ひねくれロジック!

ひぐらしゆうき

山吹修一郎①

第1話 世紀の捻くれ者山吹修一郎、起床

 今日もまた、眩しい朝の日差しによってこの私、山吹修一郎は目覚めた。

 ある種の天才のお目覚めだ。喜ばしい。

 さて、私という人間は目覚めるとまずやることがあるのだ。いわゆるルーティンというやつだ。

 諸君はどうせ伸びをするとか、ストレッチをするとかという面白みのかけらもない普通のことをやっているのだと思っているのだろうが、私はそんな事はしない。私のルーティンというものはまず体を動かしたりしない。ただ頭を回転させるだけだ。

 頭を回転させて今日やることを決めるのだ。別に具体的に決める必要はない。私ほど捻くれた人間になると抽象的なものの決め方をしても、そこから捻くれたことを直感的に思いつくからだ。

 ふむ、さてどうするか。これといった用事もない。……そうだな。そうしよう。

 よし、今日は我が友、矢田健司の元へと赴くとしよう。どうせ暇を弄んでいるのであろう。彼はそういう人間だ。ごく普通のしがない私と同じ大学の大学生だ。

 そうと決まればすぐにでもこの陰気くさい六畳間から脱出するとしよう。

 私は着込んでだぼだぼになった灰色のスウェットを脱ぎ捨て、適当に積み重ねた服の中に手を突っ込み、引っ張り出した。

 出てきたのはしわくちゃの赤いチェック柄のワイシャツとジーパンだった。

 このしわくちゃの衣類を見て、普通の平凡なる人間はしわを直すという行動をとるのだろうが、私にとっては服なぞ着れさえすればしわくちゃだろうがなんであろうがどうでもいいのだ。しわを伸ばすのなど時間の無駄なのだ!

 まず、しわなどというものは着ていれば自然にできるものなのだ。そんなものをいちいち直すというのは貴重な時間をむざむがドブに捨てているようなものであって、全く意味のない行動なのだ。

 そもそも人が服を着るのはオシャレのためではない。羞恥心という感情があるからだ。羞恥心がなければ服の必要性はほとんど消え失せるといってもいい。そんなことを忘れてしまっている人間が多すぎる!

 最近はペットに服を着れている輩まで現れているが、人の飼うペットにはもうもうと毛が生えているものが多い。そんなものに服など着せて何の意味があるというのか!あれは拷問以外の何者でもないではないか!

 まあ、これ以上はやめておくとしよう。各地に住まうペット溺愛者が我が家に突撃してきて、十字架に磔にされた上で焼き殺されそうだ。


 私はしわくちゃの服を着ると部屋の中央にある無駄に大きなちゃぶ台の上から古臭い部屋の鍵と財布を取り、ジーパンのポケットに無理やり詰め込んだ。私は携帯を持ち歩く事は滅多にしない人間なのでそのまま置いていく事にする。





 佐間荘208号室から出た私は錆びた扉に鍵をかけて矢田氏の元へと向かう事にする。

 

 おそらくこの時間なら市立図書館にいることだろう。矢田氏は本の虫となってしまっている。本がなければ落ち着かないほどの重傷者だ。

 

 私は本などろくに読まないので、何が良いのかよくわからない。そもそもわかる気など毛頭ないのだがな。


 この佐間荘から市立図書館までは歩いて20分程のはずだ。私はゆったりぶらぶらと歩いて図書館まで行くこととした。

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