第2話ひねくれ者捜索
思い立ったのはいいが、そう簡単に見つかるわけがないのだ。
天音さんに連絡すればいいと思うだろう?なんなら山吹に連絡すればいいと思うだろう?しかし残念ながらこの二人の連絡先は持っていない。
何故か?天音さんには聞きにくかったから。
山吹は……わかるだろう?
うざいのだ。とにかくうざいのだ!面倒くさい!話している意味がわからない!こんな奴と連絡先を交換したいと思うか?答えは否だろう。誰だって普通ならそうだと思う。
おっと話がそれた。
今はとにかくあのひねくれ者を探し出さねばならない。
僕はひとまず奴の家へと行ってみることにした。まあおそらく居ないのだろうがな……。
佐間荘208号室に到着し、ドアをノックしてみたがやはり反応がない。
「さて……どこにいるんだあのひねくれ者は……。まあいい。居そうな場所はなんとなく想像できる。……まずはホームセンターからだな」
僕は先日のことがあってちょっと行きたくはないのだが、今回は一応しっかりとした理由あって会わなければならないわけだ。
これはもう仕方がない。
ホームセンターへの道のりにいるのではないかと思ってアーケード街から古臭い商店街を見て回ってみたがどこにも居なかった。
こうなるとホームセンターにも居ないと薄々わかってくる。
実際、ホームセンター内をみて回ったが、どこにもいなかった。
さて、こうなるとまた他の場所に行くしかない。大学には恐らくいないだろう。
となるとあの男が行くところはあと1つだけだ。
僕は山吹のあるはずな場所へ向かった。
ホームセンターから10分歩いたところ。少し小高い丘の上にある大きな公園、丘の上公園がある。
その公園の園内にある展望塔の展望スペースにエレベーターで登って行った。
展望スペースからは街並みが一望でき、双眼鏡が各方角に設置されている。
この展望スペースは殆ど人が出入りしない。そのためこのひねくれ者は良くここでひねくれたことを考えているのだ。
エレベーターホールから右に回ってみると山吹を見つけた。
どうやら天音さんと話し込んでいるようだ。
「やっぱりここか。少し探したぞ」
「あれ?矢田さんじゃないですか?」
「ほう?君自ら私を訪ねてくるとはな。珍しいことがあるではないか」
僕が話しかけると二人とも僕に気づいて声をかける。
確かに僕から山吹を訪ねることは今までなかったからこういう反応をされても仕方がない。
「本当なら会いたくもないのだが、今回は用がある」
「ほう?なんだね?言ってみたまえ」
「今度SF小説を書く。その為のネタをよこしてほしい」
「…….いいだろう!いやーよく言ってくれたよ君!今日こそ君に私の話をわからせてやろう!」
山吹は急に元気になって僕の背中をバンバンと叩いた。僕が話をちゃんと聞くというのが嬉しいらしい。
「やっと矢田さんも山吹さんの話をちゃんと聞く気になったんですね?」
天音さんも天音さんで満面の笑みで僕の背中を叩いてくる。
なんだ?この二人の間に何があったというのだ?
「不本意でしかないがな!って、痛い!痛いわ!」
腕を振って二人を振り払い距離をとった。
もうこの二人が怖くて仕方がない!
「そう意固地になるなよ君!さあ!そうとなれば我が家に戻ろうではないか!」
……やはりこいつにネタを求めるべきではなかったと今更思っても仕方がないが、そう思わざるを得ない。
僕は仕方なく山吹について行くことにした。
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