第8話 ポン部

チャーチャチャーぴーチャー♪どーん、チャーチャチガチャャー♪わーれ(びー♪)らーのちゅー(びび♪)がー(ブ♪)く富士見(どんがちゃ♪)ヶ岡ー♪


ん?

んんん?

んんんん?


な、な、な、なんじゃこりゃー!!??


不可解な和音でグネグネと歪む空間、ピーピーギャッギャっと鳴る木管のリードミス、違う倍音列を吹くトランペット、バリバリとうるさいトロンボーン、マレットを落とすビブラフォン、スネアはなんで時々端にスティック当ててるの?校歌でリムショット書いて有るのか…?ペシャペシャした謎の音はシンバル?ギコギコとなんかノコギリみたいな音を出すコントラバス。

そもそもこれは曲なのか…。

何かの儀式と違うのだろうか…


あまりの演奏に先生方、来賓は苦笑い。

「〇〇先生、やっぱり録音の方が良かったんじゃないですかね」「いや、少しは部活動にも花を持たせないと。」「しかし、来賓には教育長や市のお偉いさんも…」などと言う声も聞こえてくる。


生徒達は「やばくね?」「ヤバいね」などと。保護者達は「こんなの入学式にやるべきではない」「そうですわ」などヒソヒソ話しをしているようだ。


そんな中、ふいに弘之には後ろの方で話してる女子生徒の吹奏楽部についての良くない噂話が聞こえてきてしまう。


「ねぇ、うちの吹部、何て言われてるか知ってる?」「知らないよー」「ポンコツ吹奏楽部でポン部だって!」「ポン部?なにそれうける」「ポン部マジヤバいね」「そもそもポン部じゃ何部か分からなくな〜い?」「確かに!あんた天才!」「「あははは♪」」


結構後ろの方で話しているはずなのに、何故か耳に入りずっと心にとどまったままのその言葉。

「ポンコツ吹奏楽部でポン部。」


先日琴映と出かけた織絵お姉さんの演奏会。その素晴らしい演奏に感動し、これからの未来への期待に胸を膨らませていた弘之は余りの理想とのギャップに落胆し、半ば放心状態となって演奏終了後の式時などまるで頭に入らず、ただ式が終わるのをボーッと眺めていたのであった。

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