第28話 魔法攻撃そして終焉

 方法は、至極簡単である。

 俺とソフィアが弓で、ジェシカが魔法で遠隔からの攻撃を行う。ある程度倒れたら俺が突撃し広場の魔物をある程度倒し裂け目に向ったら、クロエが突撃して残りを捌いて貰う。

 ソフィアとジェシカは引き続き遠隔からの攻撃を続けて突撃組のサポートに徹して貰う。

 外で暴れたら洞窟内にいる奴らが出てくるだろうが、出口は狭いので裂け目にとりつけば後は流れ作業の様に斬っていくだけだ。


 ある程度の信頼は得られたのか反対意見は出ず、首肯してくれた。

 そこで俺は腰に矢筒を付け、白弓を袋からズルリと取りだした。

 そこで、ソフィアの羨望の目を向けられる。

 そりゃそうか見た目が、どこの王族かと思うような本体が真っ白で、金の模様が施されている弓だからな。

 使うたびに、こんな目が注がれるのは俺としては嬉しくない。

 これからしばらくは、自作の弓をコッコロさんに直して貰うか新しい長弓を作って貰って使う方が、良いかもしれないな。

 良い弓過ぎて、逆の意味で使いづらいな、もっと上級になってから使えばこんな思いをしなくてすみそうだ。

 緊張している3人に、気を取り直して「じゃあ攻略と行きますか」と軽めに言葉を掛ける。

 俺が、弓をかまえて放つ。その後すぐにソフィアが矢をジェシカが魔法を放つ。

 一匹また一匹と倒れていく、こちらに気づき岩肌を駆け登ろうとするが、降り注ぐ矢と魔法になすすべ無く倒れていく。

 外の異変に気づき穴から出て来られても面倒なので、矢筒を腰から外してそこに置く弓は背中にある袋にしまうと、同田貫もどきいや、いい加減名を与えよう、波紋が冬の山頂から下界を見下ろしたときに見える雲海のごとく静かにうねる様に似ていることから“雲海”だ。

 それを抜くと岩肌を大きく跳躍するように降りていく、重力に従い速度が速くなり膝に体重が掛かる。タイミングを外すと転げ落ちて大変なことになるが構わずに4歩で底まで降りる最後は魔物を上段から真っ二つに切り伏せた。

 魔物は棍棒を持っていてそれで防ごうとしていたが棍棒ごと勢いで切り伏せたのだ。

 体全体にしびれが走り、力が抜けるのをなんとかこらえ、そばに居たオークを下段から切り上げる。さすが、神様が作った業物だけ有って切れ味はすこぶる良い。

 後からくる魔物に向かい、むちゃくちゃにふるってくる武器をいなし躱し確実に急所に斬撃を入れてゆく、盛大に血しぶきを上げ絶命してゆく魔物に対してもはや何の感情もわいてこなくなり作業のように切っていく。

 広場にいた魔物の数が半分になったので、上に合図を送ると岩の切り目に向かって駆け出す。

 クロエは待ってましたと、崖を駆け降りるとちょうど矢を肩に受けてひるんだ、ゴブリンを袈裟懸けに切り伏せた。

 岩の裂け目に取りつく前に、裂け目からゴブリンが出てきた。

 広場の惨状に一瞬ひるんでいる。すかさず心臓にめがけて刺突を繰り出す。。

 防御の体勢をとる間もなく、心臓を貫かれたゴブリンは裂け目のほうに倒れていく。

 後続のゴブリンは、死んだ仲間に寄りかかられて、身動きが取れなくなっている。

 こちらからは、ちょうど胸から上が丸見えで相手は剣を振るう隙間がない。

 だからのどに、刀を突きさした。

 それ以上の突撃はこちらに不利になるので、相手が出てくるまで待ちの状態だ。

 広場に出ている魔物たちは俺に構える暇はなく崖の上からの矢と魔法の雨や底に降りたクロエに対応するので手いっぱいだ。もっとも、奴らの攻撃は当たらず死んでゆくだけなのだが。

 裂け目の奥では、2匹のゴブリンを踏みつけることで外に出ることにしたようだ。

 出入口すぐで対応すればすぐに死体で裂け目が、埋まってしまうので少し離れたところで待機している。

 暗いところから出てきたので目が慣れていないにも関わらず、俺を視認すると怒り狂って武器を振り、襲い掛かってくる。

 不安定な状態では、まともに相手になるわけもないので、当初の計画通りに単純な作業となり果てた。

 奴らは、切り込んでくる勢いのまま死んでいくので俺の後ろに死体が山となる。

 広場の魔物が片付いたのか3人が俺の近くに来るのが分かった。

 「ジェシカまだいけるか?」相手を見ずに告げる。

 「はい!ポーションで回復しましたからまだいけます。」声には若干の疲れが見えるが十分に戦える気力が感じられた。

 「裂け目の中に、今打てる最大級の火炎魔法を撃ってくれ」


 「詠唱に少し時間をください。私では」話を続けているが時間が惜しいので声をかぶせて

 「こちらは任された。お願いする」

 猶予がないのを感じて、返事を返さずに詠唱に入った。

 ソフィアも見えない敵に向けて穴の中に矢を放っている。

 穴から出てくる魔物は、体のあちらこちらに矢を受けていてまともに戦える状態ではない。

 おそらく、穴から出る前に命を落とす魔物もいるのだろう、穴から出てくる頻度が幾分か落ちている。

 クロエも切り伏せているので、俺の負担がずっと軽くなった。


 裂け目の前に4人がそろったため誰に向かっていけばよいのかわからないのか弱いやつを見定めようとキョロキョロと目をさまよわす魔物たち、そのすきを狙って矢を放つソフィア。

 詠唱を続けるジェシカは、いい標的でありかつ分からない脅威でもある。

 魔物たちは、ジェシカを先に討とうと駆け寄るがその前に、クロエの斬撃が入って命を落とす。

 そうこうしていると詠唱が終わったみたいだジェシカが手のひらを前にかざしていてその手前の空中に光の円が複雑な模様を伴って出現している。

 「行きます!“フレイムボム”」と言うと光の円が収縮し炎の塊に変化する。

 変化し終えると矢のごとく裂け目に吸い込まれるように入っていき、じきに盛大な音響とともに炎が裂け目から漏れ出てきた。

 これでは、中にいた奴らはえぐいことになっていること間違いない。

 ジェシカは膝をついて肩で息をしながら「今、私が使える最大級といっても中級の魔法なんですが今のが、フレイムボムという火属性魔法です。これを使うと体力も魔力も底をつきます」

 「疲れたのに、説明ありがとうな!あとはゆっくり休んでてくれ」ねぎらいの言葉をかけてやると気力が尽きたのか目をつぶり倒れそうになる。

 ソフィアが流れるような動きでジェシカを抱える。

 「クロエ、ソフィア、ジェシカを頼む。今ので、片づけられたと思うが念のため確認してくる」

 「「割った」」いい笑顔で返してくれた。きっと仲間が、最大の仕事を成し遂げたのがうれしかったみたいだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る