42.ひきこもり
そして翌日。
実は、もうだいぶ体調がよくなっていたのだけれど、親に言われたとおり学校を休む。そんな状態での欠席は、どうにも背徳感があった。
加えて朝っぱらから食べるアイスも美味しくて、こんなに堕落した一日でいいのだろうか? なんて話を、両親が出かけたあとで、静子としていた。
静子は、復調しているとはいえ私よりもまだ面倒な状態にあって、学校に来る事ができなかった。
身体が鯨偶蹄類だったんだからしょうがない。私たちは示し合わせて無料通話をつなぎっぱなしにして、他愛もない話をしていた。
午前中は同じTV番組のワイドショーを見ていて、あの芸能人の不倫がどうだとか、このコメンテーターは同じことばかり繰り返して言うとか、番組内に出てきた某都内の観光地が面白そうだから、こんど行ってみようとか、そんな話をした。
昼食を経て、午後には自然とゴーホームズの話題になった。
まず芽衣や土浦くんが言っていた、Nサポーターズや怪人結社を名乗るグループから、嫌がらせを受けているという話をした。
『それ、あたしも聞いてるよ。芽衣から連絡きたし』
「そっか……それで、静子はどうするのがいいと思うの?」
『うーん、土浦くんのいうとおり、何ができるわけでもないのよねー、あたしたちただの学生だしさ』
「……そうだよねー」
『でもさ、無視して勝手にやっちゃえば、って思う』
「え」
また、静子の強引なところが出てきたな、と思った。
『だってさ、私たちは居場所のない仲間たちのために集まっているんだよ。彼らの言う通りにしていたら、結局前とおんなじじゃん』
確かに。けれど私はちょっと抵抗があった。
「でもさ、さっき静子も自分で言ってたけど、あたしたち学生だよ? そこまでやる必要ある?」
静子は押し黙る。
「パトロールとかやってて、もし何かあったらフォローしきれないもの」
私は、面倒は起きる前に潰しておくか、もしくは面倒が起きないために、そもそもコトを起こさない事が本来のモットーだ。静子だって本来は意識低い系だろうに。──なぜだか、葵と出会ったあたりから、最近は面倒に首を突っ込んでばかりだけれど。
『えー、せっかくの学生生活なんだからさ、もっとアクティブにいこうよ』
「うーん、でも最近疲れる事多いんだよねぇ、ちょっと落ち着きたいっていうか」
私は静子との一件を思い出して言った。
『……深、あなたほんとものぐさよね』
私はちょっとイラッとした。
「人の気もしらないで」
『えっ?』
「とにかく、あたしは、ちょっと自粛しようかと思っているから」
ゴーホームズだけでなく、葵との関わりなんかも、整理したいのだ。
『つまんないのー』
明らかに静子ががっかりしているのが伝わってきた。さすがにちょっとバッサリと拒絶しすぎただろうかと思って、なにかフォローの言葉を探していたら、先に静子が口を開いた。
『……ちょっと、しゃべりすぎて疲れたから切るね』
「あ、うん、ごめん」
『ううん、じゃまたね』
そうして、今私にとって最も親しい友だちとの会話は、そこで打ち切りになってしまった。正直、ものぐさが過ぎたかなと思った。
「あー、もうなんだかなぁ」
たぶん、心が弱くなっていたのであろう。
早く復調して、気合を取り戻さなければ、と思った。
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