嵐の前のほのぼの練習

第44話 楽しい本入部♪

色々あったが楽しい伊達家での団欒だんらんから1日間にちあいだを挟んで月曜日。

今日から各部活動は仮入部期間が終わり、本入部へと移行する日だ。


因みに日曜日はテレビをみたり、漫画を読んだり、のんべんだらりと過ごした。主に寝たり、寝たり、寝たり……まあほぼ寝て過ごした。ニートか!?


今日から本入部と言うことと、琴映が今日から部活に参加すると昨日SNSでメッセージした事もあり、弘之はルンルン気分で登校し、一日授業を受けた。

本入部と言っても、ただ名前が変わるだけで特に違いは無いのだけど、そう言ったちょっとした変化が中学生の弘之には大きなものワクワクするものになるから不思議だ。


授業が終わると弘之は拓朗たくろうに「今日は伊達さんも一緒に行くから」と言って一緒に琴映の席に向かう。

途中で拓郎に「で、お前らってどう言う関係なの?」と前と同じ質問を聞かれたが、又々前と同じ様に「だ・か・らただの幼馴染だよ」と答えていた。

弘之よ、その関係はきっと只の幼馴染を超えてると思うぞ。


琴映も入れて拓郎と仲良く3人で音楽室へと向かう弘之。

途中まではウキウキ気分だった弘之だが、琴映と拓郎が楽しそうに話してるのを見ると何故かわからないけどチクチクと胸が痛んでいた。

(明日からは琴ちゃんは別に行って貰う事にしよう)密かにそう心に決める弘之だった。


音楽室に三人が着くと既にワイワイと沢山の部員が集まっていた。

殆どが赤い学年カラーの上履きを履いた一年生だ。

弘之は見ていないが、やはり春から始まった人気俳優と人気女優の吹奏楽部のドラマの効果は絶大の様だ。


弘之はその人垣からクラリネットの二年生を探し、琴映を連れて行って紹介する。

(えーっと確か最上もがみ かなで先輩だったかな。三つ編みおさげで優しそうで、これがまた可愛いんだなぁ。優しいお姉さんに甘えたい)と弘之がデレデレしてたら、琴映にクランポンのクラリネットR13の楽器ケースで脇腹をグリグリされた。

(琴ちゃんっ! 楽器ケースをそんな事に使ってはいけません! 主に痛いから!)


そんな弘之と琴映のやり取りをかなで先輩は引きつった笑顔で見ていたのだが。


その後、そのまま楽しそうにお喋りを始めた琴映とかなで先輩を置いてトロンボーン所定の席へと弘之は向かう。


弘之が席に着くと姫乃ひめの先輩から「あらぁ♪ 今日は可愛い女の子と一緒来に来てたわねぇ? 彼女さん?」とさっそく質問された。


姫乃の質問に弘之は少しだけ考えてから返事をした。

「うーんと……違います」

(そうだったら良いのになぁ)とそっと心で思いながら。


(あらあら。初々しくて、揶揄からかいがいがありそうね)

そんな弘之が言い淀んだわずかなに何かを感じた姫乃は「うふふ♪」と艶っぽく妖しい笑顔を浮かべて弘之を見ていた。


暫く姫乃先輩と休みの間の話しをしたりして過ごす。

弘之は会話の途中で姫乃先輩にさりげなーくやんわりと気になっていた顧問の先生について聞いてみたが、先輩に「まぁ、そのうち分かるわよ。そのうちね……」と視線に影を落として言われて、すぐに別の話題に転換された。


そうしている間に周りでワイワイとお喋りしていた皆んなも各々おのおのの席に着いたのか、だんだん周囲のザワザワとした喧騒も落ち着いていって静かになった。

希望楽器の決まってない者や仮入部に一度も来ず今日初めて来た人等は先輩に誘導されて音楽室の端に並べられた椅子に座っている。


大体全員が席に座ると部長の稲穂いなほ波瑠はるが指揮台の上に上がって手をパンパンと叩いて皆んなの注意を引く。


「はいはーい♪ 注目ーっ。これからミーティングを始めるよーっ」

いつもの様に小学生の様な背丈の部長がおさげをフリフリ、手をバタバタとでんでん太鼓の様にミーティングを始める。


弘之が斜め前のホルンの方を見ると、ゆるふわ天才少女の結花ゆいかが後ろを向いて手を「ふわふわー」っと振って来たので「ふわふわー」っと振り返して遊んでいた。


しかし、弘之がふと視線に気が付き前の方を見ると琴映が顔をプクーっと膨らませてそちらを見てた。

弘之が(何それ河豚ふぐみたい)って思いプププってしてたら、思いっきり琴映に睨まられてたよ。

(怖い怖い怖い!)


弘之がそんな事して部長の話しを聞かないで遊んでいるものだからまた波瑠から注意される。


「もーっ! もちもちポンデリングのはしもっちー! ちゃんと話しを聞きなさい!」


そうやってプンプン怒っている波瑠だが、見た目が10歳くらいなので全然怖くない。


しかし何度も怒られるもやぶさかだし、あんまり放っておくと変なあだ名がどんどん広まるので自重じちょうして大人しくする弘之。

(もちもちポンデリングとかクラスに広まったら困るし!)


「略……と言う訳で今から楽器決めとレクレーション大会をやるよー♪ 先ずは楽器決めねー! いやーお姉さんは嬉しいよ。こんなに沢山の新入生が入ってくれて♪去年の春のお祭りでみんない……」


「波瑠!!!」


一番前の位置にいたクラリネットのかなで先輩が大きな声で波瑠の言葉をさえぎる。


その言葉に波瑠も「ハッ」と自分の口から滑り出そうになった内容に気が付き驚くもそのまま何も無かったかのように話しを続ける。


「じゃあ新入生の皆んなは黒板に書いてある希望する楽器の名前の下に自分の名前を書いてね。あ、自分の楽器がある人は決定だからピンクのチョークで書いてね。それ以外の人は白で。はい始めー♪」


弘之と琴映以外の「あの事件」を知らない新入生は何故波瑠の言葉を奏が大きな声でさえぎったのか分からずやや疑問に思うもその後波瑠が何事も無かったかの様に話しを続けたので、とり合えず今は部長の指示に従い黒板の前に移動して希望楽器の所に名前を書いていく。


弘之はぼけーっとそれ(黒板に群がる新入生)を見ていると楽器名の横に数字が書いてあるのに気が付く。


「先輩、あの楽器の横の数字って何ですか?」


その数字が気になったので姫乃先輩に聞いてみた弘之。


「あー、それはね定員数ね。ていうかぁ、ひろっちも書きに行くんだよぉ」


姫乃の言葉に焦る弘之。

焦りすぎてタメ語になっている。


「えっ?僕、トロンボーンに決定じゃないの?」


「うーん、もう練習始めちゃってるから内定だけど、決定ではないんだよねぇ♪」


弘之ビックリ大仰天!!

(えっ?じゃあ今迄の練習って何だったの?)


ガタッ


「い、行ってきます!」


弘之は急いで椅子から立ち上がるとダッシュでトロンボーンの所に名前を書きに行った。


定員は決まっているので、急いで書いても変わらないのだが。


果たして弘之は無事トロンボーンパートに入れるのか……。


はいれないとこの小説終わっちゃうよ……。







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