第4話ひねくれ者の買い物

 さてさてさて、こうして矢田を引っ張り出して大学の敷地から出た私は研究の為の資材を探し始めた。

 まあ研究なのだから失敗も考えて多めに買っておこうとか、どれくらいお金がかかるかとか、そんなみみっちいことを考えていては何にもならない!金の心配など二の次三の次……いや百の次だ!重要なのは研究を完成させることだ!ゴールに向かう為ならば何でもしなければならないのは必然なのだ。そこの所をわかっていない奴が多すぎることこの上ない。

 とはいえ、私が生きていかなければ話にならないからな。今回は軽い準備ということにしよう。


「何をニヤニヤしているんだ。気持ちの悪い!」


「なんだと?気持ち悪くなどないだろう!」


「気持ち悪いわ!何考えているのかわからないし、そもそも顔が歪んで気持ちが悪いんだ!」


「生まれ持った顔をうだうだ言われる筋合いはないぞ矢田氏よ。君こそなかなかに凡人らしい平凡なメガネ男という顔ではないか」


「メガネ属性は後天性のものだ!生まれながらにこうではない!」


「何をいっているのだね?顔とは生まれながらに決まっているのだよ。君は生まれながらにその平凡メガネ顔になることが決定していたのだ。どう考えても先天性ではないか」


「なんだとこの!」


 矢田氏が殴りかかってきそうになったというちょうどいいところで店に着いた。


「おっと矢田氏、着いたぞ」


 矢田氏は拳を振りかぶったまま止まった。

 私は矢田氏の振りかぶった拳を掴むと矢田氏を引っ張り、店の中に入っていった。




 ホームセンターとは実に便利な場所だ。

 大体の物はここにくれば揃う。


「もう引っ張るな!他人が変な目で見るだろう」


「矢田氏よ、そんなに周りを気にしてはいかんぞ。他人なぞ気にしていてもこちらは何も得られない。損しかないのだ。そんなものは気にしない名が一番だ」


「お前は気・に・し・ろ!」


 矢田氏の言葉はスルーして私は店内を物色する。勿論逃げられないように矢田氏の手はしっかりと握っている。

 離せと言われて離すやつなどいないという事をこの機会に矢田氏は知るべきだな。

 あと、私は人の指図を聞くのが大嫌いなのだ。矢田氏の言うことなど聞くわけがなかろう!


「さて、矢田氏よこれを持ってくれ」


 私は棚から大量のパイプやホースをダサダサと矢田氏に渡す。


「……っ!おい!俺に渡すのではなく買い物かごに入れろ!」


「なぜ持ってないのだ?」


「お前が無理やり引っ張るからだろうが!」


「まあ今更そんなこと言っても仕方ないだろう。それ持ってレジまで行くのだ。さあ行くぞ!矢田氏」


「この野郎……覚えとけよ……」


 会計を済ませたら次はこれを我が家まで持っていかねばな。

 矢田氏にはまだまだ付き合ってもらわねばな。

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