第45話 Dのクエスト3

 地平線が色を取り始める頃、俺はたき火を大きくして朝食の準備に入った。

 二つのテントの扉が開かれそれぞれから、ソフィアとジェシカが起き出してきた。

 「朝食の準備?」ソフィアが短く聞いてきたので首肯して「クロエは?」と短く問い返す。

 「朝が弱いのでまだ寝てる」

 一番先に、見張りをしてずっと寝っぱなしなのに起きられないってどうよ?と思うが、さすがに起こす勇気も無いので「そうか」と返事だけした。

 ジェシカは昨日の残りのスープを火に掛けて暖め、パンをスライスしてから「朝食の準備ができたクロエを起こしてちょうだい」と頼んでくるが、無理とばかりに首をフルフルと振ると、ソフィアは、小さなため息を付いて起こしに行ってくれた。

 すぐに、クロエを伴ってソフィアが出て来るが、クロエはまだうつらうつらと寝ぼけた状態である。

 俺が、あきれ顔で見ているとソフィアは「いつものこと」とだけ言ってたき火にあたった。

 4人で火を囲み朝食を取る。よく見ると、クロエはまだ半分寝たまま食事をしている。

 朝食と言ってもパンとスープのみなので、すぐに終わりその足でテントを撤収する。

 自分のテントをたたもうとして、テントの入口をめくると中からほのかに甘い匂いが漂ってきた。

 何の匂いかと嗅ぐ仕草をするとジェシカが、顔を赤らめてすっ飛んできて俺の肩を掴むと半回転させた。

 「テントは、私がたたむので火の始末をしてきて下さい」と俺を押し出した。

 この時点で、何の匂いかが分かってしまった。分かってしまうと急に恥ずかしさがこみ上げてきて何も言えなくなり、火を始末しにたき火に戻る。

 そう、ジェシカが寝ていたので彼女の残り香があったのだ。

 だから黙って、穴を掘りその中に焚き火を放り込んでいき水で火を消した。

 土をかぶせてから再発火しないよう水を掛けて焚き火の始末を終える。

 手慣れた物で、振り返るとテントは二張りともすでに持ち出すまでにたたまれていた。

 いつの間にかクロエも完全に目を覚ましており、出発の準備が終わった。

 太陽はまだ出ていないが、空が明るくなってきて周りも夜の気配が消え、視界が良好だ。

 鉱山への道を只ひたすらに進む3人は、何かひそひそきゃっきゃっと話している。あえて話の輪に入ろうとは思わない。入ってもついて行かないからなぁ。

 道中は、何事もなく休憩を挟んで夕方近くになり野営の準備をすることになる。 テントを張りおえて、焚き火も起こし夕食の準備をする。前日と同じ獣除けを、四方で焚く。

 「毎回、獣除けを焚いて暖かい食事をしていると、冒険者として堕落していくわね」

 「ん、それは言える」

 「報酬以上に、経費が掛かるからクエストを受ける意味が無くなっちゃうわね」

 3人が、それぞれに魔物除けの香に対して意見を言って来る。

 俺もそれには同意見だが、今回は俺が使える魔法の効果を確認したいだけで受けたクエストだから利益を度外視しているのだ。

 骨に適度なヒビを入れて鍋に放り込むと水を入れ火に掛けて、湧くのを待つ。

 わいたらすぐに湯を捨て再度水を入れて改めてスープを作る。

 充分に出汁が出たら、乾燥した野菜を入れ塩で調整する。

 長い串に肉と野菜を交互にさして地面にさして焚き火で炙る。

 程なくすると、肉の焼ける匂いが立ち上る。

 両面を焼き終えると、夕飯のできあがりである。

 皆とたわいもない話をしながらの夕飯は、とても楽しく焼いただけの肉でも美味しかった。

 何度も言うが、冒険者の夕飯ではない、調理で美味しい匂いをさせたらたちまち自分たちが餌になる世界に居るのだ、仕事を受けるたびに貯蓄が減ることになるのはごめんであるからな。

 夕飯は、あっという間に終わり見張りの順番を決めることに事になった。

 俺は、昨日と同じ主張をし、最後で少し長めの見張りを勝ち取ったが、今日は3人の様子が少しおかしい。

 最初の見張りを昨日は主張していたクロエを交えて順番を決めるらしいそして、ジェシカに置いては3番目の権利がないとか不思議だ。

 結果は、ジェシカ、クロエ、ソフィアの順でソフィアはなにげに嬉しそうに対照的にクロエが非常に悔しがっていた。

 帰りは、自分が3番目だと二人に宣言してテントに入って行った。

 俺も自分のテントに入ると匂いはなくなっていたので、安心して眠れる。女性の香りを嗅ぎながら眠るとなると精神的にも肉体的にもつらいところがある、健康的な男だからね。

 寝たと思ったら、すぐに起こされる、ぐっすり寝たのだろう気持ちよく目が覚めた。

 ソフィアが俺のテントに入って行くが、男の匂い気にならないのかな?

 見張り番の時間は、思うより早くに終わり朝ご飯の時間になった。

 昨日は、遅かったクロエもちゃんと起きてきて4人で朝ご飯を食べた。

 テントをたたむ時間になると今度は、ソフィアが俺のテントをたたんでくれることになった。

 俺も昨日のことが有るから、素直にお願いし火の始末をする。

 すぐに出発の準備ができて野営地を後にする、今日までに歩いた結果2時間ほどで、目的地に着くまでに進んでいる。


 そして、ようやく目的の坑道が見える場所までやってきた。

 坑道の入口には、一匹のロックタートルが日光浴なのかじっとして動かない。

 クロエには、危険だけど奴らを怒らせる役をお願いする。

 さあ、駆除の始まりだ。

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