第19話 名探偵姫乃
楽器からマウスピースを外した2人。
弘之は何が始まるのかと、姫乃を見ていたら
姫乃は先程弘之のマウスピースを拭いたポケットタオルをクルクルと自分マウスピースピースに巻き付けると言った。
「こうしないとツバで手が濡れちゃうからぁ」
弘之は「なるほどー」と思いつつも、ポケットタオルやハンカチを持ってない事に気づき、そのままの状態でマウスピースを持ち姫乃の次の動作を待つ事にした。(いつも母親からハンカチぐらい持ってきなさいと言われてたのになー)
すると姫乃はそんな弘之の困った様な雰囲気を見て、制服のポケットからピンク色の生地に白く耳の長いキャラクターの描かれたポケットタオルを取り出して、「はいっ、これ使っていいわよ」と弘之に差し出してくれた。
「ありがとうございます」
少し恥ずかしくなりながらも弘之はポケットタオルを受け取る…
(あれ?姫乃先輩さっきもポケットからタオル出して無かったかな?もしや、あのポケットにはまだまだタオルが沢山入っていて…手品の万国旗みたいにビローンって出てくるのかも…)
そんな妄想をしながら…。
「うーん、ひろっち。私、手品とか出来ないからね」
どうやらまた弘之は口に出していた様で姫乃からゆるーいツッコミを受ける。
←そろそろ、そのクセはどうかしたほうが良いぞ。うん
弘之はどうして自分の考えが知られたのか分からず(おかしいなぁ)と思いながらも、先輩と同じ様にマウスピースにクルクルとタオルを巻く。
「クルクル」と言いながら……。
姫乃はその動作が終わったのを見ると弘之に優しく問う。
「良い?さっき何で音が出なかったかわかる?」
「わかりません」
「どうやって音を出そうとした?」
「えっと。リコーダーみたいに息を入れて」
弘之が答えると、その言葉を待ってましたー!とばかりに姫乃がマウスピースを持ったまま、ビシッと人差し指を突き出し探偵のポーズをした。(探偵のポーズ、流行ってるのか…)
「それよ!」ビシッ
そう言うと姫乃は脚を組み替え、膝の上で手を組み言葉のトーンを落として続ける。
「ひろっち…貴方は重大なミスをおかしました…」
「そ、そんな馬鹿な! 私の計画は完璧な筈! ち、違う! 私じゃない、私じゃないんだー! あー」
ワナワナと足を震わせ頭を抱えて、2時間ドラマの最後で追い詰められた犯人の様に答える弘之。
なかなかノリが良い。
それを見て姫乃は満足そうに頷くと、普通に説明に戻る。
「細かなトコは省くけどリコーダーは楽器自体が音が鳴る様に出来てるの。でもトロンボーンみたいな金管楽器はね、唇を鳴らすのよ」
「唇を鳴らす…?」
まだよくわからない様子の弘之。
「そう、唇の振動を増幅して伝えるのが金管楽器よ」
そう言うと姫乃は微笑む様に軽く唇の両端を結び、真ん中を空けて息を通す。
すると「ブー」っと音が鳴る。
(なんかオ◯ラみたいな音だな←弘之、それは言ったらダメな奴だぞ)
そんな事を弘之が考えてると、姫乃は更に話しを続ける。
「これがバジング。初めは難しいから、もっと大きくブルブルと唇全体を振動させるイメージでやると良いかも。やってみて」
そう言うとさっきよりも大きくブルブルと唇を振動させて、手で「はい」と合図して弘之にも促す。
「ブルブルー」
「ブルブルー」
「ブルブルブルブルー」
「ブルブルブルブルー」
暫く2人でブルブルしてる謎の光景をした後←言い方。
姫乃はマウスピースを口につけて音を出す。
「ブー」
音を出しながら先程と同じ様に弘之に手で「はい」と促す。
促されて弘之は恐る恐るマウスピースに口をつけるとブルブルーの感じを意識しながら息を入れた。
「ブーー」
すると、姫乃よりもやや低く、くぐもった音だが、音が出た!
音が出た!
続
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