第53話 教会へ

 風呂を作って4日が立った、朝夕の鍛錬以外は、だらだら過ごすか、読書をするか実にのんびりとすごしていた。

 といっても読書も、教科書を神様に此方の世界用として改造された、魔物や魔法に関しての本である。

 改めてじっくり読むと冒険者学校で習ったお陰か、すんなりと頭に入ってきた。

 最初は、何のことか分からなかった魔法に関しての本は、学校で習った以上の知識が書かれていて、実に面白かった。

 そのお陰か、気力も体力も十分に回復し、何かをしたくなり今日は出かけることにした。

 もっとも、宿屋の娘のジョゼの俺を見る目が、だんだんと険しくなっていく感じになって来たと言うのも一因である、実にこの世界の人間は勤勉で休むと言うことを知らないかと思うほど、よく働くのだ。


 そんなこんなで、今日は以前からの課題である、教会での俺の現在の状況について詳しく調べて貰う事にしたのだ。

 能力については、教会にある水晶に手を触れて神託を受ける必要があるらしい。

 そんな水晶があるならば、ギルドでその水晶で調べれば良いと思うが、教会内の神聖な場所でしか効果が無いとかで、皆教会で調べて貰うとのことだった。


 結構な日数を、宿の人以外とは接触していないでちょっと、寂しく思っていた。

 特に、シャインデザイアーの3人の賑やかな声を聞いていないせいか、三人と絡みたくなっていたので、教会での用事が終われば久しぶりにギルドに顔を出してクエストを受けてみるのも良いかもしれない。


 教会は、皆が集いやすいよう、ほぼ街の中央に立っていた。外観はゴシック建築の厳かな雰囲気が漂っている。階段を上り大きな扉を潜るといくつもの長いすが並んだ奥には豪奢な祭壇があり、大きな神の石像が5体並んでいた。

 この世界は、多神教のようだ真ん中には、長い髭を蓄えた好々爺という感じの老齢の神様がいて両脇には長い髪の豊満な女神が控え、右端には、筋骨隆々の猛々しい顔の男神が仁王立ちしロングソードを地面に突き刺し両手で持っている。

 左端には、横の女神像より頭二つ低い中性的な神がいて、顔立ちは幼い感じがする。神様だから年齢は関係ないが、おそらく子どもの神様だろうか、としたら悪戯な神様かもしれないな。


 中の厳かな雰囲気にしばし呆然と眺めていると一人のシスターが近づいてきた。

 青い瞳の目鼻立ちが整った綺麗な人だ。スカートはふんわりとしているが上半身はぴったりと体にフィットしていて、体のラインを際立たせている。

 シスターには、失礼だが豊かな胸の形が綺麗に出ていて目が自然と吸い付けられるようだ。


 「今日は、どのようなご用件でおいでになりましたでしょうか」優しい澄んだ声で聞かれて我に返る。

 「自分の能力について調べていただいたいと思いまして、尋ねさせて貰いました」と慌てて返答した。

 シスターは、にこりと微笑んで「教会にお布施という形で、お気持ちをいただいています」

 「気持ちとは、どの程度ですか?」

 「人それぞれですが、平均銀貨1枚ですね」と返された。


 なので銀貨を取り出しシスターに渡した。

 「では、こちらへどうぞ」と流れるような仕草で、手で示すと先を歩き出した。

 その流麗な仕草に、引き寄せられるようについて行くと、祭壇横の通路を通り一つの部屋に案内された。

 部屋は、12畳ほどの広さで、正面がアーチ型になった祭壇になっている。祭壇には先ほどの5体の神様の像が安置されていて、それぞれの神様が中心を見ている様に見える。その中心には複雑な模様が施された白磁の円柱の台が有り、何本もの爪で固定された30㎝程の水晶球が乗っていた。


 シスターは、水晶球の横に移動すると玉を指さしながら「この水晶球に両手を添えて下さいませ。魔力を流せば貴方の力を読み取って神からのご加護が分かるようになります」


 「神からの加護ですか?」


 「はい、一般的にはスキルとかステータスとかと呼ばれています。その人の人生での努力の結果や、生まれ持った特性等が文字として現れるのです」


 ここに来て、ラノベやゲームのような要素が出て来た!まあ物語なんかでは、自分にしか見えないホログラフィが出て来た用だったけどここでは、教会でしか分からないようだな。


 言われるがまま両手を水晶球に添え、魔力を流す。

 水晶球が、白く輝きはじめたが、シスターはどこから取りだしたか薄く削った木の板を、台座の裏側にあった隙間に差し込んだ。

 木の板と言ってもカンナで削ったかのような紙みたいな薄さだ。

 すぐに木の焼けるような匂いがかすかに漂い出すと、シスターが「もう結構ですよ、手を離しても大丈夫です」と言ってきた。

 水晶玉から手を離すと、水晶の光が消えシスターが台座から、板きれを取り出すと文字が焼き付いていた。

 俺の顔に出ていたのかシスターが説明してくれる。

 「この台座の中心に穴が開いていて水晶球の光りを通してくれるんです。その光りが、この木を焼いて、文字にしてくれます」といって板を渡してくれた。


 紙のような板きれを受け取り読んでみると次のように書かれていた。

 ステータス

 職業:武術士 剣聖 弓聖 魔法師

 魔法:火属性 5/8

 水属性 1/8

 地属性 1/8

 風属性 1/8

 空間魔法 4/8

 **** 

 **** 

 **** 

 生命力 7/10

 魔力量 6/8

 魔力技術 4/8

 パッシブスキル:カタパルト 見切り

 アクティブスキル:気配察知 レールガン 遠視 剣術(聖域)体術(聖域)

弓術(聖域)隠行(名人)

 わお!色々と分かるようになったが、ますますゲーム感が出て来たな。

 これまでの、謎だった目をつぶったときの不思議空間や、矢が飛ぶ速さの謎が解けたようだ。

 カタパルトは、射出装置でレールガンは、砲丸等を音速以上で射出する兵器だったと記憶するので、意識したときのとんでもスピードはこのアクティブスキルの恩恵だったんだな。

 そして気になるのが、魔法の欄の点々だ。聞いてみると、将来獲得できるかもしれない何かとしか分からなかった。

 シスター的には、スキル欄にある見慣れぬ単語が気になるようだったが、あえて追求してこなかった。

 そしてシスターにお礼を言って、教会を後にした。

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