少女は森の中を彷徨っていた。
この一文から始まる物語は、読者を知らない国へと優しく誘ってくれるのです。
まるで自分が物語の中に迷い込んだかのような感覚になるのです。この物語は少女二人の物語であると同時に、シレア国という国の魅力を伝える書物のような物語でもあります。
きっとその装丁は暖かな色合いをしていて、金色の箔押しで輝いているのだろうな、と想像しました。
そして物語を通して印象に残る時計台。
あの時計台に似ているのかな、と想像を巡らせる時間の楽しいこと……。作者様の文章の緻密な優しさに誘われて、ひとつの単語からも想像が膨らみます。
冒頭からシレア国の魅力が伝わる文章に惚れ惚れとしてしまうのです。
何よりもこの物語を生きる人々の魅力。
迷い込んだ少女の不安をほぐしてくれるような人々の優しさに読んでいるこちらもホッとするのです。
それでいて終始漂う緊迫感にドキドキもさせられる。物語の中に深く入り込んでいくような感覚もあるのです。
そしてやはり作中の歌。
この物語において大切な要素のひとつである歌に私は惹かれました。森の中で歌声が朗々と響くような、或いは生活の中でついこぼれ出るような歌詞に魅せられました。
読み終えた時、私はシレア国が恋しくなりました。
迷い込んだ少女ウェスペル。シレア国の王女であるアウロラ。似ている二人の物語の行く末を、シレア国の魅力も堪能しながら味わって欲しい物語です。
これからの未来に不安を抱えている少女は答えを探すように旅に出た。気軽な一人旅。誰に気を使うでもなく、思うままに道から外れ、鮮やかな紅葉を楽しんでいると、自分の住む世界とは違う場所に迷い込んでしまう。そこで出会ったのは、やさしい人々と自分と瓜二つの存在――国を安寧へと導く使命を持った王女だった。
さぁ、皆さま。ファンタジーはお好きでしょうか? 私は大好きです。小さい頃に手に取った本は人間ドラマよりも、不可思議でたまらないものがつまったものばかり。
これはそんな幼い頃のわくわく感を思い起こすことができる時と国がどっしりとしたファンタジーです。繊細な情景描写、緻密な国の歴史の中で生きるあたたかい人々の息遣いを感じられます。
その中で、当たり前として存在していた『時計台』の停止から始まり、次々と起こる異変。そして、国を守るため、民を守るため、立ち向かう人々の奮闘が描かれた物語です。
最後まではらはらドキドキとさせられました。歴史に刻まれる瞬間をどうぞご覧あれ!
人生の中で読んでおいた方がいい作品は何か。そのような質問があったら、間違いなく本作を挙げます。子どものころに魅せられたファンタジーの心躍る世界観のように、豊かな情景描写とともに脳裏を鮮やかに染め上げていくのですから。
美しい紅葉の道を歩いていたはずの少女・ウェスペルがいつしか迷い込んでしまったのは、緑濃い森に囲まれたシレア国。
古より伝わる鐘楼の時計は国の宝で、シレア国の中で時を刻む唯一無二の存在でした。その由緒正しい時計に起こる異変を解決せんと、ウェスペルと瓜二つの王女・アウロラが奔走します。城の人達に内緒で城下町での買い物をするおてんばな王女様ではありますが、民のために毅然と動く姿や随所に光る人間性の高さに惚れ惚れとさせられます。
運命的な二人の少女の出会い。魅力的な城の人々。さらには、初々しいやりとりに微笑ましくさせられるなど、ハイ・ファンタジーの中に見どころが満載です。
実写映画を見ているかのような満足感の高い読後の余韻に、酔いしれていただきたいです。
旅行先で歩いていると、ふと美しい紅葉が目に入る。
足は自然とアスファルトを離れ、敷き詰められた紅と金の絨毯を踏んで、脇道の少し奥へ。
たったひとつの好奇心、気まぐれ──なのに、少女は見知らぬ世界へと迷い込んでしまう。
しかもそこには自分と同じ顔を持つ、お転婆な王女様がいるファンタジー世界だった……⁉︎
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異世界転移、とはまた違う優しい導入から始まる本格ファンタジーです。といっても剣と魔法が栄え、さまざまな種族が暮らすタイプのファンタジーでもなく、あくまで舞台は私たちと同じようなヒトが治める、美しい自然に恵まれた『シレア国』。優秀で聡明な王族によって良い政が行われてきたこの国は平和で、街の人々もおおらかで活気に溢れています。迷い人のウェスペルもそんな親切な人々に助けられ、まるで旅行の延長のような気分で街に魅入ります。
しかし自分と顔がそっくりな王女アウロラと出会い、やはり自分は不思議な国へ迷い込んでしまったのだと確信。しかも国は唯一の時計台が不調に見舞われ、有能な兄王子も不在という大ピンチの最中。活発なアウロラに導かれ、迷い人の現代人はあれよあれよと国のごたごたに巻き込まれていくのです。
けれど本当にそれが「巻き込まれた」のかは、すべてを読み終える頃には疑問が芽生えます。見た目も心も通じ合うふたりの少女。はじめて止まった時計の針。自身への不安と悔しさ、反して獲得していく強さ。押しつぶされそうな重圧を跳ね除け、彼女たちはそれぞれに駆け出していくのです。これを運命と呼ばず、なんと呼びましょうか…!
不思議要素あり、ロマンスあり、グルメあり。それこそ語ることが尽きない上質な物語ですが、レビュー欄ではあまりにも狭すぎる。ここから先はぜひ、物語の中で。ラストの美しさは圧巻です。
この寒さで旅行に行く気力も湧かないという方はぜひ暖かくして、シレアへの道を歩いてみては。おすすめです!
旅の途中、色付く木々の美しさに魅せられた少女は、おとぎ話に出てくるような別世界──自分とよく似た王女と、とても素敵な兄王子が治める王国・シレアに迷い込んでしまいます。
彼女は、兄王子の不在を守る王女を手伝い、国を揺るがす一大事に巻き込まれてしまうのですが、そんな彼女の心の拠り所となるのが、王女と王女の命を受けて働く城勤めの青年です。
青年と少女が互いに抱く淡い恋ごころに、私はときめきが止まりませんでした。
惹かれ合うふたりの初々しいやり取りに、何度身悶えしたことか。
彼女の危機を救おうとする青年も、カッコよくて大好きです。
もう一人の主人公である王女の、年相応の明るさや王族としての立派な心構え、シレアに暮らす人々の優しさも胸に深く残っていて、紅葉の美しい季節になると殊更思い出してしまいます。
絢爛な秋の王国に訪れた、危急存亡の秋 (とき) 。
平穏を取り戻そうと頑張る王女たちの活躍、ぜひ読んでみてください。
兄王子主従のお話も、合わせてオススメです!
舞台となるのは、ヨーロッパに似た世界の中で豊かな森に囲まれたシレア国。その国で唯一時間を告げていた時計台が止まった時、事件は起こります。
兄王不在の中、事態の収拾に奔走する王女。
そして時を同じくして、王女の瓜二つの少女が異世界からシレアの森に迷い込み……。
まず目を見張るのは、作者様の高い筆力です。紙の本で出版されたものを読んでいると錯覚するほど、本格的なハイ・ファンタジーが描かれています。
情景や登場人物の心理描写も丁寧でありながら、読みやすさも兼ね揃えているところがまるで海外の重厚な児童書のよう。じっくり読書を楽しみたい人におすすめです。
個人的に気に入っているのは、シレア国の雰囲気がとても良いこと。緊急事態になってはいるのですが、豊かな自然と神秘性、そして穏やかな国民性が作品の端々に表れていて、シレア国に行ってみたいと思わせてくれます。
そして料理長が……好きです……!!