24.リーダーは誰?
「え、どういうことですか?」
芽衣が「なにか集まりを作ろう」との発言をした静子に尋ねる。
「なんかさ、ここんところずっと思っていたんだよね。世の中とか、学校とか、こうなんていうか……色々馴染めない人たちのための場所ってあってもいいと思うのよね」
「はあ」
私は思い出す──ああそうえば、ついこないだ、静子と集まりを作ろうとか話したっけ。
「そこで、以前深が話していた、居場所づくりというやつを実行するのです!」
静子は、変なイントネーションで皆に向かって宣言した。やっぱりその話か。私はめんどくさいことにならなければいいな、と思った。
「何を、どこに作るんですか?」
芽衣は、静子に尋ねた。
「帰宅部につくればいいかなー、と」
「え、帰宅部に?」
「部内に部をつくるってことか?」
芽衣につづいて、望海先輩も興味深そうに尋ねた。
「そういう集まりってアリなんですか?」
芽衣が訝しげに言った。
「やったもん勝ちだよ……別に部内にグループとか否定してないでしょ?」
「それはそうですけど、何の意味が……」
だよね、私もそう思う。
「単純に、帰宅部って、事情があってどこにも馴染めない人たちの集まりじゃないですか、だから、そこにさらに居場所がなく、あんまり事情を明かせない人たちのために、ゆるーい集まりを作るっていうか」
静子は望海先輩向けに説明をした。たぶん、それは芽衣や望海先輩の事を言っている。
「……活動は何をするんだ?」
望海先輩も静子に尋ねる。
「それは、ええと……出欠とって一緒に帰って、たまになんか帰宅部のボランティアとかして」
「今と変わらなじゃん……」
私がつっこむ。しかし、望海先輩はけっこう真面目に何かを考えているようだった。
「まあ、ちょっとしたはみ出しもののグループをつくるって言う話でいうならいいんじゃない? ──俺も、元のような学生生活には戻れないかな〜、って思っていたからさ、何か場所がほしいとは思っていた」
望海先輩が同意した。そういえば、望海先輩は元々の男子グループからは遠く離れている。
「でしょ! さすが望海先輩、話がわかるなぁ、それで、とりあえず初期メンバーは、私と深と芽衣と……望海先輩で、どうでしょう」
静子が嬉しそうに言った。特に反対はでなさそうだった。ただ、芽衣からも一つ申し出がある。
「……あと、もしよければ土浦先輩もいいですか?」
「え、土浦くん?」
「私が引き入れます。たぶん、土浦先輩もNサポーターズ追い出されるだろうから」
あれ以来、毎日芽衣は土浦くんの病院に通っているらしい。経過は良好だから、程なく退院してくるだろう。
「いいんじゃない?」
「別に問題ないよ」
望海先輩と静子が同意する。私も──っていうか、私何の意見もしてないのに、何か集まりが出来ている!?
「あ、あとリーダーをだれにするかなんだけど」
「リーダー?」
「帰宅部内グループとはいえ、ちゃんと組織をつくらないと。で、リーダーは深、やって」
「え」
最後に無茶振りがきた。
「ちょ、ちょっと静子が言い出したんだから、静子でいいじゃない」
「あたしさ、こういうの影のフィクサーみたいに絡むのがいいの。だから全面に立つのは深がいいなって」
「えー、じゃあ、その望海先輩どうですか?」
「いや、俺元
「……」
「……天ヶ瀬先輩でい良いと思いますよ」
「なんでよ」
「土壇場でなんかリーダーシップあるっていうか」
たぶん、芽衣は自身が助けられた時のことを言っているのだろう。
「こ、こないだは勢いっていうか……あたしは、そういうのキャラじゃないよ、ものぐさだし」
「ものぐさくらいがちょうどいいのよ、人任せにすりゃいいの。サポートするから。ていうか、初めはやることなんてないだろうし」
「……あたしでもホントになにも出来ない子だよ?」
「深はさ、ふてぶてしく真ん中にドンっているくらいでいいんだよ。それで場が落ち着くんだから、結構リーダーとか向いてると思うよ」
あたしそんなだっけ?褒められてる気がしない。そして、私は結局、多数決で完全に負ける。
「じゃ決まり」
「ちょっとぉ」
結局、なし崩し的に私は、静子の考案した謎グループのリーダーにされてしまった。
「それで、集まりの名前は何にするの」
望海先輩が言った。
「名前ですか?」
「仮でもいいから、決めたほうがいいよ?」
「ですね」
芽衣が同意する。
「何かアイディアある?」
静子が提案する。
「帰宅部だからゴーホームズとかでいいんじゃない?」
「ダサくありません?」
「じゃ、芽衣考えてよ」
「いや、あたしそういうの苦手なんで」
「とりあえず、それでいいよ。方向性が決まったら変えればいいし」
結局、皆な静子の提案した名称に同意した。
こうして、私たちのささやかな集まりであるゴーホームズが立ち上がったのだった。
というか、私がリーダー?
何をする集まり?
そんな話をしていたら、芽衣が記念に写真をとろうといいだして携帯を取り出す。私の仏頂面が写真にとられる。
こういうときの写真写りの悪さは自信があって、案の定、後で見たらひどい顔になっていた。
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