ちょっとファンタジー的な要素がある、サスペンス的なミステリーです。エドガー・アラン・ポーの作品を思わせる雰囲気を感じました。第1話まで読みました。
ミステリー風味なのですが、主人公ルナの設定がまず面白い。そしてルナとズデンカの、噛み合っていないようで噛み合っている対照的な性格が、うまく物語を回しています。
一文一文が短く、いくぶん古風な言葉で綴られている文章が、今作に実によく合っていたと思います(「ぼこぼこ」は、ちょっと作品の世界観にそぐわない言葉のような気もしましたが)。
悪がきちんと報いを受けるので、読んでいてもやもやしません。それだけだとちょっと奥行きが浅くなりがちですが、八方丸く収まる大団円という訳ではなく、何ともやるせない余韻も感じさせます。非常に良い味わいの物語だと思いました。
幻想怪奇という言葉が、ここまでしっくり来る作品はなかなかありません。
事件そのものは猟奇的で残酷でありながら、描かれているのは「誰が悪いのか」という単純な裁断ではなく、閉じた社会の空気、役割に縛られた人間の弱さ、そして見ないふりをされた罪です。
探偵役でありながら真実を暴くだけでは終わらないルナの在り方が、この物語を単なるミステリやホラーから一段深い場所へ引き上げています。救いは完全ではなく、正義も万能ではない。それでも「忘れられないもの」を拾い上げようとする姿勢が胸に残りました。
重く苦い題材を扱いながら、文体は美しく、幻想性と皮肉、静かな優しさが同居しています。
読後、しばらく月と鐘楼の影が頭から離れません。綺譚蒐集という枠組みが、今後どんな物語を見せてくれるのか、強く期待しています。
これは、 “綺譚を追う探偵・ルナ” と “吸血鬼としての怪異を秘めた助手ズデンカ” が、怪奇事件の真相に挑む物語です。ただの推理劇ではなく、人外と人間が共に“幻想の影”へ踏み込んでいく構造が、独自の緊張感と美しさを生んでいると感じました。
第一話は、まさに“悲しくも美しい怪奇幻想譚”でした。
鐘楼の風見鶏に突き刺さるマルタの首という凄惨な幕開けから、一気に物語へ引きずり込まれました。猟奇的。ですが、妖しく美しい…。また本格ミステリ的構造が潜んでいることにもにやりとしました。
しかし物語が描くものは残酷さだけではなく、虐げられ孤独だったリーザの哀しみと、小さな蜘蛛の献身が織りなす静かな祈りが描かれていきます。
ルナが羽ペンによって蜘蛛の怪異を“綺譚”として書に封じる場面は、恐ろしくも神秘的で、まるで世界の痛みを記録し浄化する儀式のように思えます。
同時に、シャワーの滴りだけで震え崩れるルナの姿は、冷静な彼女が抱える見えない傷を強く印象づけ、ズデンカとの関係をより深く、愛おしく感じさせました。
幻想と怪奇を通してむしろ“人間そのもの”をあぶり出す筆致に、わたしは心を奪われました。この二人が今後、どんな罪と醜さ、そしてその奥に潜む美を暴き出していくのか——これは、どんどん事件簿として読んでいきたい作品です!
最後のいちゃこらタイムも個人的に好きです笑
この物語は、ただの幻想や怪奇じゃない。
人の奥底――誰もが隠し持つ後悔や願い、曖昧な想いにそっと触れてくる、不思議な読後感がある作品です。
語り手ルナの静かな存在感が、淡々としているのに妙に沁みてきて、怖いというより胸の奥が静かにざわつく感じ。
どの話にも“人間の弱さ”や、それでも前に進もうとする温もりがあって、読み終えると、なぜか自分の記憶を探りたくなるような懐かしさに包まれます。
1話はちょっと切ないけど、そこを越えれば、どんどん独特の世界観に引き込まれるはず。
情景も心理も最小限の描写で、逆に想像力を刺激してくれるから、自分だけの“答え”が見つかる感覚も面白い。
怖い話、ミステリー、ファンタジー――
どれか一つに収まらないけど、「沁みる物語」が読みたい人には、かなり刺さると思います。
静かに、じんわりと心に残る“月の蒐集譚”。
気になる人は、ぜひ一度ページを開いてみてください。