第28話 トロンボーンの聖書(レミントン)

姫乃が指さした楽器ケースそこには「YAMAHA」と書かれたロゴが付いていた。


「YAMAHAですか?」


弘之はまだ楽器の違い等解らないので、何の事もなくそう口にすると姫乃に指差されたそのケースを手に取る。


「そうよ♪YAMAHAのYSL-882!安心!安全!安定!世界のYAMAHAよぉ♪」


すると姫乃が何故か胸を張り自信満々にそう言ったのだ…。


「安心、安全、安定、世界のYAMAHA…もしかして先輩の楽器もYAMA…」

「それは違うわぁ!!」


姫乃が自信満々にYAMAHAを褒めてたので、姫乃の楽器がYAMAHAなのかと思い聞いてみると、何故か即答…弘之が聞き終わる前に即答…で否定された。

(実際にクラシック系のプロやフリーランスでもYAMAHAは安心安全安定と皆答えるのにYAMAHAのレッスン講師以外の仕事で殆ど使ってる人を見た事が無い…とっても良い楽器なのにYAMAHA。筆者談)


そんな感じで若干微妙な空気になったが、直ぐにいつもみたいに姫乃が弘之をからかい始めたので和気藹々と話しながら音楽室へと戻る2人。

結局先輩の楽器は何なのか…。


音楽室に戻り、先程座っていた席に着くと姫乃が一冊の薄っぺらい…本当に5ミリも無いほどの薄っぺらい教本を出してきて弘之の前に立てた譜面台に置いた。


「今日はこれを使って練習しましょう。」


「先輩、この薄っぺらい(失礼)のは…?」


弘之がそう尋ねると姫乃は妖しげに言う。


「これはねぇ♪トロンボーンのせ・い・しょ♪うふふ♪」


「聖書…?」


その姫乃の言い方に弘之は少しドキドキとしつつも、中が気になってペラペラとページをめくる。

気になって中をめくってみた弘之だが、中には白玉(全音符)と黒玉♩(四分音符)の音符が有るだけで、少し速いのでも八分音符♫ぐらいしか無く、音楽の授業でやった譜面よりも簡単そうだ。


「レミントン、ウォームアップエクササイズかぁ」

表紙を見るとそう書かれていた。

(レミントンって言うと狙撃銃とかショットガンとかの銃メーカー?M700とか主に警察や軍隊で使われてる狙撃銃だな…バーン、バーン←アホ)

弘之には男の子の遊びで有るエアガンの知識が思い浮かぶだけだ…。


「何かスカスカで簡単そうだな…」


などと生意気な事も宣っている。


すると姫乃はニッコリと優しく微笑んで弘之に語りかける様に言うのだった。


「そうでしょうね…うふふ♪でもね…ここにはトロンボーンを吹く上でだ・い・じ・なことがぜーんぶ入ってるのよぉ」


そう姫乃は言うが、弘之はかなり懐疑的にその本を見る。こんな薄っぺらい教本に全部が詰まってるなんてとても信じられないようだ。

そう「うーん」と眉根を寄せて懐疑的な表情をしている弘之を見て姫乃は少し頬を膨らませて話を続ける。


「もう♪確かにペラペラの本で簡単そうな譜面だけどねぇ?最初のロングトーン、これだけでも音色、音を真っ直ぐ伸ばす、基準音と次の音との距離感と音程、ブレス、自然な呼吸等他にも色々な要素が入っているのよ。あとね、ひろっち。簡単そうな譜面こそ難しいのよ。これは私の先生の受け売りだけどねっ♪」


「なるほどー。知らない単語がいっぱいでしたけど、沢山注意点があるのは何となくですけどわかりました。簡単そうな譜面こそ難しいのですか…」


姫乃の説明を何となーくザッと捉えた弘之では有るが専門的な用語、ロングトーンとか基準音とか音程等殆ど分からない単語が多くてまだ不可思議そうな顔をしながら首を傾げている。


そんな弘之に姫乃はまた微笑んで「取り敢えずやってみよっか?」っと言って、教本を弘之の手からそっと取り譜面台に戻すと、最初のページを指さし、練習をし始める様に促すのであった。


譜面を吹き始める前に暫くマウスピースをブーブーと吹いて音出しをした2人。

それが終わると姫乃はレミントンに書かれている最初の譜面とポジションの説明を始めた。


本日はここまで…

次回はそこから始めよう。

ではまたsee you






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