第51話 アフター
両腕の痛みに目が覚めた。じんじんと痛む腕に違和感を覚えながら最初に目に映ったのは、ようやくなれた板張りだけの天井では無く、白い化粧張りされた天井であった。
貼り付けにされた様に動かない上に、何か柔らかい物が体に張り付いているため、頭だけを動かし周りを見渡すと左右に、俺の腕を枕代わりに、クロエとソフィアが気持ち良さそうに寝息を立てている。
意識すると、二人の甘い香りが鼻腔をくすぐり、女性としての柔らかい物が体に当たっていることに、意識が行ってしまい、男としてやばい状況になりつつある。
なんとか肘から先を動かし、二人の肩をタップする。
「おいい!起きてくれ!動けん。頼むから離れてくれ~」悲鳴にも似た声を発するとふたりが、 寝ぼけ眼を、開けた。
のんきに「あ、おはよう」二人が返すが、まだ状況が分かっていない。
「「まだ眠いから、もう少し寝かせて」」となぜはハモってまた目をつぶって寝た。
幸いかは分からないが、ジェシカは隣のベッドに頭から毛布を被って寝ていたが、俺の叫びに気が付いて、目を覚ました。
「シンさん、おはよう~」こちらも、まだ寝ぼけているようだが、上半身を起こして此方を向いて挨拶をする。
だんだんと目が覚めていき、今の俺の状況に頭が追い付いてきたのか、だんだんと顔色が赤く染まってゆく。
ガバッと毛布をめくりベッドから飛び出すも、ジェシカの格好は下着姿だ。
目の保養、いや羞恥から急いで目を背ける。
「クロエ、ジェシカ起きなさい!なんでシンさんと一緒にベッドで寝ているんですか」
声を荒げて、毛布をはぎ取る。はぎ取られた毛布の中は、なぜか3人とも下着姿だ。
俺に至っては、パンツ一枚で寝ていた様だ。
ジェシカが、3人の状況に一瞬固まったことが分かったが「きゃぁぁ」と悲鳴を上げた。
目を背けていたせいで、ジェシカの表情までは分からないがこの状況のせいで、どちらにも顔を向けることができなくなった為、目をつぶる。
ジェシカの悲鳴で、ようやく二人も目を覚まして自分達の状況が分かったのか二人が俺から離れるとクロエが「ウワァァ」とソフィアは短く「・・・っ」と声を上げた。
「ななな何で、シシシンさんがわわ私たちのベッドでねね寝ているのよ」クロエが、慌てたようにまくし立てる。
つい3人の方に、視線を向けると3人は耳まで真っ赤にしながら、俺を睨んでいる。ジェシカに至っては、両手で顔を覆っているが、指の間からしっかりと俺を見ている。
「「「見るな~」」」3人は下着姿だったため。すぐに反対側に向き直り、「ごめん、気が付いたらこんな事になっていた」と謝罪する。
「服を着るまでこっちを見るなよ」クロエの怒気が孕んだ声に、ビクリとし「はいぃぃ」と思わず返事を返す。
しばらくして、3人が服を着る衣擦れの音が聞こえるが、心を無心にしつつ耐えた後に「シンさんも服を着て、目のやり場に困る」ジェシカの小さな声が聞こえたため、3人の方を見ないようにしながら自分の服をたぐり寄せて着込んでから3人にむきなおった。
3人の顔は、まだ赤いままだし、顔に熱があるのが分かるので、たぶん俺も顔が真っ赤なんだろうと思う。
困惑と怒りや羞恥の混ざった複雑な視線が怖い、思わず床に正座をしてしまった。
「どうして、こんな状況になったか説明してくれるかしら?」すごい圧力がこもった声でクロエが、聞いてくる。
「いや、こっちが聞きたいくらいだ。2件目の扉を潜ったぐらいまでは、覚えているんだけどその後が、サッパリなんだ。で、気づいたら見知らぬ部屋で、二人が俺の腕枕で寝ていたという訳なんだ」
そこまで言うと、クロエとソフィアの顔が、さらに赤くなる。
「2件目の酒屋からのことを思い出してほしいんだが」記憶は3人に頼むしか手立てがない。
3人はしばし考えて、記憶をたどって行く
「4人で、食事を終えた後は、もう少し飲みたいとクロエが言ったでしょ?そして、皆で肩を組んで近くの酒場にはいって、シンさんはもう飲めないってミード水を頼んで飲んでいたけどすぐに寝ちゃったわね?」とジェシカが言うと「そうだ、シンさんが弱すぎるって笑った後に、誰が強いかで盛り上がって火酒を皆で飲んだんだ!」とクロエが言う。
「ジェシカがつぶれた」ソフィアが続ける。
「で、あたしが最後まで頑張ったけど皆を連れて帰れないから、酒場の2階の宿を取ったんだ」とクロエがここの場所が、どこだか思い出した。
そうか、ここは酒場の宿泊部屋だったのか!最初につぶれたのは俺だから誤解が解けたと胸をなで下ろしかけた所、クロエ爆弾投下が決まった。
「部屋に、皆を運ぼうとしたらシンさんが、目を覚まして俺が運んでやるといって二人を担いで部屋に入った所で・・・・・・それから、どうなった?」
「いや、聞きたいのはこっちだ。途中で目を覚ましたのなんか覚えてないぞ」
3人の俺を見る目が、怪しい物を見る目つきになり、おもむろに、クロエがベッドを丹念に見た後にクンクンとかぎ出した。
その行動の訳も分からず見ているとほっとしたような顔になる。
その顔に、疑惑が晴れたと思う間も無くとんでも発言が飛び出す。
「私たち皆経験したこと無いし、エッチな匂いもしないからしてないわね!でも、下着姿って言うのはどうしてかしら?」視線が俺にむく。
「だからしらないって!朝までぐっすりだったんだから。信じてくれよ」
3人はため息をつくと「今回は、嫌らしいことはしてないと想うけど次は無いわよ」クロエの低い声に戦慄が走る。
「ありがとうございます」と理不尽に思いつつも、綺麗な土下座をしたのだった。
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