帰還 そして新たな旅のはじまり
少女は森の中をさ迷っていた。
もうどれほどの時間を歩いただろう。着けていた腕時計は無くなってしまい、時の動きという
秋の美しい紅葉に目がとまり、地面一面に色とりどりに敷き詰められた赤や黄、焦げ茶、
吸い込まれるようにそのアーチをくぐると、その先には落ち葉が木漏れ日で輝き、金に彩られた世界があった。頭上は一面、美しく色づいた落葉樹に隙間なく覆われている。空を覗かせる
ひらひらと、軽やかに葉が舞い落ちる。それらはさも少女を導くかのようだ。
少女は落ち葉に誘われるようにさらに先へと進んでいった。アーチは木々で囲まれた部屋を作るように、幾重にも途切れなく続いている。少女はその下を通っていく。身の周りの
数十はあったかというアーチをくぐったとき、終わりは突然やってきた。
めくるめく光の変化はもはやなく、それまで目にした色彩の全てが地に散りばめられた開けた場所に出た。
力強い茜色の陽が国道の向こうの山裾にもうすぐ落ちようとしている。
少女はそこで初めて振り返った。
来たはずの道は、跡形もなく消え失せていた。
ただそこにあったのは、光を反射して
前に向き直り宿への道へ踏み出すと、突如、空腹に襲われた。ポケットに手を突っ込むと、入っていたはずのチョコレートとは感触が違う、何か硬いものに指が当たる。
取り出した手のひらに載るのは、文字盤に星辰が彫られた羅針盤。
その針は、黄昏の光を反射して力強く
――完――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます