第9話 迷いと言葉

「ポンコツ吹奏楽部でポン部」


先程の女子生徒達の噂話が頭の中からずっと離れずボーッしながら過ごしていたら、いつの間にか入学式は終わっていた。(ポン部かー、入るの辞めようかな…でもなー…やっぱりやりたいしなー、でも自分以外誰も入らなかったりとか…てかポン部って、ポンブー?ポンブーダンス?いやペンギンのキャラクターかなー。ポンブー!やぁ僕ポンブー、ガウガウ…)最後の方は全く関係ないこと考えたが、そこは弘之なので…。


式が終わり、新入生達はクラス毎に退場し、新しく入るクラスへと向かうようだ。

退場の時に琴映をチラッと見たら、アハハっ参ったねといった感じの苦笑いで返された。


皆んなでワイワイガヤガヤと、そんな気分で無い弘之は話しかけてくる同級生達に適当に相槌を打ちながら歩いていると新しいクラスな到着した。

そんなに小学校と変わりない量産型の普通の教室。しかし少しだけ高さが高くなった机と椅子に中学生になったのをほんのりと感じる。


新しいクラスの席順は入学式と同じく名前順で男子と女子の2席でひとセット、縦5×横3の30人学級である。初めの1ヶ月はこれで行くようだ。名前も覚えやすいしね。

担任の先生は鈴木先生。あれ佐藤だったかな?田中だっけ?まあその辺は追々…(全国の鈴木さん、佐藤さん、田中さんごめんなさい…)

自己紹介で「俺が今日からてめーらの担任になる鈴木だ!夜露死苦ヨロシク」とか某ドラマ見たいな事はやらないんだね。当たり前だ、そもそも鈴木(?)先生は女の先生である。


その後名前や出身小学校、趣味や好きな事などを言う軽い自己紹介をするホームルームをやって今日は解散のようだ。まああれだ、ようは保護者に色々な説明をしているの間の時間潰しだ。

そんなぬるい(失礼)ホームルームも終わり、「さあ!帰るか!琴ちゃんのお家に!」っと思っていたら(とっても気持ち悪い)、後ろにいた男子生徒にトントンと肩を叩かれ話しかけられた。彼の名前は…確か藤村拓郎ふじむらたくろうだったかな…入学式の時も隣にいて軽く話したので覚えていた。弘之とは違う高山たかやま小学校からきた奴だ。


「ねえ、橋本くん」

ぬぬぬ、さては琴ちゃん狙いの奴か? 先程の琴ちゃんとの目配せを見ておったな?琴映はお前にやらんぞ! そして、お前にお父さんと呼ばれる筋合いはないっ!!←色々おかしい。

「なんだい? 」眉間の間に指を当て、眼鏡をクイッとあげる仕草をしながらなるべく自然に見える様返事をする弘之。眼鏡はかけてないのだが。


藤村は相変わらず変な行動をしている弘之をやや心配そうに見ながら話を続ける。

「なあ弘之は何部に入るんだ? 」

弘之!? なんじゃこいつ、いきなり名前呼びで距離詰めきたぞ!でも琴ちゃん狙いとは違うんか、安心。そんな事を考えつつ少し歯切れの悪い感じで自信なさげに返す弘之。

「えっと、吹奏楽部に入ろうと思ってたんだけど…」


「マジか!? 俺も吹奏楽部希望だよ! 」驚いて嬉しそうに話す藤村。


弘之は戸惑っていた。やっぱり辞めようかなと思っていた吹奏楽部…、まさかこんな身近に入部希望者がいたなんて、でもこんなのはたまたま、偶然かも知れない…そうに違いない…誰もあんな部活なんて…入ったら自分も馬鹿にされるんじゃないか…

ついつい気持ちが言葉に出る。

「でもポン部って言われてるみたいだし。あの演奏だし、皆んな笑ってたし、やっぱり辞めようかなって…」


弘之のそんな言葉をきいて、藤村は真剣な目でそして少し怒ったような目でしっかりと弘之を見て言った。


「なあ弘之。お前、自分のやりたい事を人の意見に左右されて決めるのか?」と。








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