幻想文学を謳うにふさわしい作品です。
キャラ立ちがしていて話のテンポもよく、展開も比較的早いため読書が苦手な人でも飽きが来る前にお話が進むでしょう。
懸念点があるとすれば第一話がメリバ風味なので、ハピバでないと!な人は切っちゃうかな、という点です。
しかしそこで切るにはあまりに惜しい作品なので、読み進めて下さい。
情景描写、心理描写ともに最低限ですが、逆にそれがミステリアスな作風にマッチしていて作者独自の世界観を確立させてもいます。
必要な情報は小出しされていますので、充分感情移入することができるはずです。
ノックスの十戒的にもミステリーにはあてはまりませんが、それも1話まで。
2話以降からは1話で出た主人公の能力などを踏まえて推理を楽しむことも可能です。
ファンタジーが読みたい、推理を登場人物と楽しみたいという方は一度読んでみて下さい。
怪奇譚を蒐集する主人公。そして彼女に付き従う吸血鬼。
知的で自由で純粋なる好奇心を持つ『彼女』には、その分「何か」が欠けている。それを補うのが、もう一人の『彼女』だ。
二人の間には表面上、利害や馴れ合い、何となくの惰性が。けれども深く魂のレベルで結ばれた愛情、信頼そして互いへの尊敬があるのだろう。真に大切な者に対するやりとりは時折、感情と共に垣間見える。
これを(冒険譚というだけではなく)恋愛譚とするのならば、相当に上質だ。
怪奇譚蒐集の過程は、ミステリアスな謎解きを以って悲劇を昇華させる。その舞台に於ける登場人物の機微までもが、醜悪であって尚、美しく胸に迫る。
『彼女たち』は互いが居さえすれば、何処にでも行けるのだろう。
この世の果てまでも。
「月(ルナ)は笑う――幻想怪奇蒐集譚」は、神秘的で魅力的な世界観が読者を引き込む物語です。主人公のルナ・ペルッツは、不思議な能力と深い探求心を持つキャラクターであり、彼女の冒険は読者に驚きと興奮を与えます。物語は、ルナと彼女の仲間たちが不気味な事件の真相を追求する過程を描きながら、人間の心理や社会の闇を探求しています。
特に、物語はリーザというキャラクターの内面を丁寧に描写し、彼女の孤独と悲しみに共感させます。蜘蛛の糸を辿る彼女の夜の散歩は、彼女の心の逃避と希望を象徴しており、読者に深い感動を与えます。また、ルナとズデンカの探求心と関係性は、物語に深みと温かさを与え、彼らの旅が読者にとってどれだけ意味のあるものかを感じさせます。
神秘的な要素と人間の複雑な心理を巧みに織り交ぜることで、リーザの謎めいた言動やルナとズデンカの探求心が、物語に一層の謎と興奮を加えることからも、結末に向けて物語は益々緊迫感を増し、読者は次なる展開に胸を膨らませながら物語を追いかけることになるでしょう。