第21話 旅の終着

 朝起きると、2人も寝ていた。どうやら真夜中に帰ってきたようだ。

 ドアがノックされるとその音で、二人が目を覚ます。

 俺がドアを開けるとアリエルさんが居てその後ろに、エリザベートがいる。


 「おはようございます。朝食の時間ですよ」と微笑んだアリエルさんから声を掛けられる。

 朝からその笑顔はまぶしい。一気に目が覚めた!

 「おはようございます」と俺が返すと、その後ろからダグラスさんが「おはようございます。昨夜のうちに、検分が終わり“フクロウ”が王都に向いました。我々も出立しても良いと許可を得ています」と自分の主に向って報告をする。


 「フクロウって?」と振り返って問うと


 「伝令役のことさ。夜間でも移動出来る事からフクロウと呼ばれている。スケは初めて聞くか?」といわれ、コクリと頷いた。


 「わかりました。では、我々も食事を終えたら出ましょうか」とエリザベートが言う。

 皆で食堂に移動し食事をする。黒パンと野菜のスープとサラダと質素ながらも美味しい、昨夜のご飯を覚えていないのが悔やまれる。

 そんなこんなで手早く準備を済ませ、皆が馬車に乗り込んだ。

 今日も快晴だ。何事も起きず無事に王都まで行きたい物だ。


 何度か休憩を挟み、無事王都の壁が見えてきた。さすが王都と思わせる長大な壁が遠くからでも分かる。

 でも、見えてからが大変だ、行けども行けども一向に近付いた感じがしない。


 太陽があと一つ分で地に付こうかという頃に、ようやく王都の壁の前に到着した。門には多くの人たちが検閲のために並んでいる。馬車の列もそれなりにある。何より凄いのは貴族の馬車がゆるゆると進んでいることだ。どれだけ多くの貴族が出入りしているんだ。

 ちょっと不思議だったのは一般の馬車は2列になっていて、明らかに馬車の質が違う。

 一列は、貴族では無いが豪奢な作りの馬車と日焼けした幌を被ったものや幌無しの馬車と分かれている。

 フィリップさんは、高そうな馬車の列に並ぶ、「馬車の列に何か理由があるんですか?」と他是寝ると「この列は、商会や金持ちがあらかじめ申請して割り符を持っているもの達が並んでいるんだ。貴族のようにはいかないが、検閲は比較的緩いかな」

 フーン信用を金でかうのか!今はその恩恵にあやかりますか。


 程なくして、順番がきて割り符の照合が行われ簡単な質疑応答が行われ城門を潜った。

 城門の中は馬車が楽に行き来出来る広い道と人が歩く道が分かれていて石造りの高い家がそれを覆うように建っている。窓は堅牢な鎧戸になっており守りも充分である。

 その道をまたひたすら走り、ひときわ大きな5階建ての建物の前に止まった。どうやら、目的地に着いたようだ。


 フィリップさんが「ようこそプラダ商会へ」とおどけるように両手で指し示すそれは、日本の百貨店を思わせる大きさだ。

 ポカーンと大きな口を開け見上げるのは仕方ないとしてほしい。こんな大きな商店のお嬢様だったのか。


 馬車からエリザベートが降りてきたとたん、店の扉が勢いよく開き中から初老の男性が飛び出してきて優しく包むように抱きしめた。

 「お帰り、シシィ。長旅お疲れ様。道中何事も無かったかい?」と優しく告げる。

 「ただいまおじいさま。みんなのおかげで傷を負うこと無く帰ってきましたわ。」と返答する。


 そこで初めて、男性が御者台に座る俺に気がつく。

 「見ない顔だねぇ。向こうで雇ったのかい?」

 「はい。向こうに行くときにオーク兵に遭遇し、危険なところを助けていただいたの。そのときジャンが負傷してしまって、今、向こうの病院で療養中なの。だから帰りの護衛に参加して貰ったの」と説明をする。

 「そんな魔物が街道にでたのかい?さぞ怖かっただろう」と再び抱きしめるている。


 そんな光景を見ていると、フィリップさんが馬車を店の裏に戻すというので馬車から降りると馬車は、角を曲がって消えていった。


 熱い抱擁を終えると、男性は俺に近づき「孫を救ってくれてありがとう。歓迎するよ!」と手をさしのべてきたので握手をした。

 「長旅で疲れただろうゆっくりすると良い。さあこちらへ」と付いてくるよう促された。

 男性とエリザベートが先を歩きその後をついて行く、最後にダグラスさんとアリエルさんが続いて歩く。まだ護衛の仕事は継続中だ。だから、家の中に入って安全を確認しなければ完了とならない。

 店の中に入ると、上品な人たちで混んでいて色々な品が綺麗に陳列されている。

 そんな中を店の奥に進み、応接室に通された。

 ソファーの一つを勧められたので、長いすの端に座る。

 反対側に、おじいさんとエリザベートが座ると「私はゲイリー・プラダここのオーナーを務めています。この子は娘の子で私の生きがいでしてね、改めてお礼を言わせてくれ孫を救ってくれてありがとう」というと深々と頭を下げた。


 「いえ、偶然が重なっただけです。助けたのも自分の精神衛生上のことですし、そのようにお礼を言われるようなことをしたと思っていません。どうぞ頭を上げてください」というとようやく頭を上げてくれた。

 それから旅で起こったことを、エリザベートがゲイリーさんに事細かに説明していった

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