第53話 三枚の楽譜2「スーザさんと美中の美」
「次はThe Fairest of the Fair(美中の美)だな」
と、次に「The Fairest of the Fair(美中の美)」をスマホの「ぐぐる先生」にポチポチ入力し虫眼鏡をタップする弘之。
またも直ぐに詳細な検索結果が画面に浮かび上がる。
本当に便利な世の中だ。
しかし、結構間違った事も書いて有るから過信は禁物だ。
「えーっと、ジョン・フィリップ・スーザが1908年に作曲した曲で……。またスーザさんか! ふむふむ、この曲はスーザ率いるスーザ・バンドが……」
※「The Fairest of the Fair(美中の美)」スーザ率いるスーザ・バンドがボストンの食品博覧会で初演した曲。スーザ・バンドはこの博覧会に数年前から毎年招待を受けており、スーザは展示会場で働く1人の若くて美しい魅力的な女性に心をとどめ、いずれは彼女の印象を音楽に書こうと心に決めていた。そこで、その美しい女性を思い出しながらこの曲を書き「美中の美(The he Faierst of the Fair)」というタイトルを付けたというエピソードがある。
タイトルの“fair”には、“美人”という意味のほかに“博覧会”という意味もあり、「美人の中でももっとも美しい」と「博覧会の中でもっとも素晴らしい博覧会」という2つの意味をもったネーミングになっている。
「なるほどなるほど、そう言った感じかぁ。博覧会にいた美人……。気になるなぁ。織絵お姉さんより美人かな?」
そう言って、美中の美のモデルになった「美人」を
(あれ?何故琴ちゃん……しかも、また怒ってるし。琴ちゃんもふつうにしてれば可愛いのに勿体ないなぁ)
「まっ、琴ちゃんの事は置いといて取り敢えずこれも聴いてみよう」
などと失礼な事を呟きながら、弘之は再び「何とかペディア」等様々なサイトを読んで曲の背景や概要を掴んでから、それを試聴する。
演奏家が曲を研究する事をアナライズと言うがこれをやっている弘之。
もちろん無意識だし、演奏家ほど(時代背景に合わせた表現。バロック等の古典では行き過ぎた感情移入の禁止など)しっかりやっている訳では無いが。
「ふーむ。なんかスーザさんの曲はさっきの星条旗よ永遠なれもそうだけど、行進するリズム(1.2.1.2の二拍子)の中に流れる様な美しい旋律があるなぁ」
等と曲を聴き終わってから一丁前に感想を述べる弘之。
「あと曲の終わりの方は必ずトロンボーンが大活躍するし。てかこれ、たぶんトロンボーンだよね?違うかな?」
(スーザさん曲のクライマックスでは大抵トロンボーンがオブリガード〈対旋律→主旋律と
「とろん、ぼーーーんをぼーんっと大活躍させるスーザさん。良い人だなぁ」
と、頭の中で久しぶりにトロンボーンを「
実際に蕩ける様な美しいメロディと豪華にトロンボーンを大爆発させる曲を作るスーザさんにも興味が湧いてくる。
「スーザさんはどんな人なんだろう?よしっ、これも調べておこうスザ♪えーっと、ジョン・フィリップ・スーザっと」ポチポチ
弘之は鼻歌を歌いながら、再び「ぐぐる様」にワードを打ち込む。
「なになに。ジョン・フィリップ・スーザ
米 1854-1932。作曲家、指揮者。父は海軍のトロンボーン奏者、母はドイツ系。ワシントンD.C.に生まれる……」
※Sousa, John Philip
ジョン・フィリップ・スーザ
米 1854-1932
作曲家、指揮者。
父は海軍のトロンボーン奏者、母はドイツ系。ワシントンD.C.に生まれる。
幼い頃よりヴァイオリンを学び、1876年よりフィラデルフィアでヴァイオリニスト、指揮者として活動。
1880年~92年、アメリカ海兵隊軍楽隊の楽長。多くの行進曲を作曲した。その後スーザ吹奏楽団を立ち上げ、米国国内、欧州の他、世界各地へ演奏旅行を行う。第一次大戦では海軍軍楽隊訓練所長として軍に戻り、その後軍楽少佐。戦後も吹奏楽指揮者として活動を続け、録音も多数残す。バンド音楽の発展に寄与し、マーチ王と呼ばれる。テューバを改造したスーザフォンの創案者としても知られる。スーザフォンは1908年、合衆国軍楽隊に公式採用。
(C)MAESTROより
「おお! なるほど、スーザさんはお父さんがトロンボーン奏者だったのか……。
と言う訳で無事(?)二曲のアナライズとスーザさんのバックグラウンドを確認した弘之はその日はそのままお風呂に入って直ぐにお布団に入り夢の世界へと旅立ってしまった。
勉強を何もせずに。
良いのか?弘之。
※作者的所感(箇条書き)
ジョン・フィリップ・スーザ
「マーチ王」と呼ばれるだけあり、冒頭からの展開、中間部の流れる様なメロディ、後半の盛り上がり。主旋律と対旋律の掛け合い等遊び心満載で100年前の曲にして既に全てが完成された「マーチ」を作っている。
(いや、現代の「マーチ」がスーザを元にしてるのか……)
「星条旗よ永遠なれ」のトロンボーンの対旋律など和音の展開(コード進行)だけで、起承転結(これこれこうで、こうだったと物語が有る)となっているので面白く、注目して頂きたいです。
バスドラ(大太鼓)とシンバルがセットになって「ドン」と「シャン」で響きを作っているのも注目です。
現代の日本吹奏楽コンクールの課題曲(マーチ)と比べて頂くと、正に「スーザの曲がマーチの原点」を感じられるので是非聴いて頂きたいです。
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