25.ゴーホームズと活動方針

 ゴーホームズ。

 なんとやぼったい名前だろう。私はなぜかその集まりのリーダーにされてしまった。


 しかも、ぶっちゃけゴーホームズには何の活動もなかった。

 ただ単に集まって、雑談して帰るだけ。帰りに遊びに行くかといえば、そんなこともなく──静子はバイトだし、芽衣もなにか予定があるといい、望海先輩も「じゃ、おれも帰るわ」と、帰宅部のあとはすぐに解散する。


「何の意味があるの!?」


 私は一人つぶやいた。

 ええ、わかっていますとも──多分これは、静子が望海先輩に接触したいから、という思惑がほんの少しあって、あとは勢いだろう。まあ、その分、リーダーたる私が何をすることもないから良いのだけれど。


 ただ、芽衣が、退院して復調した土浦くんをゴーホームズに連れてきたあたりから、少し方向性が変わった。

 芽衣が事前に言っていたとおり、土浦くんはNサポーターズを辞めていた。こないだの一件で土浦くんは芽衣を擁護したことを追求され、居場所をなくして脱退させられたのだ。そして、芽衣が土浦くんにゴーホームズへ誘ったところ、快諾する事となるのだけれど、彼は参加のついでに、私たちに提1つの案をしてきた。


「パトロール?地域の為に?」

「ゴーホームズでですか?」

「俺たちでか?」

「……なんで、ウチラがそんなことしないといけないの?」


 意識低い系という点については、私に引けを取らない静子が土浦くんに質問をした。


「うん……僕はさ、Nサポーターズで真面目に、地域貢献をしていたんだけれど、今回の件でウラカンに繋がっているんじゃないかって追い出されちゃったんだよね。ただ、僕としてはNサポーターズのような活動をしたいんだ。だから、こういう集まりがあるなら、そこでほそぼそとやるのもいいんじゃないかって思ってさ」


 静子は、土浦くんの真面目な提案に、ちょっとげんなりしていた。


「あのさ、ゴーホームズっていうのは、まあはみ出しものの集まりだけれど、そういうんじゃなくてさ、もっとゆるい感じなの! ね!リーダー?」


 静子が、静子の考える趣旨を説明する。私を巻き込んで。てか私に振らないでよ。


「でもさ、はみ出しものの集まりなんでしょう? そして、活動方針も定まってないみたいだし」


 土浦くんは、しれっと痛いとこをつく──私は尋ねる。


「……何で土浦くんは、ウチでそういう活動をしたいの?」


 すると土浦くんは一呼吸を置いて言った。


「僕、ずっと思っていたんです……Nサポーターズが純人類ネイティブズのために活動していて、ウラカンのような怪人結社が変異者たちヴァリアンツにのために活動をしているなら……じゃあ、そのどちらにも馴染めない人はどうすればいいのかって。それで、皆さんのゴーホームズって、それ以外の人たちもフォローできるようなポジションだなって思って」


 そんな事思っていたんだ? ──話の筋は通ってるけれど、静子も私もそんな高尚なことを考えて集まり作っていない。


「あのっ、そういうの良いと思います!」


 突然、芽衣が声をあげた。


「え」

「私も、ウラカンを抜けてからちょっと物足りなかったんです。それで、居場所ができたなら、なにかしたいな〜、ってずっと思っていて!」

「って……あんたのいたところ、Nサポーターズと活動真逆でしょ?」


 静子が突っ込む。


「そうですけど、良かれと思って世に貢献するという意味ではおんなじです!怪人結社は、すべてをフォローしているわけじゃないんです。だから土浦先輩の話、とってもよくわかります!」


 なんか面倒なことになってきたぞ。意識低い同盟の静子と私は、どうその面倒くさい方向性を覆そうか思案する。


「いやいや、そんな単純な話じゃないでしょ。あたしたちはお遊びでゴーホームズを発足したけどさ、Nサポーターズもウラカンも、もともとは大人たちがちゃんとした組織として運営している団体じゃない。私たちみたいな、お遊びの、今のゆるーい感じじゃ、やっていけないんじゃない?」


 リアリストな静子が、やんわりと正論を述べる。てか、ゆるーく、お遊びで発足したって言っちゃうんだ。


 すると今までずっと黙っていた元特殊保安官ネイティブガーダー見習いの望海先輩が口を開いた。


「俺、いいと思うよ。そういうの嫌いじゃないしさ、何か似たようなことちょっと考えていたしさ」

「え、そうなんですか?」

「ですよねー♪ 私もぉ、そういうのいいかなー、っておもっていたんですよー」


 驚く私にかぶせるようにして、すぐさま静子が同意した。

 おい──静子、あっさりと裏切ったな? そして、芽衣が言う。


「じゃあ、決まりですかね?」


 多数決、というものが私は嫌いだ。

 何故ならば少数派というのは、大体において弱者でマイノリティで、大体において私は少数派に属していたからだ。リーダーは私であるにもかかわらず、土浦くんの提案から、芽衣と望海先輩の同意、そして静子の裏切りによって、ゴーホームズの活動は地域防犯活動へと舵を切った。こういうのをなし崩しというのだろう。


 流石に私の嫌そうな顔を見て察した土浦くんが少しフォローをしてくれた。防犯活動については、主に望海先輩と土浦くんがメインで活動をすることになった。当たり前だ、私たちは女子なんだから──もっとも芽衣は、時間の許す限り土浦くんにべったりしそうな気配があったけれど。


 そして、ここまで、私は何一つ意見していないし決断していない。うん、リーダーとは、なんだろう?


「ねー、Tシャツつくりましょうよ」

「あっ、いいねー」


 芽衣と静子が盛り上がる。私はそれをみてげんなりする。


「あれ、どうしたの深」

「いや、別に……リーダーとは、何なのかって」

「リーダーとは? ボスだよ!ボス!」


 「ボスみ」のかけらもないと思った。

 ただまあ、唯一いいなって思ったのは──このちょっと騒がしい感じは、嫌いではないのだけれど。

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