第38話 冒険者学校3日目
3日目の朝、教室に入り自分の席に着けば武術専攻の奴らが群がってきた。
「シンノスケ…さん?今日の午後は、武術の授業ですよね。また、先生の助手をするのですか?今日は、どんなことをするんですか?」とロイが尋ねてきた。
「なぜに敬称?それに敬語?クラスメイトに敬語を使われたらなんか距離を置かれたみたいで悲しいぞ」
「だって、剣術を教えて貰うんだから。それなりに、敬う必要があるだろ?だから敬語にしたんだよ?」首をかしげて平然という。
「確かに、剣術については先生から一本取って、一昨日は少し教えたけど。それ以外は、お前達の方が進んでいるだろ!それに魔術についてはダメダメの落ちこぼれだぞ。後、クラスメイトは変わらないだろが」
「うーんでもな~。そうだ!愛称ならどうだ?」
「分かった。それで手を打とう」友達なら愛称呼びでもいけると許可を出した。
「となると、敬称はなんとか入れて愛称をどうしようか」とブツブツ考え始めた。
敬称は外せないとか、何考えてるんだか・・・こめかみをぐりぐりと揉んで待つことしばし。
「師匠!」
「却下だ」
「じゃあ。シンさんでどうだ?剣術を教えて貰う立場としては、これ以上譲れないよ」
無難なところか?まあ、新参者といえ年上だし教えている事実には変わらないから、これ以上ごねたら変な名前を付けられそうだな。
「分かった。それでいい」ため息が出たが、了承した
「さっきの質問だが、前半は前とおんなじで走り込みと素振り。後半は、皆で打ち込み練習を行うが、途中順番に俺との打ち合わせを予定している」と答えてやる。
「やった!直にシンさんとやれるんだ。昨日は先生が、シンさんのまねをしていたんだけどさあ、なんか違うんだよな~」
「先生も、お前達が死なないように教えてくれているんだから、軽んじるんじゃないよ」と嗜める。
反省をしているのか居ないのか分からない態度で舌をぺろりと出す。いや、男がやっても可愛くないぞと心の中だけで突っ込む。
「勿論、先生もすごいんだけどさ。一昨日の打ち合いを見るとね」と言われれば言い返す言葉が見つからなかった。
とここで授業の合図がなり、先生が入ってくる。
本で得た知識が有り、反復となることから少しだけ座学は退屈な感じがする。
他にも、小学校で習うような事が多くて、参った。
授業の合間には、武術の連中に断りを入れ魔術を専攻している子達に、魔術循環の手伝いをお願いしに回った。女の子は、むしろ積極的に手伝ってくれるが、男は渋々と言った感じで魔術循環のために手を取ってくる。そりゃあ、男と手を繋ぐのは嬉しくはないよな。
女の子に対しては、若干幼いからかなんとか手を繋ぐことが出来たが、これが宿屋のジョゼあたりだったら、少し違ったかもしれない。
情けない話だが、顔が赤くなるのを必死でごまかさないと手がつなげそうにない。
そんなことをやっていると、直に昼になり、食堂に移動した。
午後の講義の準備で魔術専攻の子達とは、絡めない。邪魔になるからね。
そんなわけで、武術専攻の子達と話をしながら食事を終えた。
休憩を挟んだ後、訓練の校庭に出て、講義が始まるまで待機となるはずだったが、皆のやる気が凄くて簡単な、打ち合いで時間を潰すことにさせられた。
午後の講義の時間を知らせる鐘が鳴る。
皆が、急いで木剣を指定の場所に戻し、先生が来るのを待つ。
時間前までに木剣を触るのは、駄目らしい。
先生が、いつもの門から現れると俺たちを見てため息を吐いた。
そりゃそうだ、皆の額にはうっすらと汗が浮き出ていて居るのだから何があったか、ベテランの先生ならすぐに察しが付くというものである。
「シンノスケが居るんじゃしょうが無いか。今回は目をつぶってやる。次からは、授業でしっかり鍛錬するように。シンノスケは先日と同じように、皆を見てやってくれ。それでは校庭を10周しっかり走れ!」
「「「はい!」」」皆が声を揃えて返事をすると俺も含めてグランドを走るのだった。
俺も走るのは、ここしばらくは街の外に出ていなくてクエストもしていないからだ。
いくら、のんびりと暮らしたいからと言っても、体が要求してくるものは仕方が無い。
皆の走る様子を近くで見ていると、鍛錬をまじめにやっているようで余裕で走っている。
皆の前に出ると、「余裕がありそうだから少しペースを上げるぞ、付いてこい」声を張り上げると「「はい」」威勢の良い返事が返る。
5秒ほど、ペースを上げる。たかが5秒と言うが、結構しんどいのだが皆しっかりと付いてきた。
ランニングを終えて、素振りと打稽古が始まる。
俺は、皆の様子を先生と一緒に眺める。たった一日見ないだけで、皆の剣の扱いが格段と上がっている。
「皆の、腕が確実に上がっていて驚きました」先生に素直に感想を言うと、お前が教えてくれた鍛錬が効をそうしたんだと教えてくれた。
剣筋がしっかりしているやつから、順番に相手をしていった。
それなりに、剣に重みが乗ってきておりこれからがとても楽しみになった。
つい張り切って稽古を付けたものだから、授業が終わる頃には立っていることが出来るものが居なくなった。
やってしまった感があるが、これも訓練だ・・・ふと先生のあきれた視線を感じた。
いや、ごめんねと倒れている皆に、深く謝罪したのだった。
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