概要
『時の迷い路』(ときのまよいみち)(改稿版)
舞台は森に囲まれた平和な国、シレア。
国の中で時を刻むのは、王都シューザリーンの城下街に立つ時計台のみ。その鐘楼の音が、人々の生活を、1日を、一年を刻んでいた。
しかしある時、その時計に異変が起こる。
南の海洋国テハイザとの緊張関係の中、国を揺るがすわけにはいかない。その才誉れ高き兄王子不在の中、国の安寧を取り戻すため、王女が奔走する。
そんな非常事態に、シレアの森に迷い込んだ少女がいた。彼女は一体、何者なのか。
この国から、この世界からは別のところから来た、驚くばかりの外見の少女と、王女の関係は——?
次々に起こる異変、国を取り巻く政治的思惑、それらが渦巻き、王女と少女、シュ
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!異世界転移とは一線を画した別世界を堪能しませんか
異世界ファンタジー。よく読むのですが、見知らぬ生き物が出てきたり、魔法を駆使して派手に立ち回るような作風はイメージが湧きづらくて、実は少しだけ不得手だったりもします。
そんな私のような、想像力は弱いけど異ファン大好きなそこのあなたにこの作品を激推しします!
主人公は兄と共に国を治める王女。隣国歴訪中で兄不在の中、ある緊急事態に見舞われます。国の混乱を防ぐため市場で国民に語りかける王女。その民衆の中で出会った自分とそっくりな少女と共に、事態の収束へ向けて奔走します。
王女と、ここではないどこかから迷い込んだ少女を主軸とした物語は、異世界転移ものと言えるのかもしれません。ですが流行り…続きを読む - ★★★ Excellent!!!絵巻物のような美しい世界が色鮮やかに動き出す
丁寧な筆致でしっかりと書き込まれた情景や、人々の息吹が感じられるような街の描写に引き込まれました。本当にこの国が存在しているかのようです。
中世の絵巻物を思わせる雰囲気が全体に流れていて、そこで紡ぎ出される物語は、まるで重厚で緻密なタピストリーの世界が、鮮やかな色を持って生き生きと動き出すような感覚です。
「時を刻む」という概念とは。この人間にとっての大きなテーマを中心に、時空を超えた出会いやひとつの国の存亡の危機など、色んな要素が盛り込まれていて、まさに王道のファンタジー。
文学とエンターテイメントが融合した、どの世代でも楽しめる物語です。 - ★★★ Excellent!!!時を巡る、出逢うはずもない二人。出逢いは新たな物語を未来へ紡ぐのか――
シレア国の王女、アウロラ。
彼女は民と積極的に交わり、そして城の人々を心配させるお転婆な姫。
ある時、時を告げ続けて来たこの国でたった一つの時計が針を止めて……
同じ頃、もう一人の少女がシレアに迷い込む。
彼女の訪れは、偶然か。必然か。
国の人々に愛される少女と、迷い人の少女。
彼女らが紡ぐのは、新たな時を紡ぐための支度か。終わりへのカウントダウンか。
それを知る者は、時を刻む時計以外にないのだろう。
わたしとしては、シードゥスというキャラクターが好きです。彼の不器用な優しさが……
あなたもきっと、好きなキャラクターが生まれるのではないでしょうか?
是非、ハイファンタジー好きにか…続きを読む - ★★★ Excellent!!!児童文学でありながら、大人にこそ読んでほしいファンタジー
人の手を借りずに動く、鐘楼の時計。古より伝わるこの時計台は、シレア国の時を刻む唯一無二の存在でした。止まることのない、由緒正しい時計の描写は圧巻です。ロマンがあります。そんな時計台が止まるという事件が起きてしまうから大変です。兄王子の不在の中、王女アウロラが奔走します。
シレア国の命運を握るのはアウロラだけではなく、異世界から迷い込んでしまった少女ウェスペル。時空を越えた二人の少女の出会いが、意味するものとは。
ハイ・ファンタジーならではの読みごたえをお楽しみください。城下町の光景や空の描写は、ウェスペルとともにシレア国へ迷い込んだ感覚になります。あまりの美しさに、ほうっと溜息をこぼして…続きを読む - ★★★ Excellent!!!海外の児童書を読んでいるような作品
ある日止まってしまった時計、迷い込んだ少女。
王女アウロラ、少女ウェスペル、同じ顔。同じだけと違う二人。
その邂逅の答えはラストシーンにて。
この作品の最大の特徴は描写のきれいさです。色を感じるほどに鮮やかで、濃い。いや細かいともいうべきか。数行どころではなく、十行くらい積み重なっている箇所があります。
話の展開もていねいです。ある程度の段階を踏んで情報が開示されます。
街の様子が事細かに描かれていたのも印象的です。国の状況、地理に関しても。世界観が細かく設定されているのでしょう。地に足のついた物語だと感じました。
二転三転する後半のストーリーも、見どころの一つです。起承転…続きを読む - ★★★ Excellent!!!物語を読む、その素晴らしさを再認識できる傑作ファンタジー。
その国にただ一つの時計が止まってしまった。時を同じくして、その国の姫様と瓜二つの顔を持つ女の子が迷い込んできた──。
ここから始まるこの物語は、作者さまの巧みな世界の描写と、生き生きとしたキャラクタたちによって「本格ファンタジー」として深い味わいを持つ物語になっています。
これからどうなるのかというハラハラ感、この二人はどうなっちゃうのというドキドキ感、「時間」の謎はいかにというワクワク感。どれをとっても素晴らしい仕上がりです。
読書を始めたころの懐かしい気持ち、これが胸に込み上げてくる。読書は楽しい! と再認識させてくれるような素晴らしい読書体験を、ぜひ味わって頂きたい! オス…続きを読む