習場で的を射貫いたと聞いたが、どのようにして射貫いた?あれは、結構な魔法障壁が張ってあったと思うが?」
「はい。マリアンヌ先生からご教授いただいた。ファイアボールを練習していたのですが、他の皆と同じ様な魔法を撃ってみたくて使いました。只、発動するとは全然思いませんでした」
思わず敬語を使ってしまった。
「貴族の前でならともかく。我々の前では敬語は不要だ」ぴしゃりとかえされる。
「マリアンヌ先生もう一度説明を頼む」と校長が言う。
「はい、皆にはそれぞれの属性でアローを練習させていました。シンノスケは、魔法操作の訓練の成果を確認後、ファイアボールを他の生徒と共に標的に向って撃つよう指示していました。練習の後半に差し掛かったところで、私が他の生徒の指導中に事が起こりました。シンノスケが標的に向って指さすような形で立っており、標的からは煙が、上がり穴が開いていました。それが、これです」と練習場から外して持ってきた的を校長に差し出した。
マリアンヌ先生から的を、受け取り確認をしている。的の上の方に1㎝ほどの焦げた穴が開いていて的の3分の1ほどがえぐれた格好になっている。
的の厚さは5㎝ほどだろうか結構な重量があるとおぼしきそれを、クルクルと回しいろんな角度で見ると机においた。
「これ程の威力とは、中級魔法と同じ威力だ、普通の盾では貫通しているだろうな」
「シンノスケ、君は魔法が初めてだと言ったな?アロー形の魔法を撃ってみたくてやったと言うことだがどんな魔法だ?」
「えーと。先生にはファイアボールしか習ってないので、それをアレンジした。大きさを極限まで小さくして早く飛ぶように放っただけだ」と言葉を選びながら返した。
「ファイアボールって小さく出来るものなのか?」とライアン先生が尋ねると、マリアンヌ先生は「理論上は可能だと思いますけど、実際は出来るものが居ませんよ。 それより、アロー形魔法を使った方が簡単ですし」と困惑した面持ちで答え、審問中だというのにいつものように、こめかみをグリグリといじり始めた。
「ということは、シンノスケのオリジナル魔法と言うことか。これを使えるものが増えると国家間の勢力関係が、崩れることになるな」と校長がうなる。
初級魔法で中級魔法の威力が出せるとなると、1人で3人分の活躍が出来るのと等しいと他の先生がつぶやいた。
「シンノスケ、これは秘匿事項だ、人前では使わないように。後、先生方の意見はどうかな」校長が振ると、ライアン先生が「もう我々の上を行っている。これ以上は、学校にいる必要が無いと思うがどうかな?」と言うと他の先生も一様に頷いた。
これは、頭痛の種を早く放り出して、実践で使えと言うことだろう。
「分かった。では、本日をもってシンノスケの実力考査を終了とする。そしてクラスだが意見がある者はいるか?」
校長の左に座る名も知らぬ先生が「一階級昇進では、役不足だと。そして、三階級昇進では他の冒険者が身分不相応のクエスト以外のことをやらかす危険が発生するでしょうし、いらぬ混乱が起きるかもしれないですし。予定通りで良いと思いますがどうでしょうか。今後の働きによって早めに上のクラスに変えるというのも手だと思いますが・・・」
「副長の意見に反対はあるか?」と校長が意見を求める。
そうかあの人が、この学校のナンバー2の人かなるほど。
他の先生からは、反対の意見が出なかったため、すんなりと審問が終わった。
ちなみに、的を壊した件については、授業中の事であり不問に付された。
こうして、俺の短い学校生活が終わり晴れてDランク冒険者の仲間入りを、果たした。
その場で、校長からギルドマスターとしての認可状を手渡され受付で、更新手続きをするよう言い渡された。
学校から出ると表通りに回ると、日没まであと少しということも有り、冒険者達が続々と帰還してきている。買い物客も家路を急いでいるのだろう結構人通りが有り混雑していた。
入り口を潜り、エイリーさんの所まで行くとギルドマスターの認可状を手渡した。
それを確認するとエミリーさんが、「Dランクですか?凄い、普通なら3~4年も掛かるランクアップを1月も掛からずにやるとは・・・・・・あっ、更新を行いましょう!タグをお預かりします」と少しの間フリーズをしてから手を出してきた。
その手に、タグを乗せるとエミリーさんは、機械に差し込んだ。
すぐに更新が終わり、戻ってきたタグにはDの文字が煌めいている。
「これで、エミリーさんに心配掛けずにクエストをこなせますね」笑顔でいうと
「いえ!DにはDの怖いクエストが待っています。あなたは、無茶をしますから私が安心できる日はありません」ときっぱりと言い返してきた。
いつも無茶をしてきたつもりはないが、周りはそうは思っていないらしい。
身の丈にあったクエストをするように誓わされて、ギルドを出た頃には日は完全に沈み夜になっていた。
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