第49話 Dのクエスト7
皆が、ポーションを飲んで怪我や体力、魔力を回復させてから、ロックタートルを解体することとなった。
甲羅から生えている結晶状の素材をはぎ取る、高純度の金属のようだが甲羅も固いため結晶をはぎ取るのに苦労している。
俺には、異世界の物質なので何の金属かは分からなかったが、他の皆には分かったようだ。
「凄いお宝だね。これはミスリルで、こっちは鋼か。あっ、オリハルコンにアダマンタイトまである!」
「凄いですね。鉱石から抽出する手間が省けた上に高純度の希少金属類が、手に入るんですから」
「普通のロックタートルには無い」
「そうなんだ。絵でしか見たこと無いから知らなかった」と返すしか無い。
ロックタートルの体は、食用では無くもっぱら建材として利用されるみたいなので解体が終わった物から、順に袋の中に放り込んでゆく。
5体も有るために、それなりに時間が掛かり、結局袋にすべてを詰め終える頃には、日が傾きすぎたため帰路につくことがかなわなくなっていた。
仕方なく、坑道の入口近くににテントを張り野営の準備に取りか掛かった。
俺は、森に入り薪になりそうな枝を拾い集めると、近くに以前水筒やら弓を作った竹に似た植物も有ったのでついでに適当な長さに切り薪と一緒に持ち帰った。
火を熾し、スープの準備をして貰っている間に、俺は竹を二つに割ると節と節の間に肉を詰めて竹を元に戻す事を繰り返し計8つ作ると薪であぶれるように地面に突き刺した。
「何それ、新しい料理?」クロエが目を輝かせてわくわくした顔で聞いてきた。
「ああ、珍しい調理料理で本当は、色々な香辛料やら香りの良い葉っぱなんかが必要なんだがこれだけでも結構良い感じになると思うよ?」というと怪訝な顔をしてクロエが「なんで、疑問形なのよ」
「ごめん。初めての調理だけど、お酒を燗してそれを飲んで、無病息災を願う風習が有ったり、野外で調理したりとしたちゃんとした調理方法だからね?だけど、少し心配になっちゃった」と素直に返した。まずくは無いと思うが一応の保険として言葉にしてみた。
まんべんなく焼けるように火の当たる面を少しずつ変えると。だんだんと竹の焼ける匂いと共に肉の匂いも感じられるようになってきた。
3人は、心配そうに見ているが構わずに真剣に頃合いを見定める、竹全体が真っ黒になり炭化してきたので中を確認するために地面から抜くと竹を割った。
湯気と共に、肉の焼けた匂いが広がると、3人娘が喉をゴクンと鳴らす。
4人の前に、パンとスープと共に肉が並んだ。いただきますと言って早速肉にかぶりつくと竹の香りと共にほのかに甘みも有り竹の中で蒸し焼きにしたことで肉が軟らかく、ほろりと口の中でほどけるようにほころんだ。勿論肉の旨みも十分にありうまい。
3人を見ると、おそるおそるといった感じで口に運んでいたが口に入ると笑顔になり、肉を堪能しているようだ。
今日の戦果で盛り上がりながらの食事はとても美味しくあっという間に終わりを告げた。
明日早くに出発と言うことも有り、早速寝る準備に入るとクロエが「今回は絶対あたしが3番目だからね!後は、よろしく」と言ってテントに飛び込んでいった。
ソフィアとジェシカは、困った子を見る目つきで見送った後、やれやれという感じでため息をついた。
「昨日あたしが、最初の番をしたから2番目で良いわ」とジェシカが言ったのでソフィアは頷いた所でジェシカはテントに入る。
「いつも最後にして貰って悪いな」と感謝すると「最後、3時間も頑張ってるから良い」というと焚き火の調節を始めた。
「ありがとう。お休み」というと「お休み」と返してくれたので俺もテントに入って横になる。
今日の疲れからかすぐに眠りに落ちていった。
いつも思うのだが、一瞬で起こされるなと思い目を開けると、クロエが恥ずかしそうな笑顔で俺を見つめていた。
「もう時間か?いつも思うが一瞬の間だな」というと「それだけ、真剣に寝ているって事だと思うよ」とクロエが言った。
寝床から出ると「少しの間だけど、ゆっくり休んでくれ」というと嬉しそうにクロエが代わりに寝床に入っていく。
いや、男が寝ていた寝床に嬉しそうに入るなよとこっちが恥ずかしくなりテントを出て行く。
初めて会った頃より、3人の俺に対する反応が変わった感じがする。
どんな心境の変化が起こったのやら、こちとら健全な男子だ、いつ箍が外れて暴走するか分からないそんなことになれば、困るのは彼女たちの方なのにとは思うが、今日自覚してしまった彼女たちへの思いは、嘘じゃ無い。
でも3人の女の子に思いを寄せるって最低だなと、自分を責めながら焚き火を調節して暖を取った。
周囲を警戒しながら、なんとなく火の番をしているとあっという間に時間が過ぎ、空の色が変わり始めてきた。
3人が、起きてきて朝食の準備をする。
さすがになれてきたのか、食事を手早く済ませて出発の時間となった。
さて、怒られに帰りますかと思い袋を担ぎ採掘場を後にした。
帰りの途中の野営では、夜番の順番で3人娘の間で一悶着有ったが、何事も無く街に戻ることができた。
悔しがっていたのは、クロエが3番目を引き当てられなかったことぐらいだが、俺のぬくもりが残った寝床を争わないでほしいものだ。
ギルドに着いて、無事納品を済ませたので、今度は恐怖の受付の番だな。
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