第16話 休憩
休憩に入ると俺は、火起こしを頼まれた。馬車に積まれたレンガで簡易の釜を作り木片を組むと、金属の棒と棒をこすり合わせ火花を上げて綿のような木くずに移してゆく、直に煙が立ち上る小さな火種が出来たので、木綿で包み優しく息を吹きかけ空気を送ると小さな火が出来る。木綿が燃え切らないうちに木片に放り込み徐々に大きな火へと変えポットで湯を沸かす。
フィリップとダグラスが、馬を近くの木につなぎ水桶になみなみと入れ馬に与えると頭を突っ込むようにしてガブガブと飲む。水を飲み切ると今度は干し草を与えた。
アリエルは、食事の準備として草原に布を広げ、人が座れるようにすると食器を準備していく。
みんなが、布に座ると食事を始める。俺は、宿屋の女将さんに作って貰った凄く薄く切った黒パンにロースト肉や野菜を挟んだサンドイッチもどきをぱくつく。
もどきと言ったのは、黒パンが結構固くふわふわの白いパンに挟まれたサンドイッチに慣れ親しんだ当方としては、別の料理を食べている感じが拭えないからだ。
他の皆は、ビスケット状のパンをスープに浸し食べている。スープには乾燥した野菜が入っていて、さながらインスタントスープである。合間に、ジャーキーを食べている。
とりとめの無い話をしながら食べる食事はピクニック気分でとても楽しく美味しい。時折吹く風が頬をなでる。食事はあっという間に終わり、食後のお茶を楽しいんでいる。
お茶を飲みながらふとエリザベートが「そういえば、シンノスケはマグノリアについて、次の日に冒険者登録したのでしょ?何かクエストを、こなしたのかしら?」と話を振ってきた。
来ましたよ!尋問の時間がと思いながら「ああ、登録してから薬草採取のクエストをこなしたよ。ただ、大量に採取するために単独で森に入ったからFクラスの冒険者が森に入るなと、めちゃくちゃ怒られたけどね」とテヘペロと舌を出す。
「当たり前です!初心者が森に入るには、パーティーに入ってサポートを受けながらこなすのが普通です。単独で入るなんて自殺行為です」とこちらでも怒られた。
ダグラスさん達も、あきれ顔でこちらを見てくる。視線を、いたく感じる。
「それで、成果はどうなったのですか?」
「おかげさまで、8回分の薬草が採れたので、しばらく観光などして遊ぼうと思ってんだけどね」と怒られるいわれはないので皮肉を込めて言ってやった。
「それは、申し訳ありません。でも薬草クエスト8回分って取り過ぎでは無いのですか?」
「場所は、秘密ですが半分も取っていないですよ。王都から戻ってくる頃には元に戻ってると思います」
「と言うことは、帰ったらまた行くつもりですね?だめですよ!どこかのパーティーに入るかレベルがDクラスになるまで我慢してくださいね!」と釘をさされてしまった。
これはうんと言わないと延々と説教コースかな?「分かりました。森にははいりませんよ。でも、すぐにDクラスになって見せますからね。あ!Dクラスなら薬草採取クエストって割に合わなくなるじゃないですか!!」
「では、森の薬草は諦めてくださいね」、怖い笑顔で返された。
「はーあー、分かりましたあの森の薬草は諦めます」ため息をついて、うなだれた。出会って間もないのにお節介がすぎる。
じとっとした目で見られるが、行かないと答えたので一応納得はしてくれた。
「もう、そろそろ出発しないと夕方までに魔の森を抜けなくなります」とダグラスさんから、提案されたのでこの話は、打ち切りになった。
みんなで、片付けを済ませる。火に湯を掛けて消してから土に埋める。中途半端に処理をすると山火事の原因になるので土の上からも水を再度かけておいた。
馬車に、荷物を積み終えると、3人が馬車の中に入り、引き続きフィリップが手綱を取り、横に俺が陣取る。
馬に鞭が入り、馬車が静かにうごきだした。
森に入れば危険な物を近づけないようにしなければと、すぐに対応で来るように弓矢を取り出す。矢筒は腰につけた。
フィリップが白く輝く弓を見て少し驚くと「その弓はどうした」と質問をしてきた。
「コッコロさんという鍛冶職人の店で見つけたホコリ物です」と返す。
「コッコロというとあの町で偏屈だけど凄腕で有名な鍛冶職人のあのコッコロか?」
「なんとなく分かります。がらくたと名刀をごちゃまぜに売り、値段をごまかしたりとか買い手をためしたり、とにかく変わった方ですよね」と苦笑を漏らす。
「で、お前はそれに合格してそれを手に入れたと?いくらで買った?」
「素材から見てたぶん手間賃にもならないでしょうね。10万です。実際はいくらぐらいですか?」
フィリップさんはピューと口笛を吹いた。「そりゃあ確かに手間賃にもなっていないな。俺が知る限り1,000万で売り惜しみしたって言う話だぜ」
値段を聞いて冷や汗が頬を伝う、確かに手に入らなそうな素材で出来ておりそれなりの値段はすると思っていてが1,000万以上か、大事にしないと罰が当たりそうだなと考えているうちに馬車は、徐々にスピードを上げ森に入っていった。
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