第39話 冒険者学校4日目
今日は、必然的にギルド長の執務室にいる。
ギルド長は冒険者学校の校長も兼務していて、校長として昨日やらかした件で、呼び出しを受けたからだ。
執務机の向こうで、渋い顔をしているギルド長を前にいたたまれなく思い、早く終わってほしい。
「毎日しっかり勉強しているそうじゃないか。剣術に関してはCランクあるいはそれ以上と聞いているよ。魔法は、まだ感じる所でつまずいてるようだが、普通は小さな頃から徐々に訓練してようやく発動に至るから、焦る必要は無いよ。で、剣術の訓練では手伝いをしてくれてありがとうと言わせてくれ。でだ、昨日は結構派手にやってくれたそうじゃないか?」
「あはは・・・・・・すみません。言い訳すると彼らの限界点が確認出来たことでしょうか?戦闘において、力バランスを誤れば死に直結しますから・・・・・・」
言い訳をするもだんだんと言葉が尻すぼみになっていった。
「過ぎたことを、とやかく言うのも大人気ないし、確実に彼らが強くなっているのは否定できないしな。ただ、教師陣にクレームが入ってしまっては、これ以上手伝いをさせるわけにはいかないので、剣術は免除だ。話は、変わるが君の卒業後のランクが決まった。Dランクだ。経験が圧倒的に足りないからそれ以上に昇級させるわけにはいかない。一つ飛び級するのも特例だしな」
「いえ、色々と勉強できましたし、ランクアップは歓迎です。これで、正式なクエストでの魔物狩りも出来るようになりますから。格別な計らい感謝します」とお辞儀をした。
「そう言って貰うとありがたい。では、教室に戻りたまえ」とギルド長から言われた。
教室に戻ると、ロイが飛んできた「シンさん!校長から呼び出し食らったって本当か?」
「まあな。昨日やりすぎた件で、小言を言われたよ」と返す。
「で?罰とかなんかあろの?」
「講師として、やり過ぎだけどちゃんとした訓練だからな!お咎め無しだ。でも、剣術に関しては卒業だってさ」
それを聞いた皆が安堵したが、俺との鍛錬をせずにすむことなのか、罰則がなかった事によるものか、どちらに安堵したか疑問に思ってしまった。
問いただそうと思ったところで、鐘が鳴り響いて各自自分の席に戻ってしまった。
この後の休み時間は、魔法循環をお願いしに回らないといけないので、追求する時間が無くなった。
午前中の休み時間に、皆を巻き込んで魔力循環の練習を行ったがまだ感じを掴みきれなく昼食の時間になった。
いつものように、剣術専攻のみんなとガヤガヤと楽しい昼食をとる。
昨日倒れるほどに訓練をやったはずなのに皆楽しそうにしている、聞けば体調の変化が今朝になって感じるようになったとか。
若いって良いな~、一日で鍛錬の効果が出ちゃうんだから。こちとらまだ感触すらわいてこないんだから。
昼が終わり、魔法鍛錬の時間になった。一昨日ぶりの広場へ行くとすぐに鐘がなり授業の時間になった。
マリアンヌ先生が門から出て来た。相変わらず妖艶な人だ。
皆が整列すると「今まで魔法循環と圧縮解放の訓練をしてきたわけだけれど今日からは、標的に向って攻撃魔法を撃つ練習をします。校庭の右側にラインがあるから順番に左の壁の標的に向って撃ってください。シンノスケは一昨日からやっていると思うけど魔法循環を感じる訓練ね!では始め」
皆は走ってラインに並ぶ、そしておのおのが得意であろう属性の魔法を放っていく。
俺は先生と向き合い手を繋いで魔法を流して貰う事となる。
「シンノスケは、冒険者登録の時に魔力測定の結果は、あまり良くなかったのよね?」
「はい、たしか魔力量は人並みにあるんですけれど、操作においては最低でしたね」と今まで放置してきたため記憶の底に沈んでしまっていた記憶を掘り起こす。
「そう、あり得ないことなんだけどその年で操作が最低ということは、今まで魔法に触れてこなかったということかしら?だとしたら別のアプローチが必要かしら」と考えている。
どんな方法があるのかなと思うと先生は、おもむろに右手を上げ人差し指を俺の額に押し当てると呪文を唱え始めた。
ただ漠然と先生の行動に身を任せていると、突然全身に電撃が走る。
あまりの痛さに「フワッ!」と思わず声が漏れた。
「先生!いきなり何するんです?痛いのでびっくりしたじゃないですか」と批難すると、「男の子でしょ我慢なさい。体が、魔法になれていないので感じづらい状態だから刺激を促したのよ?事前に教えると身構えてしまうでしょ!身構えられると効果が薄れるから黙っていたの」
少し理不尽にも思うが前世のイギリスには、魔女の称号を持つ人が居たと思うけど実体験したわけじゃないので、魔法うんぬんの感覚はわかない。
全身にまだ痺れている感覚があるので両手で二の腕をさすっていると先生から手が差し伸べられた。
「さあ、魔力循環を行うわよ」と言われたので先生の手を取って目をつぶり先生から来るものに神経を集中した。
じわりと暖かい何かが左手に感じられる。それは、体を巡り俺の胸の奥で暖かくなり次には、右手から先生へと帰って行くのが分かった。
目を開くと、先生がにっこりと笑い手を離した。
「ようやく感じる事が出来たようね」
「はい。何かは分かりませんが体を巡るのを感じました」さんざん苦労してきたので、顔がにやける。
「おめでとう。じゃあ今度は自分自身でその感じを続けて。出来るなら体の何処でも良いから一点に集めたり、体全体に張ったり出来るように、授業の終わりにまた確認に来るからそれまで頑張りなさい。私は、他の生徒の様子を見ているからね」といって去って行った。
両手を組んで目をつぶる。さっきの感覚はまだ残っているのでイメージがしやすい。
すぐに胸の奥に暖かなものがわき上がり右手から左手へと流れ全身を巡ってまた胸の奥に行き着く。
血の流れを感じることはないが、もし感じるならこれとおんなじなんだろうと言う思いに至る。
しばし流れを感動しながら感じ続けていたが、ふと体全体や一部に持って行くように言われたことを思い出し頭や足とかに持って行くように意識を持っていく。
いつの間にか組んでいた手は離れ、だらりとさせていた。
よそから見たら立って寝ているように見えただろう格好で授業の最後まで立ち続けていた。
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