第13話 仮入部が始まるよ☆③

「橋本 弘之です。村川小学校出身です。希望の楽器はとろん、ぼーーーんです」


犯人はお前だ! のポーズはとって無いけど

自信満々で答える弘之。


「ふむふむ、藤村君はまだ決まってなくて、橋本君はトロンボーンだね。なんかぼーーーんが長いけど」

波瑠はアゴに手を当て頷きながらそう言って少し考える。


(とろん、ぼーーーんの方がとろけて爆発でダイナミックでカッコいいんだけどなー。)

そう頭の中で呟く弘之に「良く考えろ弘之!後々黒歴史になるからー! 」と大人の忠告したい!だけど、物語の中には届かないので仕方がない…。


そんな弘之の厨二病的妄想を知ってるか知ら無いかはわからないが、波瑠は話しを続ける。

「よし、藤村君はもう少し新入生が集まったらやりたい楽器が決まってない人とパート巡りするから少し待機ね」


そう波瑠が言うと同時にまたギーイィと後ろの扉が開く音が聞こえ新入生らしき3人組の女の子が入室してくる。


「良かった、一応入部希望は自分達だけじゃないんだ。」と弘之は安堵するが「仮入部期間だから色々試したいのかも…」と思いまたやや不安になる。


弘之がそう逡巡しているうちに、また波瑠は忍者の様にシュバッっと扉の方に移動していた。


「待ってましたー!! 新入生入室第二号ですー☆」

そして「犯人はお前だ! 」ポーズを取り…「私の名前は…」とまで言いかけた所でまたギーイィと扉が開く…。


「待ってましたー!! 新入生入室第三号…」と言いかけた所で…またギーイィと扉が…。


タイミングが合わず「犯人はお前だ! 」のポーズを取ったまま口をパクパクさせている波瑠と、なんか良く分からないもの(者?)を

見せられてポカーンと立ち尽くす新入生達…


弘之と拓郎は「あれ、いつまでやるんだろううなー」と目配せして待機していた。苦笑いしながら…


すると、波瑠は探偵ポーズ(「犯人は…」は名前が長いから探偵ポーズで)を解除し一瞬上を見た後、左手の平に右手を拳でポンと叩くと新入生達に「あ、ちょっと待っててねー」と言ってからこちらにテコテコと小走りで近寄ってくる。


そのおさげ髪の小さな女の子をついつい「頑張れ小学生ー」と思いながら見てたら、「小学生じゃないよー」っと頬を膨らしながら波瑠が弘之達の前に来た。どうやらまた声に出ていた様だ。


「もー、橋本君はトロンボーンだったよね先にトロンボーンの先輩に紹介するからついて来て」と言って弘之の手を取り引っ張る波瑠。

急に手を握られドキドキとし、顔を赤くしながら着いて行く弘之。


波瑠はほんの5メートルほど歩くと「とーちゃーく」と言い弘之の手を離す。

少しの距離だが弘之にはとても遠くに感じられた。

まだ顔の赤さと胸のドキドキが治らない弘之に波瑠が目の前の人物を紹介する。


「この子が橋本君が希望する楽器、トロンボーンの先輩だよー」


そう言われた弘之は「ふう」と呼吸を落ち着かせてから波瑠の後ろから少し前に出てその人物を見る。


するとその先輩は弘之を上から下まですすーっと見た後「へー、やりたいんだ。と・ろ・ん・ぼー・ん♪うふっ」と妖しく言うのだった。









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