第5話天音プレゼンツ ?????

 思いっきり恥をかいてトイレに逃げ込んだのは良いが、出るタイミングを測れない……。

 あのフードコートには戻りたくないし、かといってこのままこのトイレに閉じこもっているのも嫌だ。

 そもそも僕という人間はトイレという空間が嫌いなのだ。

 嫌いなものにはなにかしら理由があるというものだ。僕の場合、トイレが嫌いなのは汚いのと臭いというのが主な理由だ。

 僕は芳香剤の香りも嫌いだし、トイレ特有のあの匂いも嫌いだ。

 匂いに関して過敏すぎると多くの人から言われてきたが、それは僕の生まれ持ったものなのだから仕方がないだろう!


 さてどうしようか……。今僕がいるのは男子トイレ入ってすぐの個室の洋式トイレ。

 鍵をかけて便座に座っている。

 トイレにこもって10分、まだ天音さんは食事中だろうし、山吹の顔は見たくない。

 そもそもこんなことになっているのはあの男のせいなのだから空気を読んでとっとと帰ってくれればそれが一番いいのだ。


 プルルルル


 僕の携帯電話が鳴り出した。

 画面には天音さんと映し出されている。

 天音さんからの電話となれば出ないわけにはいかない。

 僕は電話に出た。


「もしもし……」


『あー矢田さん?私ですけど、今フードコートを出たんですが……まだトイレです?』


「ご名答」


『フードコートから一番近くのトイレですよね?今から向かいましょうか?』


「そうしてくれないかな」


『わかりました。じゃあ行きますね』


 プツッと電話が切れた。

 僕は立ち上がるとトイレから出た。


 もちろんちゃんと手洗いしてな。





 天音さんと山吹に合流すると山吹から思いっきりからかわれた。


「いやまったくあんな典型的な怒り方をしようとはなぁー。人目を気にせず大声で叫び、フードコート中を静寂に包むとは、まったくやるじゃないか君!」


「本当にどっかいってくれ!」


「傷口に塩を塗られて染みるかね?まああんな事をしていじられないとは思っていなかっただろう?これくらい想定内だろう?君のことだからなぁ〜」


 ウザい!ひたすらウザい!


「お前、ひねくれ者で、Sで、おちょくるのが得意と人に嫌われる要素フルコンプだな。一旦どっか消えてくれよ。本当にうざくて鬱陶しい」


「ほう。君にしては上手い褒め言葉だ。よく私のことがわかっているじゃないか。照れるぞ」


 ……こいつには何言っても仕方がないな。

 親の顔が見てみたいと本気で思う。


「さて、次はどこ行きましょうか?矢田さん」


「とりあえずこいつが来れない場所を希望する」


 僕は山吹を親指で指して天音さんに言った。


「いいですよ。とっておきの場所があります」


 なに?あるのか?山吹が来れない場所が?


「どこだい?そこは」


「それはですね……」


 ゴクリ……

 僕は固唾を飲んだ。



「私のお家です♪」


「えっ?………えぇぇーーー!!?」


 天音さんはにこやかな笑顔でそう言った。

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