第5話山吹修一郎研究室(佐間荘208号室)
買い物を済ませた私は荷物を全て矢田氏に任せて先を歩く。
私が矢田氏を引っ張って来たのは当然ちゃんとした理由があるからなのだ。そうでなければ呼んでいない。まさにあの時運命的な出会いをしていたのだ!
矢田氏を引っ張って来た理由。それは我が部屋の片づけを手伝ってもらうためだ。
研究しようにもそれをするスペースがなければ意味がないからな!前に矢田氏の部屋に行った時綺麗に片付いていたのを見ていたのが良かった。あのタイミングでビビッと閃かことができたのだから。
ふふふっ、私は頭の回転が早いのだよ!
さて、うだうだ歩いていたら着いたな。
私が現在住んでいる佐間荘だ。相変わらず廃墟のような古臭いアパートだ。
「いつ見てもこのアパートは気味が悪いな。お前よくこんなとこに住んでるな。そこだけは尊敬する」
「ふん。気味が悪かろうとなんだろうと私が満足できればそれで良いのだよ。さあ、とっとと我が部屋に行くぞ」
「……この荷物置いたら大学に帰るからな!」
「そんな事をされては困るな。私の部屋で一仕事してもらわねばならんぞ?」
「まさか……掃除しろって言うのではないだろうな!」
おお、よくわかっているではないか。さすがは矢田氏だな。
「御名答だ。さあ行くぞ!」
「ふざけるなぁーーー!!!」
喚き散らす子供のような情けない矢田氏を私はまたしても腕を掴んで無理矢理我が部屋に引っ張り詰め込んだ。
「我が部屋にようこそ!さあ、かたずけようではないか!」
「帰す気は全くないわけだな?」
ぶすーっとした顔で矢田氏は我が部屋の玄関で胡座をかいている。
まったく片付けをするかがないではないか!仕方がない。
「片付けが終われば帰れるぞ?」
「……わかった!やるさ。やればいいのだろう!」
おお、やはり条件を出せば仕方なくやる気を出すものなのだな。これはいい。これから使わせてもらおう!
さて、それじゃあまずはゴミ捨てをしなければならないな。
ゴミさえ無くなればスペースは十分であろう。
「矢田氏よ。まずはゴミを片付けるぞ!」
「当たり前だ!どうやったらこんなに汚くできるんだ!菓子の袋とか菓子パンの袋とか投げっぱなしじゃないか!ゴキブリも至る所で死んでるし!よく住んでるな!」
「ゴキブリでも生きられぬ環境で生きられる私は生命力が、強いと言うわけだな!」
「ゴキブリが生きられないくらい不潔なんだ!ぼけ!」
矢田氏はブツブツ言いながらせっせと掃除を始めた。
ふむ。私もやるとしようか。
ゴミを袋に詰め込み、我が家にある唯一の掃除道具箒でゴミを集めてちりとりで回収した。
「……ゴキブリの死体、8匹分あったな」
「ふっふっふ。私の部屋では私の天下なのだよ!」
「威張るな!……片付いたし、俺は帰るぞ!」
箒を投げ出して矢田氏が帰ろうとした!
おいおい、まだ終わりではないだろう。まったく矢田氏は……。
「おい、矢田氏まだだぞ」
私はゴミ袋を矢田氏に突き出して
「これを捨てて置いてくれ」
「ふざけるな!」
矢田氏は箒を持ち直してこちらに投げつけて我が部屋から出て行った。
箒は手に持ったゴミ袋で防いだ。
もちろん、袋に穴を開けないように計算し尽くされた防ぎ方をしたがな。
「……さて、研究を開始するか!」
私はビニール袋から道具を取り出し、研究を開始した!
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